2013 Fiscal Year Research-status Report
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24590090
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
本間 浩 北里大学, 薬学部, 教授 (50190278)
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Keywords | D-アスパラギン酸 / ラセマーゼ / D-アミノ酸 / 組換えタンパク質 / siRNA |
Research Abstract |
高等動物体内にはD型アミノ酸を機能分子とするバイオシステムが存在し、D-アスパラギン酸(D-Asp)は、神経内分泌・内分泌系においてホルモンの生成と分泌の調節に関与すると考えられている。D-Aspの細胞外放出や分解、細胞内取り込みなどに関する研究は進展しているが、その生合成についてはほとんど明らかになっていない。 本研究課題で我々は、D-Asp合成酵素遺伝子の特定を目指して研究を続けている。平成25年度には、前年度から継続して、候補遺伝子の組換えタンパク質を大腸菌内で発現させ、活性を直接測定して合成酵素を同定しようというアプローチを行った。しかし、試みたすべての条件(30通り以上)で組換えタンパク質が不溶性画分に回収された。そこで、不溶性タンパク質の可溶化と再生を試みた。可溶化剤として塩酸グアニジンを、一次透析液中の可溶化剤として種々の濃度の尿素、アルギニン、Triton X-100、NaClなどを用いて検討したが、いずれの条件でも酵素活性は検出できなかった。組換えタンパク質の不溶化はそのタンパク質固有の性質による場合が多いため、このアプローチによる合成酵素の同定は困難と考えられた。 一方、前年度から、D-Aspが検出される培養細胞株の探索を続けてきた。今年度末までに、種々の細胞株(ラット由来3種類、ヒト由来6種類)においてD-Aspを検出した。さらに詳しい定量により、そのうちの2種(ラット由来1種類、ヒト由来1種類)がD-Asp合成能を有することを確認した。これらを用いて、D-Asp含量と候補遺伝子の発現量との相関関係の解析を進めている。今年度は特に、アメリカのグループが報告したクローンについて詳しく解析した。その結果、当該クローンの発現量とD-Asp含量とには全く相関関係がなく、ラットとヒトでは、当該遺伝子はD-Aspの生合成には関与しないことが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
D-Asp合成酵素の候補遺伝子から、大腸菌内で組換えタンパク質を可溶性に調製することは困難であった。組換えタンパク質の可溶化と再生を試みたが、成果を得ることはできなかった。組換えタンパク質の不溶化は、多くの場合、そのタンパク質固有の性質と判断されるため、候補遺伝子から大腸菌内で組換えタンパク質を調製するアプローチは、困難と判断した。このアプローチによる合成酵素の同定は明確で有効な方法であるが、1)活性発現に翻訳後修飾が必須である場合や、2)複数の合成系路が関与している場合、3)複数のタンパク質の物理的会合が活性発現に必要である場合などには、このアプローチにより合成酵素を同定することは難しい。本研究計画では、組換えタンパク質の調製による同定が難しい場合には、培養細胞株を用いる別なアプローチを計画していた。すなわち、1)D-Aspが検出されるほ乳類培養細胞株を探索する、2)候補遺伝子の発現量とD-Asp含量の相関関係を解析して合成酵素関連遺伝子としての可能性を明らかにする、3)詳細な定量によりD-Asp合成能を有する培養細胞株を特定する、4)small interfering RNA(siRNA)により候補遺伝子の発現を抑制(knock down)したときに、D-Asp含量(生成)がどのように変化するかを解析してD-Asp合成に関与する遺伝子を特定する。このうち、今年度は、1)、2)および3)について研究を進めることができた。今後は、これらの結果をもとに4)の解析を進める予定である。以上から、本研究計画が概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
種々のほ乳類培養細胞株を用いて、D-Asp含量と候補遺伝子の発現量との相関関係を解析した結果、アメリカのグループが既に報告していたクローンはD-Asp合成にほとんど関与しないことが示唆された。このクローンについては、ほ乳類の種間で相同性が低い点、活性中心と想定されるアミノ酸残基が欠失している点など、疑問点が少なくなかったが、今回の結果からD-Asp生成には関与しないことが強く示唆された。今年度の結果から、D-Asp合成能を有する複数の培養細胞株が特定できたので、これらの細胞株からsiRNAを安定に発現する株を単離し、D-Asp含量(合成)が親株と比較してどのように影響されるかを解析して、候補遺伝子の特定を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、ちょうど0円にできなかったため。 平成26年度は、この金額を物品費として含め、残金が0円になるように支出する予定である。
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[Journal Article] Identification of novel D-amino acid oxidase inhibitors by in silico screening and their functional characterization in vitro2013
Author(s)
M. Katane, N. Osaka, S. Matsuda, K. Maeda, T. Kawata, Y. Saitoh, M. Sekine, T. Furuchi, I. Doi, S. Hirono, H. Homma
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Journal Title
J. Med. Chem.
Volume: 56, (5)
Pages: 1894-1907
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The antiviral drug acyclovir is a slow-binding inhibitor of D-amino acid oxidase2013
Author(s)
M. Katane, S. Matsuda, Y. Saitoh, M. Sekine, T. Furuchi, N. Koyama, I. Nakagome, H. Tomoda, S. Hirono, and H. Homma
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Journal Title
Biochemistry
Volume: 52, (33)
Pages: 5665-5674
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] mRNA expression of L-serine synthesis enzyme in the peripheral blood of patients with schizophrenia2013
Author(s)
Yuji Ozeki, Masae Sekine, Kumiko Fujii, Takashi Watabnabe, Yumiko Takano, Hiroaki Okayasu, Takahiro Shnozaki, Akiko Aoki, Hideaki Aoki, Mori Harunobu, Kazufumi Akiyama, Hiroshi Homma, Kazutaka Shimoda
Organizer
11th World Congress of Biological Psychiatry
Place of Presentation
京都国際会館(京都)
Year and Date
20130623-20130627
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