2014 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレス・病態マーカーとなる酸化リン脂質の高感度定量系の構築
Project/Area Number |
24590094
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
板部 洋之 昭和大学, 薬学部, 教授 (30203079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 里奈 昭和大学, 薬学部, 助教 (30392400)
小濱 孝士 昭和大学, 薬学部, 講師 (60395647)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 酸化LDL / 酸化リン脂質 / リゾホスファチジルコリン / 動脈硬化症 / LC-MS/MS / PAF-AH |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化症の発症要因である酸化LDLは、全身性あるいは組織局所での酸化ストレス状態を評価マーカーとなる可能性がある。生体内の酸化LDLの性状はほとんど分かっておらず、分子レベルでの解析により、その特性を明らかにすることが必要である。本研究では、①LC-MS/MSを用いた酸化ホスファチジルコリン(PC)の高感度定量法を構築し、硫酸銅によるLDL酸化過程の経時的な変化を分析した。酸化変性の進行に伴い、急激なPUFA含有PC分子種の消失とリゾPCの生成を検出した。さらに、このリゾPC生成がPAFアセチルヒドロラーゼ依存的であることを確認した。硫酸銅処理ウサギLDLでもほぼ同様の経過をたどることが分かったが、リゾPCの生成量はヒトLDLよりも少なく、ウサギでは動脈硬化がヒトよりも進展し難いこととの関連が考えられる。②陰イオン交換カラムとモノクローナル抗体による固相吸着によって、ヒト血漿中の酸化LDLを分離することに成功した。分離した画分のLDLは、陰性荷電の増加によりアガロースゲル電気泳動での移動度が増加した。また、抗酸化PC抗体によりウエスタンブロットで検出され、血漿中の酸化LDL様の性状を示すLDL粒子の存在が生化学的に立証できた。このヒト血漿中の酸化LDLのリン脂質分子種をLC-MS/MSを用いて分析したところ、銅酸化LDLとは異なり、ほとんどリゾPCの増加は認められず、生体内酸化LDLには銅酸化LDLとは大きな違いがあることを見出した。血漿中では、酸化LDL中に生じたリゾPCが速やかに再アシル化を受けて再びPC分子となるため、過剰な蓄積が起こり難い可能性が考えられた。生体内での酸化LDL中での脂質代謝の動きを明らかにするために、安定同位体標識脂質プローブの作製の準備を始めている。9CHO-PCのような比較的安定な酸化PC分子やアポBタンパク質の修飾構造も検出されており、酸化ストレスのマーカーとなる可能性について、多くのヒト血漿サンプルの分析例を集めて検証したい。
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