2013 Fiscal Year Research-status Report
膜電位に支配される電位依存性イオンチャネルの構造と機能発現機構
Project/Area Number |
24590048
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 匡範 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (60361606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 一夫 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70196476)
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Keywords | 電位依存性K+チャネル / SS-locking / 構造変化 |
Research Abstract |
電位依存性イオンチャネルは、膜内外の電位差 (膜電位)に応じてイオン透過路を開閉し、特定のイオンの膜透過を制御する蛋白質である。これまでに、膜電位の存在していない活性化状態での立体構造が報告されているが、従来の構造生物学的手法では膜電位存在下での解析が困難であるため、静止状態の立体構造が不明であり、その電位依存的な動作機構は未解明であった。そこで本研究では、0mVで静止状態をとるものの代表として電位依存性H+チャネルVSOPを、0mVで活性化しているチャネルの代表例として電位依存性K+チャネルKvAPの電位センサードメイン(VSD)を解析対象とし、膜電位依存的な構造変化様式を解明することを目的とした。 今年は、VSDの4本の膜貫通へリックス(S1-S4)のうち、S1とS4に1残基ずつCys変異を導入し、両者が近接するときに形成されるジスルフィド結合を検出する手法(SS-locking)を確立した。36種類のdouble Cys変異体のSS-locking解析結果より、KvAPのVSDは膜電位非形成時/形成時ともに、S4が細胞外側に移行したup stateとS4が細胞内側に移行したdown stateの2状態間の平衡にあり、膜電位非形成時には平衡がup stateに、膜電位形成時には平衡がdown stateに偏ることが示唆された。このことから、KvはVSDの平衡のシフトによって膜電位を感受することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の構造生物学的手法では、膜電位存在下でのVSDの立体構造解析は非常に困難であったが、VSDのS1とS4の二重Cys変異を導入し、リポソーム内外のイオン濃度勾配を利用した方法で膜電位を形成した際の構造変化をSS-locking法により捉える手法を確立し、実際にVSDの構造平衡の膜電位依存的なシフトを捉えることができた。したがって、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
電位依存性H+チャネルVSOPについて、NMRによる構造解析、ダイナミクス解析を進め、0mVで静止状態をとる分子機構を解明する。また、アナンダミド(AEA)はVSOPの活性化電位を低下させ、VSDPはアナンダミド存在下では0mVでも活性化状態をとることが知られている。そこで、VSOP上のAEA結合部位、結合のストイキオメトリー、結合親和性を明らかにするとともに、アナンダミド添加時のVSOPの構造・運動性の変化を解析することにより、VSOPの活性化メカニズムを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初より、期間内に遂行することを計画していたVSOPのアナンダミド依存的な活性化機構解明のため、VSOPの安定同位体標識用の試薬、rHDL再構成のための脂質、といった消耗品を購入する必要があるため。 消耗品費として使用する予定である。本研究では分子全体を2H 標識した上でIle, Leu, Val のメチル基選択的に1H, 13C 標識を施したタンパク質を大腸菌などで大量に調製するために、標識化合物(2H2O、α-ketoisovaleric acid (3-methyl-13C,3,4,4,4-D4))α-ketobutyric acid (methyl-13C, 3,3-D2)に多大な経費が見込まれる。特に、H25に行うNMR シグナルの帰属には、Ile, Leu, Val のいずれかを他のアミノ酸残基に置換した変異体のNMR試料を調製する必要があり、これらの試薬が大量に必要である。また 、精製には界面活性剤decyl-maltoside(DM)を、また、rHDL の調製にはPOPE を始めとするリン脂質を大量に必要とする。
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