2012 Fiscal Year Research-status Report
ストレス誘導性分子TRB1、TRB3によるストレス制御と疾患発症の分子メカニズム
Project/Area Number |
24590085
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
林 秀敏 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80198853)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / DNA損傷 / タンパク質分解 / 転写制御 / がん化 / pseudokinase / TRB1 / TRB3 |
Research Abstract |
申請者らは、新規キナーゼ様分子TRB3が小胞体ストレスや栄養飢餓などで誘導され、これらストレスを絶妙に制御していること、その類似タンパク質TRB1はDNA傷害等で誘起されることを明らかにしている。これら2つの類似したpseudokinaseはともに、その発現や機能の異常が細胞のがん化や糖質・脂質の代謝異常に関与しているという共通性もみられるが、その発現機序や作用機作については異なる点も多く、詳細は不明であり、本研究では、TRB1, TRB3、2つの分子がストレスを制御する分子メカニズムの違いを明らかにし、その制御破綻によって誘発される疾患の発症メカニズムの分子基盤を構築する。 1.小胞体ストレスによるTRB3の発現制御機構は既に申請者らが明らかにしているが、今回新たに、発がんプロモーターのTPAによるTRB1の顕著な誘導が見られた。TRB3にはそのような発現上昇は見られず、TRB1に対して特異的な誘導であることが明らかとなった。 2.pseudokinaseであるTRB分子は基質分子結合部位を有しているがkinase活性がないため、decoy kinaseのようなシグナル制御分子として働く可能性から、まず、TRB3のkinase like domain(KLD, 基質結合領域)に結合する部分にFLAGとSteptagを連結しタンデムアフィニティー精製するための発現ベクターを設計・作製し、リコンビナントタンパク質を得た。preliminaryな実験として、現在、そのKLD領域に特異的に結合するタンパクを確認している。 3.TRB3がTGFβのシグナルを強く制御し、そのシグナル伝達転写因子 Smad3 の DNA 結合阻害が作用点であることを見出しているが、TRB1にも同様の機序でTGFβのシグナルを阻害することを見出し、TRB1がTGFβシグナルによって誘導させることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TRB1/TRB3の発現制御機構の解析、結合タンパクの単離同定、TGFβシグナルの制御機構については、概ね計画通り順調に進んでおり。新たな発現制御の発見、結合タンパクの同定系の構築、TRB1によるTGFβシグナルの阻害とTGFβシグナルによるTRB1の誘導の発見とそのメカニズムの解析が進んでいる。唯一、TRB1による細胞周期制御の検証については、担当者の転出により、ペンディングの状態であったが、平成25年度から再開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、下記のような計画で遂行する。 1.TRB1、TRB3の発現制御機構の解析:今回明らかにした発がんプロモーター TPA によるTRB1の顕著な誘導のメカニズムを検討し、がん化との関連を明らかにする。また、他の DNA傷害による発現誘導機構の解析も進める。 2.TRB1およびTRB3との結合分子の探索・同定:TRB3の kinase like domain(KLD, 基質結合領域)に結合する部分にFLAGとSteptagを連結したタンデムアフィニティー精製系により TRB3-KLD 領域に特異的に結合するタパパクを分離同定する。同様に、TRB1 の KLD に結合するタンパク同定系を構築する。 3.TRB1による細胞周期制御の検証:申請者らが提案している仮説(cdh1およびchk1/2のTRB1による阻害によるCDC25Aの安定化)を検証するため、TRB1のレンチウイルスによる過剰発現、shRNAによるノックダウンを行 い、検討する。 4.TRB1/TRB3によるTGFβのシグナル伝達制御 -がんの悪性化に伴う変化の可能性-:TRB1/TRB3によるTGFβシグナル伝達機構の解析(共通点、相違点)を進め、また、その誘導機構との関連性も検討し、がんの悪性化との因果関係を明らかにする。今回新たに、TRB3/TRB1によるT細胞からのインターロイキン2(IL-2)産生の正および負の制御を見出したことから、そのメカニズムも詳細に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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