2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜ATP合成酵素を介した新規脂質代謝調節機構の解明と新規抗肥満薬の開発
Project/Area Number |
24590081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
新垣 尚捷 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (60151148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 尚夫 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30208293)
山崎 哲男 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90330208)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
細胞膜F1Fo-ATP合成酵素の生理的役割と本酵素を介したシグナル伝達経路を明らかにする目的で本年度は以下の実験を遂行した。 細胞膜F1Fo-ATP合成酵素により細胞外でATPが産生されることはすでに明らかにしていた。しかしながら、脂肪細胞において中性脂肪蓄積の増加に関わる細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介したシグナル伝達に細胞外ATPがどのように関わるのかについては不明であった。本研究ではまず、脂肪細胞の分化に伴って細胞外ATP量が増加すること、そしてその増加がF1Fo-ATP合成酵素のαおよびβサブユニットに対する抗体で完全に阻害されることを明らかにした。さらに、細胞外ATPにより中性脂肪蓄積が増加すること、細胞外ATPによる中性脂肪蓄積の増加に関わるATP受容体がP2Y1受容体であることを示した。これらの結果より、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素により産生されたATPがP2Y1受容体を介して中性脂肪蓄積の増加に関わることが示唆された。さらに、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介した中性脂肪蓄積の増加にカルシウム依存性シグナル伝達経路の活性化が関わっていることが示唆された。 本年度は、根本らが確立した分岐型オリゴグリセロール(Branched Oligoglycerol:BGL)連結修飾法を用いて、新規水溶性F1Fo-ATP合成阻害剤の合成方法を検討しF1Fo-ATP合成酵素阻害剤であるresveratrolとpiceatannolのBGL化体の合成に成功した。さらに、これらのBGL化体がF1Fo-ATP合成酵素剤の特徴である細胞内中性脂肪蓄積抑制活性とミトコンドリア融合活性ともに非BGL化体と同等の活性を保持していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞膜F1Fo-ATP合成酵素の新規阻害剤であるBGL化resveratrolとpiceatannolの合成は平成25年度に遂行する予定であったが、研究分担者の都合により平成24年度に実施し、それらの合成に成功した。さらにそれらBGL化体が細胞内中性脂肪蓄積抑制活性とミトコンドリア融合活性を保持していることも確認できたことより本計画は予定より早く終了した。そのため達成度は100%である。今年度は新たに動物実験のための大量合成を試み次年度までに動物試験を行う予定に変更した。 細胞膜F1Fo-ATP合成酵素のシグナル伝達経路の解明に関しては、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素により産生された細胞外ATPの重要性および中性脂肪蓄積に関与するATP受容体の同定は終了したと考えている。そのため達成度は100%である。さらに、その後のカルシウム依存性シグナル伝達経路の重要性を示唆する結果は得られたがシグナル伝達分子の活性化の確認までは至らなかった。達成度は40%程度である。原因として考えられることは、成熟脂肪細胞を用いた実験系ではシグナル伝達分子をノックダウンするためのsiRNAのトランスフェクションの効率が低いこと、さらに大量の中性脂肪が混在するためウエスタンブロッティングの解析に熟練した技術が必要であることなどが考えられた。そこで、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素のシグナル伝達経路の解明に関しては、脂肪細胞以外の細胞(例えば細胞膜F1Fo-ATP合成酵素の存在を証明しているHeLa細胞など)を用いることも検討することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1. BGL化resveratrolとpiceatannolの大量合成を行い、動物実験を遂行するための材料を確保する。 2. 前年度に引き続き、NFATc4, CaMKII betaの活性化の活性化に対するF1FoATP阻害剤の効果を解析する。さらに、HeLa細胞を用いて、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素のシグナル伝達経路の解析を行う。 3. 細胞膜F1Fo-ATP合成酵素のシグナル伝達経路の解析を行っている過程で、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を抑制するとミトコンドリアの形態が大きく変動することを見出した。すなわち、脂肪細胞をF1Fo-ATP合成酵素阻害剤で処理するとミトコンドリアの形態が融合型へと変化することを見出した。研究代表者らはすでに、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を阻害すると中性脂肪の細胞内量が減少すること、さらにミトコンドリア分裂遺伝子をノックダウンすることによりトコンドリアの形態を融合型に変化させると細胞内中性脂肪量が減少し、逆にミトコンドリア融合遺伝子をノックダウンすることによりトコンドリアの形態を分裂型に変化させると細胞内中性脂肪量が増加することを見出している。すなわち上記の結果は、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介したシグナル伝達にミトコンドリアの形態調節が関わっていることを示唆している。この結果は細胞内中性脂肪量の調節機構として新規のシグナル伝達機構の存在を示唆しており、今年度と来年度にかけて細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介したミトコンドリアの形態調節機構の解析も進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
BGL化resveratrolとpiceatannolの合成用試薬、細胞培養試薬、遺伝子ノックダウン用siRNA、その他一般試薬として約90万円を、学会発表用、情報収集、研究打合せ費用および論文投稿料として約30万円を申請したい。
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Research Products
(5 results)