2012 Fiscal Year Research-status Report
インテグリンスプライシングバリアントの機能を利用した新規抗体医薬の創出
Project/Area Number |
24590072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今 重之 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90344499)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | インテグリン変異体 / 抗体 / がん転移 |
Research Abstract |
申請者はα9インテグリンのスプライシング変異体SFα9を同定しており、細胞外領域のみの構造から形成されるが細胞膜上に発現することを見出している。SFα9は何らかの細胞膜貫通タンパク質と結合することで、細胞膜上に発現すると考えられることから、SFα9タンパク質を精製し、結合蛋白を質量分析法にて探索した。その結果、複数の候補分子を同定することに成功し、現在、実際にSFα9と結合するかを免疫沈降法にて検討している状況にある。また、SFα9に対する特異的モノクローナル抗体を8クローン樹立することに成功した。フローサイトメトリー解析で、野生型α9インテグリンとは反応しないが、SFα9と反応することが分かった。現在、抗SFα9抗体を用いて、SFα9機能を検討している。 細胞内配列が全く異なるマウスα4インテグリン変異体を申請者は同定し、VCAM-1のみと結合するという興味深い結果を得ている。マウスα4インテグリン変異体と野生型α4インテグリンを共発現させた細胞を作製し細胞接着試験を行ったところ、α4依存性細胞接着が抑制されることが分かった。マウスα4インテグリン変異体は野生型α4インテグリンの接着能を抑制する可能性が考えられたことから、次にin vivoにおける機能を検討した。α4インテグリンはメラノーマ細胞B16細胞の肺転移に関与し、抗α4インテグリン抗体で肺転移を抑制できるという報告がある。そこで、マウスα4インテグリン変異体を特異的にノックダウンさせたB16細胞を作製し、肺転移能を検討した。その結果、α4インテグリン変異体ノックダウンB16細胞では、肺転移能が亢進することが分かった。すなわち、α4インテグリン変異体は野生型α4インテグリンに対して抑制的に働ことが分かった。現在、α4インテグリン変異体を特異的に認識する抗体の作製を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SFα9に関しては、結合タンパク質をLC-MS/MS解析を行うことによって複数同定することができた。さらに特異的なモノクローナル抗体を8クローン作製することに成功した。 また、マウスα4インテグリン変異体に関しては、野生型α4インテグリンとの共発現細胞が、α4インテグリン依存性細胞接着を抑制したことから、マウスα4インテグリン変異体は野生型α4インテグリン抑制分子であることが分かった。さらにin vivoでマウスα4インテグリン変異体機能をマウスメラノーマ細胞株B16細胞で検討した。B16細胞はマウスα4インテグリン変異体と野生型α4インテグリンを共発現している。マウスα4インテグリン変異体のユニークな3’端cDNA配列に対するsiRNAを使用することで、マウスα4インテグリン変異体を特異的にノックダウンさせることに成功した。マウスα4インテグリン変異体特異的ノックダウンB16細胞をマウスに投与した際の肺転移効果を検討した結果、肺転移が亢進することが分かった。すなわち、マウスα4インテグリン変異体はα4インテグリン機能抑制効果を有することが分かった。 またマウスα4インテグリン変異体の細胞内領域KVIL配列をヒトα4インテグリンに導入したヒトα4-KVILを発現する細胞を作製し、ヒトα4-KVILがVCAM-1特異的に細胞接着効果を示すことを見出した。 これら結果は、交付申請書の平成24年度の計画通りに進行しており、おおむね順調に進展していると考えている。ただ、SFα9の結合分子の候補を得ることができたものの、SFα9を細胞膜へ発現させる分子の決定には至っていないことは今度の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
SFα9結合分子がSFα9と実際に結合することを免疫沈降で示し、その後、siRNAやshRNAを用いた結合分子特異的ノックダウンにより、SFα9が細胞膜上へ発現しなくなることを示す。また、SFα9結合分子に対する抗体を作製し、α9インテグリン依存性細胞接着への影響を検討する。先日、α9インテグリン依存的にリンパ節転移する乳癌細胞を入手したので、当該乳癌細胞のリンパ節転移に対する抗SFα9抗体やSFα9結合分子に対する抗体の影響を検討する。 マウスα4インテグリン変異体に関しては、これまでの研究で野生型α4インテグリン機能を抑制することを見出した。その結果をさらに確実なものとするため、マウスα4インテグリン変異体を過剰発現させたマウスメラノーマ細胞核B16細胞を作製し、肺転移への影響を調べる。既存の抗α4インテグリン抗体は全てマウスα4インテグリン変異体と野生型α4インテグリン両者を認識してしまい、これまでマウスα4インテグリン変異体と野生型α4インテグリンを特異的に検出する抗体は存在しない。そこで、マウスα4インテグリン変異体と野生型α4インテグリンをそれぞれ特異的に認識する抗体を作製する。 またマウスα4インテグリン変異体の細胞内領域KVIL配列をヒトα4インテグリンに導入したヒトα4-KVILを発現する細胞を抗原として、モノクローナル抗体を得る。目的とする抗体は、α4インテグリンとVCAM-1と特異的に阻害する抗体である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
B-Aの額は3月中あるいは4月上旬に機能解析用消耗品を購入し、既に支払われている。 翌年度分の助成金使用に関しては、平成24年度では、多くの研究ツールを作製することに成功したことから、25年度はin vivoの治療効果が中心となり、動物実験一式(主にヌードマウス)として40万円を使用する。また、モノクローナル抗体作製、培養および精製一式で、40万円使用する。また、SFα9結合分子同定のin vitro実験消耗品として20万円を使用する。 研究成果発表用および情報収集のために「旅費」として10万円使用する。 病態評価用の特殊免疫染色の外注のために「その他」として10万円使用する、
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Research Products
(3 results)