2013 Fiscal Year Research-status Report
腸管免疫系の恒常性維持におけるレチノイン酸産生酵素の役割とその発現制御機構の解明
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24590106
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
大岡 嘉治 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (60303971)
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Keywords | 腸管免疫 / 樹状細胞 / レチノイン酸 / エピジェネティック / RALDH2 / メチル化 / Sp1 / レチノイン酸受容体 |
Research Abstract |
ビタミンAの代謝産物であるレチノイン酸 (RA) は、腸管免疫系の恒常性維持に極めて重要な役割を果たしていることが明らかになっている。我々のグループは、腸間膜リンパ節に存在する樹状細胞 (DC) の一部にビタミンAからRAを合成する酵素、retinal dehydrogenase 2(RALDH2)が特異的に発現していること、また、その発現に顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)やRA自身が重要な役割を果たしていることを報告したが、その発現制御機構の詳細は明らかではなかった。今回、RALDH2遺伝子の発現制御機構を検討するため、マウスRALDH2遺伝子のプロモーター領域近傍を解析した結果、CpG配列に富む遺伝子配列が存在することが判明したことから、RALDH2遺伝子の発現にCpG配列のメチル化によるエピジェネティックな制御機構が関与していることを想定し、研究を進めた。その結果、このCpG配列には転写因子Sp1が結合し、RALDH2遺伝子の転写活性を促進することを見出した。また、このCpG配列のin vitroにおけるメチル化により、Sp1の転写活性化は顕著に抑制された。しかしながら、RALDH2遺伝子を発現していないDCやT細胞などの正常細胞でも、このCpG配列のメチル化は観察されず、一部の細胞株でのみメチル化が観察されたことから、RALDH2遺伝子の特異的発現制御はメチル化以外の機構による制御であることが判明した。一方、このCpG配列に富む領域に、RA応答配列ハーフサイトが存在するのを発見し、実際に、この配列にRA受容体(RAR)/レチノイドX受容体(RXR)が結合し、RAに応答してRALDH2遺伝子の転写を活性化することを明らかにした。さらに、このRA応答配列ハーフサイトを介する転写活性はSp1と協調的に作用することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RALDH2遺伝子の細胞特異的な発現は、当初予想したDNAメチル化による制御ではなく、それ以外のエピジェネティックな分子機構による制御であることが判明したが、マウスRALDH2遺伝子プロモーター領域の解析により、その発現に転写因子Sp1が関与すること、また、レチノイン酸応答配列ハーフサイトが存在するのを発見し、RALDH2遺伝子発現のレチノイン酸依存性の分子機構の一端を明らかにした。これらの成果をまとめ、原著論文として学術雑誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
正常マウスDCにおけるRALDH2遺伝子発現のDNAメチル化以外のエピジェネティックな制御機構を明らかにするため、RALDH2遺伝子プロモーター近傍を中心にヒストンのアセチル化やメチル化の状態を検討し、クロマチン構造の変化による遺伝子発現制御の可能性について検討する。さらに、これまでの研究で明らかになったRALDH2遺伝子発現に関与する転写因子の役割解明、DNAアレイ法による、RALDH2遺伝子発現制御に関与する転写因子の探索を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の繰り越しによる。 次年度使用額と合わせ適切に処理する。
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