2014 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス誘導性分子TRB1、TRB3によるストレス制御と疾患発症の分子メカニズム
Project/Area Number |
24590085
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
林 秀敏 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80198853)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 小胞体ストレス / DNA損傷 / タンパク質分解 / 転写制御 / がん化 / pseudokinase / TRB1 / TRB3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は腫瘍細胞における TRB1, TRB3のストレスを制御するメカニズムや寄与の違いを中心に解析を進めた ①種々の腫瘍細胞のTRB1をノックダウン(KD)することにより、細胞の増殖速度が低下することが見出された。そのメカニズムを解析すると、TRB1はDNA傷害のような外的ストレスによるp53の発現誘導や活性化を抑制し、その標的遺伝子の一つで細胞周期制御因子p21の発現誘導も減弱していることが、KDの結果から明らかになった。また、その分子メカニズムとして、TRB1がHDAC1のp53へのリクルートを促進し、p53の脱アセチル化を亢進させることによって、p53の活性を低下させることを見出した(Biol. Pharm. Bull., 2015)。また、TRB1のノックアウト(KO)MCF7細胞を作製し、その形質を解析したところ、やはりその増殖速度は低下し、恒常的なERKやAktの活性も低下していることが明らかとなった。スフェロイド形成能も低下も見られ、がん細胞の形質獲得にTRB1が大きく貢献していることが強く示唆された。 ②TRB3は小胞体ストレスなど各種外的ストレスによって誘導され、ストレスによる増殖抑制を制御していることを見出している。このメカニズムとして、小胞体ストレスや栄養飢餓などによってATF4依存的(p53非依存的)にp21やアポトーシス関連遺伝子NOXAなどが誘導されるが、同時に誘導されるTRB3がこのATF4の活性を強く阻害していることがTRB3のKD、KO細胞を用いた実験から明らかとなった。また、DNA傷害によるChk1の活性化をTRB3が抑制することにより、チェックポイント機能を撹乱している可能性も明らかにした。これらの結果からTRB3はストレスによる細胞周期停止、あるいはアポトーシスを抑制し、がん細胞の増殖に有利に作用しているものと思われる。
|