2014 Fiscal Year Research-status Report
土壌微生物「細胞性粘菌」由来の薬理活性物質DIFの研究
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24590110
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
久保原 禅 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (00221937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 至 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (60143492)
大島 吉輝 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00111302)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞性粘菌 / DIF / がん / 糖尿病 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞性粘菌Dictyostelium discoideum(以後「粘菌」)は、単純な生活環を有する土壌微生物であり、細胞生物学や発生生物学研究のモデル生物として利用されている。DIF-1とDIF-3は、粘菌の柄細胞分化誘導因子として発見された低分子化合物だが、我々は、DIFsとそれらの誘導体が複数の薬理活性を有することを発見し、DIFsをリード化合物とした薬剤開発(主として、抗がん剤と糖尿病治療薬の開発)を進めている。平成26年度の本研究においては主に以下を実施した。 1.我々はすでに、DIF-1とその誘導体であるDIF-1(3M)は、in vitro培養系で哺乳類細胞の糖代謝を促進することを発見、報告している。今回我々は、ストレプトゾトシン(STZ)投与で作製した糖尿病ラットを用いて、DIF-1の薬理作用と毒性を検討した。(方法)DIF-1 (30 mg/kg)を経口投与したSTZ糖尿病ラットと非投与のSTZ糖尿病ラット(それぞれ24匹と14匹)に2時間後Glucose負荷をかける。その後30分毎(180分まで)にラットの血糖値をモニターする。(結果)DIF-1を投与したラットでは、Glucose負荷前の血糖値が、コントロールラットよりも有為に下降しており、Glucose負荷後30分で一過性に上昇したが、180分後にはコンロッドラットの血糖値よりも有為に小さな値を示した。また、DIF-1を投与したラットに行動異常などは認められなかった。これらの結果から、DIF-1にはin vivoにおいて血糖値を下降させる作用があることが示された。 2.30種類のDIF誘導体を用いて、in vitroでがん細胞の遊走(リゾフォスファチジン酸誘導性の遊走)を阻害する誘導体をスクリーニングした。いくつかの誘導体が阻害活性を示したため、それらの作用機序を解析した。その結果、DIF誘導体はミトコンドリア活性やMAP kinase活性を阻害することによってがん細胞の遊走を阻害することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vivoでのDIFの薬効(血糖値下降作用)を確認できた。また、抗がん剤としてのDIFの有用性(がんの浸潤/転移阻害)をin vitro培養系を利用して示唆することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね順調に進んでおり、今後も以下を継続する。 1.各種DIF誘導体の有する複数の薬理活性の作用メカニズムの解析。 2.各種モデル動物を用いたDIF誘導体の薬効と毒性の検討。 3.より有効/有用なDIF誘導体の開発。 4.細胞性粘菌をモデルとした「がんの遊走(走化性運動)」のメカニズム解析。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、DIFの示す抗腫瘍作用と糖代謝促進作用の機序解析を進めてきた。その結果、DIFの作用機序の一部が明らかとなったが、当初予定とは異なる視点での生化学的解析等が必要であることが判明した。当該実験には相応の予備検討が必要であり、実験期間を延長することとしたため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
DIFの作用機序解析の継続と、学会及び専門誌における成果発表を行うため、未使用額を充てる。
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