2013 Fiscal Year Research-status Report
ストレス誘導性分子TRB1、TRB3によるストレス制御と疾患発症の分子メカニズム
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24590085
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
林 秀敏 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80198853)
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Keywords | 小胞体ストレス / DNA 損傷 / タンパク質分解 / 転写制御 / がん化 / pseudokinase / TRB1 / TRB3 |
Research Abstract |
本研究では、TRB1、TRB3、2つの分子がストレスを制御する分子メカニズムの違いを明らかにし、その制御破綻によって誘発される疾患の発症メカニズムの分子基盤を構築する。 1. ヒトT細胞株 Jurkat 細胞からのイオノマイシン/PMA 処理によるインターロイキン2(IL-2)産生は TRB1 の過剰発現により抑制され、これは IL-2 のプロモーター上で IL-2 の転写に重要な転写因子 NF-AT に TRB1 が HDAC3(ヒストン脱アセチル化酵素3)をリクルートしているため、一方、TRB3 の過剰発現により IL-2 産生は増強するが、これは NF-AT と HDAC1 との結合を TRB3 が阻害しているためであることが示唆された。 2. Strep-tag/Flag と2種類の tag を付加した pseudokinase TRB3 のキナーゼ様ドメインを安定的に発現させた細胞を調製し、アフィニティー精製を連続して行うことにより、pseudokinase TRB3 のキナーゼ様ドメインと結合するタンパク質を複数同定した。 3. TRB1 が TRB3 同様、TGF-beta のシグナル依存的な標的遺伝子の転写活性化を抑制することを明らかにしているが、その阻害には評定遺伝子選択性が存在することを明らかにした。また、TRB3 と異なり、TRB1 は TGF-beta 刺激で発現誘導され、negative feedback 制御が働いていることが明らかとなった。また、TGF-beta の TRB1 誘導作用には ERK の経路の活性化が関与していることが明らかとなった。 4. タプシガルギン添加によって小胞体ストレスを細胞に起こすと、細胞周期を負に制御する遺伝子群の誘導がおこること、その際、TRB3 はその作用を抑制することが明らかとなった。また、グルコース枯渇やアミノ酸枯渇によっても同様の現象が起こることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TRB1/TRB3 のが発現制御機構の解析、結合タンパク質の単離同定、TGFβシグナルの制御機構については、概ね順調に進んでおり、新たな発現制御機構の発見、結合タンパク質の候補、TRB1による TGFβシグナルの阻害の機序を明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に引き続き、下記のような計画で遂行する。 1. TRB1 の転写活性化が PMA刺激、あるいは ERK の活性化を介した TGF-beta 刺激で起こることが明らかとなり、その下流の転写因子の解析・同定を行うとともに、がん化との関係を解明する。 2. TRB3 のキナーゼ様ドメインとの結合タンパク質を複数、同定したことから、これらのタンパク質の活性や局在、安定性などへの TRB3 の影響について解析を進める。また、 この領域は TRB1 のキナーゼ様ドメインとも類似性が高いことから、同定したタンパク質の TRB1 による影響も検討する。 3. 小胞体ストレスや栄養飢餓などの処理による細胞周期の停止機序、ならびにその作用の TRB3 による解除機序を明らかにし、TRB3 と発がんとの関連性を明らかにしていく。 4. 様々なストレスにより誘導される CHOP や TRB3 の発現を指標に天然物由来成分のスクリーニング系を確立させ、誘導分子、あるいは阻害分子の同定を進める。
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