2012 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞特異的細胞死誘導分子の局在制御に着目した分子標的がん治療の新たな展開
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24590092
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小島 裕子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60231312)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アポトーシス / 分子局在 / TRAIL / がん治療 / 薬物 |
Research Abstract |
1) TRAIL (TNF-related apoptosis inducing ligand)が,DR5 (Death receptor 5)・DR4 (Death receptor 4) に結合して誘導される細胞死に対して,抵抗性を示すマウス腫瘍細胞株:B16,3LL-2について,FACSとレーザー顕微鏡による解析を行い,DR5の発現と局在を調べた結果,細胞膜とゴルジ装置を含む細胞質に局在していた.一方,ヒト腫瘍細胞株:A549,SW620,SK-Mel 5,526 Melは,いずれもTRAILの作用に対して抵抗性を示し,DR5 は細胞膜とゴルジ装置を含む細胞質の他,主に核に局在していた.このヒト腫瘍細胞株の結果は,TRAIL感受性のヒト腫瘍細胞株では核にDR5がほとんど見られず,TRAIL抵抗性のヒト腫瘍細胞株では核に局在していた事実と,矛盾がなかった.従って,マウスでは,ヒトで見られるTRAIL抵抗性とDR5の局在との関係がそのまま成立せず,他の因子による何らかの制御が働いている可能性が考えられた. 2) 細胞分裂阻害剤:K858,Paclitaxel,Tryprostatin Aと,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤:バルプロ酸,インポーチン阻害剤:Importazoleをヒト腫瘍細胞株HeLaに作用させ,Caspase-3活性,MTT-assay, 位相差顕微鏡観察により,TRAIL依存性細胞死が増強されるかを検討した結果,Tryprostatin AとImportazoleで効果が認められた. 3) ヒト腫瘍細胞株の核内DR5の機能を解析する目的で,HeLaでDR5のノックダウンを行ったところ,アポトーシスが誘導された.核内DR5がほとんどないDU145細胞株では変化がなかったことから,核内DR5 が腫瘍細胞の生存に寄与している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスのDR5のアミノ酸配列からは,ヒトのDR5のアミノ酸配列と相同性のある,NLS (Nuclear localization signal) 様配列が存在したが,実際に実験で調べた限りでは,マウス腫瘍細胞株では,ヒトで見られたようなDR5の核内局在は見られなかった.従って,予定していた実験のうち,マウス腫瘍細胞株でのNLSの同定は行えなかった.それに代わって,がん治療の観点から,新規に発売されたものを含む低分子の薬物によって,インポーチンβ1によるDR5の核内への運搬を阻害することができないかを調べた.DR5の局在には顕著な変化が見られなかったものの,TRAILによりカスパーゼが活性化されて細胞死が亢進した薬物があったことから,これらには腫瘍の拒絶効果が見られる可能性があり,今後の展開によっては更に調べる余地がある. 次年度は,マウスへのマウス腫瘍細胞株の同種移植ではなく、マウスにヒト腫瘍細胞株を異種移植することで,インポーチンβ1のノックダウンによって細胞膜上の発現が高くなった状況で,より効果的にTRAILによる腫瘍拒絶が可能になるか,in vivoの効果を見る予定である.従って,概ね進行状況には大きな変化はないものと考えている.動物実験には,結果の判定まで時間を要することから,核内DR5の機能解析も視野に入れて,実験を進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
1) インポーチンβ1ノックダウンのin vivoでの効果…in vitroでは,インポーチンβ1ノックダウンで誘導される,核内から細胞膜へのDR5の局在変化で,TRAIL依存性アポトーシスの増強が見られたが.実際に生体内の腫瘍拒絶に効果を発揮するかを,異種移植で調べる.まず,テトラサイクリン誘導性に発現する,インポーチンβ1のshRNAをHeLaに導入,SCIDマウス背部皮下に移植する.それと同時に,または腫瘍の生着を確認後,マウスにテトラサイクリンを投与し,経時的に腫瘍径を計測,コントロールマウスの腫瘍径と比較する.shRNAによる腫瘍拒絶効果が見られた場合は,腫瘍移植と同時に,または腫瘍生着の後,抗TRAIL抗体をマウスに投与し,腫瘍拒絶効果が抑制されるかを見る.更に,核内DR5がほとんどなく,in vitroでもインポーチンβ1のノックダウン効果が認められない前立腺腫瘍細胞株:DU145を用いて,HeLaと同様の実験を行い,in vivoでもインポーチンβ1ノックダウン効果が認められないかを確認する. 2) 核内DR5結合タンパク質の同定…HeLaとDU145の核タンパク質可溶化分画を調製し,予め抗DR5抗体とコントロール抗体を化学的に結合させたビーズを用いて,DR5と結合タンパク質複合体を免疫沈降する.SDS電気泳動後ゲルを染色,抗DR5抗体特異的なバンドとコントロールに相当するバンドを切り出し,それぞれタンパク質を抽出,LC/MS/MSにて解析して,DR5結合タンパク質を検索する.この方法で,目的のタンパク質の同定が難しい場合は,DR5 のcDNAにFLAGとヒスチジンの2種類のタグを付加し,HeLaとDU145に導入,これらの細胞からサンプル調製を行い,抗FLAGカラムで免疫沈降,ヒスチジンカラムで精製した後,DR5タンパク質複合体を抽出,同様に質量分析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・ インポーチンβ1ノックダウンのin vivoでの効果を調べるための実験動物(SCIDまたはNOGマウス):600,000円 ・ インポーチンβ1のshRNAの他,ヒト腫瘍細胞株のマウスへの異種移植用,および核内DR5結合タンパク質の同定に用いる培養用試薬・器具・抗体類:250,000円 ・ 核内DR5結合タンパク質同定のための分子生物関連試薬・器具:200,000円 ・ 核内DR5結合タンパク質同定のための質量分析関連試薬・器具:200,000円 ・ 学会発表旅費:50,000円 以上合計:1,300,000円
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