2013 Fiscal Year Research-status Report
レドックス制御に基づくエネルギー代謝調節機構の解明
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24590052
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大和 真由実 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30380695)
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Keywords | レドックス制御 / 酸化ストレス / 肥満 / エネルギー代謝 |
Research Abstract |
「NAD+/NADH」は、代謝過程において最も重要な酸化還元反応を担うレドックスペアであり、主要代謝経路における様々な反応の補酵素である。ピルビン酸脱水素酵素複合体は、クエン酸回路に入るアセチルCoAの供給を制御している。酵素複合体は、アロステリック制御によりATPとNADHで阻害され、AMPとNAD+で活性化される。つまり、アデニル酸エネルギー負荷値とNAD+/NADHの比がこの酵素を制御しており、アセチルCoA合成そしてクエン酸回路の活性は、細胞のエネルギー状態に直接支配されている。一方で、飽食や運動不足等の長期的な生活習慣によって蓄積されるエピジェネティックな代謝制御についての報告が近年多くされている。 アロステリック制御およびエピジェネティックな代謝制御は、レドックス分子であるNAD+が利用されるという点において類似である。そこで、本研究では、ニトロキシルラジカル(Tempol)の化学的性質、すなわちレドックス特性を肥満モデル動物に適応し、酸化ストレスに対する効果、及びレドックス制御による代謝調節機構について明らかにすることとした。 今年度は、① NAD+/NADH比を制御する化合物の探索、② 自然体重増加に対するTempolの効果、および ③ エピジェネティック代謝制御に対するTempolの効果について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下にH25年度に行った実験結果を示す。 ① NAD+/NADH比を制御する化合物の探索:既存化合物を中心に活性酸素との反応、あるいはアスコルビン酸との反応を介したNADHから NAD+への変換について、in vitro実験や培養細胞系において検討した。得られた結果について、反応性や細胞移行性を考慮し比較したところ、Tempolを超える効果を持つ化合物は、見いだされなかった。 ② 自然体重増加に対するTempolの効果:長期飲水によりTempolが生体内に悪影響を及ぼし体重減少をもたらす可能性が指摘されたため、「通常食+水あるいはTempolの自由飲水」の2群について検討を行った。22ヶ月齢まで飼育を行ったが、体重減少およびNAD+/NADH比に対する効果は認められなかった。つまり高脂肪食等によって誘発される代謝異常に対しTempolが効果をもたらすことが分かった。一方で、加齢に伴う血漿中脂質過酸化物の蓄積を抑制し、酸化ストレスについては保護効果をもたらすことが分かった。本研究の成果については、学術論文に受理された。 ③ エピジェネティック代謝制御に対するTempolの効果:実験系の立ち上げ、抗体濃度の検討などに着手した。 25年度に計画していた化合物の探索については、計画通り実施した。さらに、Tempolの副作用(長期飲水毒性による体重減少の可能性)についても検討が終了し論文発表を行った。よって、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度立ち上げ、研究を開始した「エピジェネティック代謝制御に対するTempolの効果」について検討を行う。 これまでの成果と合わせて総括し、論文発表を行う。
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Research Products
(2 results)