2012 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫疾患の炎症病態形成・維持に関わる細胞間相互作用の研究
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24590108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
大木 伸司 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第六部, 室長 (50260328)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自己免疫疾患 / 多発性硬化症 / 核内受容体 / NR4A2 / インターロイキン17 / Th17細胞 / 病態多様性 / バイオマーカー |
Research Abstract |
我々は、多発性硬化症(MS)をはじめとする自己免疫疾患の病態形成機構の解明を目指した基礎研究を進めている。今年度は、MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の病態形成過程における病原性Th17細胞の機能制御因子として、MS患者の網羅的遺伝子発現解析から同定したオーファン核内受容体NR4A2に着目し、解析を進めた。その結果、NR4A2がIL-21/IL-23受容体などのTh17細胞分化制御因子をコントロールすることで自己反応性Th17細胞の分化に密接に関わり、T細胞のNR4A2機能を抑制することで、EAE病態が顕著に改善することを明らかにした。自己免疫疾患は、病原性Th17細胞による自己抗原認識に引き続く自己組織の障害から始まるが、これには病原性T細胞を介した標的臓器への炎症性ミエロイド系細胞の浸潤が必要である。新規に樹立したヘルパーT細胞特異的NR4A2欠損(NR4A2cKO)マウスのEAE解析から、ヘルパーT細胞のNR4A2欠損により、中枢神経系へのミエロイド細胞の浸潤が強く抑制され、EAE病態も軽減した。したがってEAE発症時の中枢神経系へのミエロイド系細胞の浸潤は、NR4A2陽性T細胞により制御されること、T細胞に発現するNR4A2を標的とすることで、ミエロイド系細胞による炎症の遷延化をともなう自己免疫病態の制御が可能であることが示された。またNR4A2に依存しないEAE病態の存在も明らかとなり、本研究は新しい展開を迎えつつある。NR4A2欠損マウスは、EAE病態形成過程における各免疫担当細胞の相互作用の解析を可能にする極めて有効なツールであり、病態形成メカニズムの解明へ向けて、他の実験系では解析できない極めて斬新なアプローチを可能にすることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
MS患者T細胞の網羅的遺伝子発現解析から同定したオーファン核内受容体NR4A2が、MSをはじめとする種々の自己免疫病態形成に密接に関わるTh17細胞の機能に必須の因子であることを示し、その分化過程に関わる因子群を同定した。さらにEAEを用いた解析からNR4A2を標的とした自己免疫病態の改善が期待できることを明らかにした。またNR4A2cKOマウスが顕著なEAE耐性を示すことを明らかにし、NR4A2陽性T細胞が、EAE発症時のミエロイド系細胞の浸潤と炎症の遷延化を制御することを示した。一連の結果は、NR4A2が自己免疫病態形成の中核を担う分子であることを強く示唆している。またNR4A2に依存しないEAE病態の存在も明らかとなり、本研究は新しい展開を迎えつつある。よって本年度の研究は、全体を通じて当初の研究計画以上の成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
C57BL/6(B6)マウスにMOGペプチドを免疫して誘導するEAEは、MSの最も一般的な動物モデルとして広く用いられているが、本系における単相性の病態がどのようなメカニズムで形成されるのか、また急性病態と慢性病態、あるいは再発・寛解型病態と難治性進行型病態といった多様なMSの病態をどの程度反映しうるのか、といった議論が続いている。NR4A2cKOマウスでは、病態形成主要な役割を果たすTh17細胞の機能が障害されることで、炎症性ミエロイド系細胞の浸潤減少を伴って急性期のEAE病態が顕著に軽快する。一方興味深いことに、NR4A2cKOマウスでは、免疫後4週間目頃からEAE病態の急激な悪化が認められ、B6マウスのMOG誘導性EAE病態が、質的に異なる少なくとも2種類の病態から成ることが明らかとなった。その後の詳細な解析から、この後期の病態は、急性期病態とは質的に全く異なる、慢性(難治性)病態を反映する可能性を示すデータが得られている。よって、今後もNR4A2cKOマウスを用いて、これらの2種類の病態を詳細に解析し、多様なMS病態の形成メカニズムを分子レベルで明らかにしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度までに引き続き、NR4A2cKOマウスを用いたEAEの急性病態解析のための消耗品を購入する。また急性病態を繰り返し呈する動物モデルとして、SJLマウスにPLPペプチドを免疫して得られるEAE病態を解析するための消耗品および動物を購入する。EAEの慢性病態を詳細に解析するためには、新たな遺伝子改変マウスの導入が適当と考えられるため、これを購入した上で、あわせて解析に必要な消耗品を購入する。その他、当該分野の情報収集に必要な支出(学会参加、書籍購入等)を予定している。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Activated Plasmablasts Migrate to the Central Nervous System2012
Author(s)
Chihara N., S. Oki, T. Matsuoka, W. Sato, Y. Lin, T. Okamoto, M. Ogawa, T. Toda, S. Miyake, T. Aranami, T. Yamamura
Organizer
12th Annual Conference of FOCIS (FOCIS2012)
Place of Presentation
Vancouver Convention Centre, Vancouver, CANADA
Year and Date
20120620-20120623
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