2013 Fiscal Year Research-status Report
インテグリンスプライシングバリアントの機能を利用した新規抗体医薬の創出
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24590072
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今 重之 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90344499)
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Keywords | インテグリン変異体 / 抗体 / がん転移 / 自己免疫疾患 / 細胞接着 |
Research Abstract |
申請者はヒトα9インテグリンのスプライシング変異体SFα9を同定し、SFα9がα9インテグリンの機能調節に深く関わっていることを明らかにしている。また、SFα9が細胞膜上に発現することから、本研究において抗SFα9モノクローナル抗体作製を進め、抗SFα9抗体を作製することに成功した。α9インテグリンはがん転移に関わることを推察されていることから、抗SFα9抗体を用いてヒト乳がん細胞の進展に及ぼす影響を解析した結果、抗SFα9抗体投与により、原発巣が増大し、リンパ節への転移が亢進することが分かった。このことから、SFα9はがんの進展に抑制的に働いていることが推察された。 SFα9はα9インテグリンの細胞外領域の一部分のみなら構成されるが、細胞膜上に発現する。そこで、SFα9が何らかの分子と相互作用していること考え、質量分析で結合分子を探索した結果、数種の候補を見出すことができた。現在、結合分子の再現性と機能を検討している。 申請者は細胞内配列の異なるマウスα4インテグリン変異体α4Bの同定にも成功している。α4B研究を進めた結果、α4Bは野生型α4インテグリンを介する細胞接着を抑制させることが分かった。またα4インテグリン依存的に肺に転移する癌細胞の内在性α4Bを特異的にノックダウンさせた細胞は、肺転移を亢進することが分かった。これらのことから、当研究室で見出したα4Bは新規内在性α4インテグリン機能抑制分子であることが分かった。野生型α4インテグリンとα4Bは細胞外領域は全く同じアミノ酸配列であるが、α4インテグリンリガンドとの接着性は全く異なることから、立体構造が違うことが推察できた。このことを証明するため、野生型α4インテグリンを特異的に認識する抗体作製を進め、一種類のモノクローナル抗体を作製することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトα9インテグリンのスプライシング変異体SFα9に関しては、本研究で作製した抗SFα9抗体が乳がんの進展を増悪化させることが分かった。予想としては、抑制的に働くと考えていたことから、逆の機能を示した。この原因は不明であるが、最近の我々の研究により、SFα9は分泌型になりうることが分かった。SFα9結合分子を質量分析で数種の興味深い分子の同定に成功し、SFα9との結合活性を確認することができた。SFα9のリガンドは未知であったが、リガンドと予想できる分子をも同定することができた。また、マウスSFα9の同定にも成功した。 マウスα4インテグリン変異体α4Bに関しては、野生型α4インテグリンを特異的に認識する抗体作製を進め、一種類のモノクローナル抗体を作製することに成功した。α4Bの研究に関しては、おおよそ終了し現在、論文投稿を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトα9インテグリンのスプライシング変異体SFα9との結合分子として同定された分子が、SFα9機能にどのように関与するかを示す。具体的には野生型α9インテグリン依存的な細胞接着にどのように影響するか、さらにがん転移や自己免疫疾患への関与を検討する予定である。また、昨年度の研究からマウスα9インテグリン変異体を数種類同定することに成功したので、それらの機能を検討する予定である。 SFα9結合分子として得られた酵素に対する阻害剤が存在することが分かった。その阻害剤を用いて、がん進展や自己免疫疾患阻害効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由としては、今年度中に使用するはずであった動物実験や細胞を用いた実験が、使用する抗体精製が予想よりも遅延したことにより次年度に行う必要が出てきた事による。またマウスα9インテグリンの変異体も新たに同定することに成功したので、その機能解析にも次年度使用する必要がある。 今年度に使用する予定であった抗体が精製できたこと、また新たに同定したマウスα9インテグリン変異体の機能解析を行うことにより、次年度は動物実験一式に20万円、細胞を用いた研究一式に40万円程度を使用する。また、学会発表や情報収集のために10万円、病態評価用の組織染色や論文投稿のために25万円程度を使用する計画である。
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Research Products
(6 results)