2012 Fiscal Year Research-status Report
死細胞により誘導される炎症応答に対して老化が及ぼす影響とそのメカニズムの解明
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24590100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
永田 喜三郎 東邦大学, 理学部, 准教授 (10291155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 芳郎 東邦大学, 理学部, 教授 (10134610)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 老化 / 炎症 / アポトーシス / 貪食 |
Research Abstract |
生体内でアポトーシスに陥った細胞は、マクロファージなどの貪食細胞によって速やかに除去される。しかし、この除去システムに何らかの破綻が生じると、アポトーシス細胞が残存し、ネクローシスに移行し細胞が原因となり、強い炎症応答を引き起こす。この炎症応答は、老化に伴う様々な疾病に関わる可能性がある。そこで本研究では、アポトーシス細胞に対する応答やマクロファージの貪食能に着目し、アポトーシス細胞貪食除去における老化の影響を調べた。 投与したアポトーシス細胞の残存量を解析したところ、若年マウスでは速やかにアポトーシス細胞が除去されているのに対し、老化マウスでは長時間残存していることが確認できた。次に浸潤細胞を経時的に調べると、炎症応答時にみられる好中球の浸潤は 若年マウスと比較して老化マウスの方が有意に増加し、かつ、早期に浸潤していることが確認できた。 次に、in vitro で腹腔常在性マクロファージの貪食率および貪食能を解析した。貪食率では 老化マウスの方が 若年マウスよりも有意に低く、時間が経過しても 若年マウスのように貪食率が上がることはなかった。一方、貪食能では、共培養 1 h の時点では 若年マウスの方が有意に高くなったが、6 h の時点では、老化マウスの方が有意に高くなることが確認された。これは、若年マウスの方が速やかに貪食が行われるため6 h では貪食したアポトーシス細胞が消化されつつあるためと考えられる。これらの結果から、老化マウスでは腹腔常在性マクロファージの貪食能が低下し、アポトーシス細胞の速やかな除去が行われず、長時間アポトーシス細胞が残存し、強い炎症応答を引き起こすことが示された。 さらに、老化マウスの腹腔常在性マクロファージが、前活性化状態にあることも明らかにしており、この前活性化状態が、マクロファージの貪食能低下を引き起こしていると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、老化マウスにおける死細胞に対する自然免疫応答の仕組みを解明するために以下の実験を計画していた。 『常在性マクロファージの貪食応答に対する老化の影響』として1)常在性マクロファージの貪食応答への老化の影響、2)アポトーシス細胞認識分子への老化の影響、3)組織マクロファージの生体内分布への老化の影響。 『炎症応答の重篤化への老化の影響(その1)』として4)ネクローシス細胞から放出されるHMGB-1の解析。 上記項目のうち、1)および2)の項目については、ほぼ明らかとしており、国内学会および国際学会への発表とともに論文発表の準備をしている。3)および4)の項目については、発表には、まだ至っていないが、発表できる段階にあり、総合的におおむね順調に研究計画を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
『炎症応答の重篤化への老化の影響(その2)』 1)炎症巣でのDAMPs の産生およびその受容体の解析:ネクローシス細胞によって誘発された炎症巣では、様々なDAMPsが検出され、HMGB-1以外のDAMPsも炎症反応の重篤化に重要な役割を果たしていると考えられる。そこで、炎症巣で検出されることが知られているHSPs (heat shock proteins)、Defensins、Uric acidの産生量に対する老化の影響を調べる。また最近、DAMPsの受容体としてMincleという分子が注目されている。そこで、老化による炎症応答の重篤化とMincleとの関わりを探る。これらの目的のため、HSPsなどの液性因子の解析には、ELISA kitを、受容体および分子の抗体作成には、マウスおよびウサギを購入する。 『炎症応答の慢性化への老化の影響』 2)ネクローシス好中球から放出されるS100の解析:ネクローシスした浸潤好中球からS100が放出されると、二次的な好中球の浸潤を促し、炎症応答が連鎖的に引き起こされ、結果として慢性化すると考えられる。そこでまず、S100の生化学的解析を行う。 3)炎症巣における細胞外DAMPsの誘導:ネクローシス好中球から放出されるelastaseなどのプロテアーゼは、細胞外基質を分解(消化)することにより、細胞外DAMPsであるCDPs (Collagen-derived peptides)、EDPs (Elastin-derived peptides)を炎症巣に産み出す。しかしながら、これらの分子の炎症応答に対する効果については全く分かっていない。そこで細胞外DAMPsの炎症応答の慢性化への関わりを明確化し、前項から得られる知見と合わせて老化における炎症反応の慢性化のメカニズムに迫る。これらの目的のため、DAMPs検出ようのキットおよび抗体を購入する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
『炎症応答の重篤化への老化の影響(その2)』 1)炎症巣でのDAMPs の産生およびその受容体の解析:1-1)HSPs 、Defensins、Uric acidの産生量への老化の影響、1-2)Mincleの発現への影響、1-3)Mincleのシグナル伝達への影響、について調べ、DAMPsへの老化の影響について広範囲にフォローし、さらに老化における炎症応答の重篤化のメカニズムを追求する。 『炎症応答の慢性化への老化の影響』 2)ネクローシス好中球から放出されるS100の解析:2-1)S100の生化学的解析を行うためのツールとしてS100(特に好中球に強く発現しているCalprotectin; S100 A8/A9)に対する抗体の取得を行う。2-2)(抗体取得後)炎症終息期におけるS100産生量への影響、2-3)S100中和による炎症応答の慢性化への影響について調べ、二次的に産生されるS100の機能に対する老化の影響について明確化する。 3)炎症巣における細胞外DAMPsの誘導:3-1)CDPsおよびEDPsの二次的な好中球の動員に対する効果、3-2)プロテアーゼ阻害剤により細胞外DAMPsの産生を抑制したときの炎症応答への影響について調べる。
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[Journal Article] Cytokine Secretion from human monocytes potentiated by P-selectin-mediated cell adhesion.2013
Author(s)
Suzuki, J., Hamada, E., Shodai, T., Kamoshida, G., Kudo, S., Itoh, S., Koike, J., Nagata, K., Irimura, T., and Tsuji, T.
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Journal Title
International archives of Allergy and immunology
Volume: 160
Pages: 152-160
Peer Reviewed
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