2012 Fiscal Year Research-status Report
抗癌薬や遺伝子治療薬を封入した肝臓表面適用シート製剤の開発
Project/Area Number |
24590053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西田 孝洋 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20237704)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腹腔 / がん / 放出制御 |
Research Abstract |
我々は、病巣部位近傍に選択的な薬物集積を可能にする新規投与形態として、腹腔内の肝臓表面への投与法を提案し、今年度は、肝臓表面投与法の臨床応用を想定し、シリンジを用いた腹腔内のラット肝臓表面への薬物投与実験により薬物吸収動態をまず解析した。さらに、次の段階として肝臓表面適用シート製剤の作製を試みた。吸収動態を検討するためのモデル薬物であるphenolsulfonphthalein (Mw 354)のin vivoラット腹腔内投与実験の結果、粘性添加剤併用時でも投与部位における薬物の高い吸収抑制効果は認められず、薬液が腹腔内で希釈されたことなどが考えられた。そこで、肝臓表面における薬物の滞留性を向上させるために、抗がん薬5-FUを含有するシート製剤の作製を試みた。シート製剤の形成に必要な生分解性のポリマーおよび肝臓表面に選択的に付着する高分子添加剤をスクリーニングし、5-FUを封入できる最適な配合条件を調べた。検討の結果、poly (lactic-co-glycolic acid) (PLGA)、hydroxypropyl cellulose (HPC)、5-FUをacetoneに溶解し、30度Cで24時間静置してシートを作製した。シート製剤を37度CのPBS (pH 7.4)中に添加し、180 rpmで撹拌しながら経時的にサンプリングを行い、シート製剤のin vitroにおける5-FU放出量を測定した結果、シート製剤中のPLGA含有率を増加させることで、48時間後の5-FU放出量は約40%まで抑制された。したがって、5-FUを封入した均一な形状の徐放化に優れたシート製剤を、再現性良く作製できる実験条件を確立できた。さらに、ラット腹腔内でのシート製剤自体の臓器傷害性を予備的に調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の大きな目的である、抗がん薬を封入した均一な形状の徐放化に優れたシート製剤の作製については達成できた。しかしながら、シート製剤の形成に必要な生分解性のポリマーおよび肝臓表面に選択的に付着する高分子添加剤をスクリーニングするために、各種添加剤を試み、さらに最適な混合比を導くために、当初予定していた以上の時間を費やした。したがって、ラット腹腔内でのシート製剤自体の安定性、付着性、および臓器傷害性を調べるまでの段階までは至らず、予備的な検討にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
抗がん薬を封入した均一な形状の徐放化に優れたシート製剤の作製方法を確立できたが、初期の薬物放出速度(初期バースト)が大きいため、初期バーストを抑制できるシート製剤の最適な製剤処方を検討する。また、予備的な検討で、in vivo腹腔内においてシート製剤から放出される抗癌薬による毒性が認められたので、片面(臓器表面への装着面)のみから薬物放出されるシート製剤を作製し、毒性の軽減を図っていく。ラット腹腔内でのシート製剤自体の安定性、付着性、および臓器傷害性を十分に調べ、腹腔内での適切な滞留性が得られる添加剤濃度を決定する。 このようなシート製剤の最適化が完了次第、肝癌モデル動物におけるシート製剤の薬物吸収・分布実験、およびシート製剤の肝臓表面における有効性を評価する準備を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
肝臓表面適用シート製剤の作製および各種添加剤の最適化のための抗癌薬(5-FU)や高分子添加剤(PLGA, HPC)、および肝機能診断薬(AST, ALT測定キット)などの薬品類を購入する。その他、抗がん薬などの定量測定用のガラス・プラスチック器具の購入を予定している。一方、肝臓表面適用シート製剤の大部分の評価をin vivo系で行うこと、実験的病態モデル動物を作製することから、実験用動物(ラット、マウス)の購入に多額の経費を見込んでいる。 さらに、DDSや薬物動態に関する学会に参加し、製剤設計やがん化学療法に関する最新の研究成果の情報収集および成果発表のための旅費を見込んでいる。
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Research Products
(4 results)