2012 Fiscal Year Research-status Report
新規ヒアルロニダーゼの医療応用を指向した構造・機能研究
Project/Area Number |
24590071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
山田 修平 名城大学, 薬学部, 教授 (70240017)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒアルロニダーゼ / コンドロイチン硫酸 / 加水分解酵素 / ヒアルロン酸 / 基質特異性 / グリコサミノグリカン |
Research Abstract |
本研究では、コンドロイチン硫酸に特異的な加水分解酵素であるヒアルロニダーゼ4(HYAL4)について、基質認識のための詳細な性質、生体内における機能を解明しようとしている。平成24年度は、HYAL4の基質認識機構の解析を中心に行った。マウスHyal4とヒトHYAL4の様々なキメラ酵素を作製し、新規に開発した方法で酵素反応を定量的に解析し、各キメラ酵素の基質特異性を調べた。また、点変異を導入した酵素も作製し、変異体酵素についても基質特異性を調べ、どのアミノ酸残基が基質特異性の決定に最も重要であるのかを同定することに成功した。本成果は、国際学術雑誌Journal of Biological Chemistryに掲載された。 また、ヒアルロン酸に対する作用がコンドロイチン硫酸に対する作用よりも強いと考えられていた二種類のヒアルロニダーゼ(HYAL1とPH-20)について、新規に開発した方法で酵素活性を定量的に解析し、実は同程度にコンドロイチン硫酸にも作用することを初めて明らかにした。生物の進化とコンドロイチン硫酸とヒアルロン酸の分布を考え、ヒアルロニダーゼは本来コンドロイチン硫酸加水分解酵素としての働きが主要であった、という新しい仮説を提唱した。この成果は国際学術雑誌Biomoleculesに掲載された。 さらに、HAYL4の詳細な発現部位や発現時期を解析し、疾患に伴うHAYL4の発現の変化を調べ、疾病とHAYL4との相関を解析中である。Hyal4のノックアウトマウスを作製するためのターゲッティングベクターについても、調製中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては、以下の4項目を達成しようとしている。 (1)ヒトHYAL4とマウスHyal4あるいはヒトHYAL1とのキメラ酵素を作製し、特異性の解析から、基質認識に重要なアミノ酸を同定する。(2)Hyal4ノックアウトマウスを作製し、その表現型を解析し、生体内における機能を推定する。(3)HYAL4の大量発現系を構築し、活性を持ったHYAL4を大量に調製する。また、脊髄神経損傷モデルラットに投与し、その治癒効果を判定する。(4)HYAL4と蛍光タンパクとの融合タンパクを作製し、細胞内での局在を調べる。疾病プロファイリングアレイを利用してHYAL4の発現亢進を検証する。 平成24年度に、(1)については達成でき、成果を論文として報告することができた。今後、更なる研究に発展させようとしている。(4)については現在進行中で、順調に成果が出つつある。しかし、申請者が大学を異動した関係で(3)に関しては現在中断している。環境を整え、25年度後半には再開させたいと考えている。(2)に関して、ここまでは順調に進んでいたが、大学院生の就職活動のため、ここ数ヶ月中断している。25年度の夏までには再開し、25年度中には完成させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の内容で研究を進める予定である。 【実験項目1】HYAL4の基質認識機構の解析:昨年度の解析によって基質認識部位が同定できたので、標的とするべき特定のアミノ酸残基に多様な変異を導入する。グリコサミノグリカン分解活性をもつクローンの中で、新規のものあるいは珍しいコンドロイチン硫酸配列を特異的に切断する酵素を発現しているものをスクリーニングする。 【実験項目2】Hyal4ノックアウトマウスの作製:Hyal4のノックアウトマウスの作製を引き続き行なう。Hyal4を欠損したマウスを作製するため、標的ベクターの構築を行う。ES細胞に標的ベクターをエレクトロポレーションによって導入し、選別後マウスに導入し、キメラマウスを作製する。 【実験項目3】HYAL4の大量発現に関する実験:活性をもった大量のHYAL4を得るため、酵母での発現系を構築する。プラスミドにHYAL4遺伝子を導入し、エレクトロポレーションによって、メタノール資化性酵母Pichia pastorisに安定導入する。高発現しているクローンを用いて、酵素の精製、酵素活性の測定を行う。活性が検出できれば、大量発現の条件を検討する。 【実験項目4】HYAL4の発現解析実験:平成24年度に精巣での発現を解析できたので、今年度は、他の組織・臓器や、発生時期の異なる胚についても、同様の解析を行っていく。HYAL4は通常の組織ではあまり発現していないと予想されるので、癌を初めとする各種疾患でのHYAL4の発現が亢進していないかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の経費執行計画は以下の通りである。 設備備品に関しては、超純水製造装置を購入する。分子生物学実験、高速液体クロマトグラフィーを使用する実験には不可欠である。 消耗品として、細胞培養実験のための多くの培養用滅菌済み器具、培地、血清、抗生物質などを購入予定である。また、分子生物学の実験用に、発現用ベクター、制限酵素、試薬などを購入予定である。さらに、糖鎖の構造解析のためには高価なカラム類が必要であり、特に、陰イオン交換HPLC用のアミンカラムは寿命が短く、100回程度しか使用できないため、多数必要である。また、糖鎖を低分子化するための酵素も必要である。ノックアウトマウスの作製が順調に進行した場合、その費用も消耗品として支出予定である。 旅費としての支出は、研究成果を発表するために、薬学会などの国内学会、1月にインドで開催される国際学会への参加があげられる。 その他、複写費、機器修理費等を計上している。
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Research Products
(15 results)