2013 Fiscal Year Research-status Report
海馬神経細胞のS1P受容体をターゲットとした新規てんかん治療法の開発
Project/Area Number |
24590112
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 太郎 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80304088)
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Keywords | スフィンゴシン1-リン酸 / スフィンゴシンキナーゼ / エクソソーム |
Research Abstract |
研究の目的はS1P1受容体およびS1P3受容体が海馬神経細胞においてグルタミン酸放出を促進し、S1P2受容体は逆に抑制することのメカニズムを明らかにすることである。本研究の過程で、細胞内でのS1P1受容体、S1P3受容体の分布とS1P2受容体の分布が異なっていることを見いだした。具体的にはS1P1受容体とS1P3受容体は細胞の形質膜のみならず後期エンドソーム、特にmultivesicular body(MVB)と呼ばれる小胞のlimiting membraneに多く存在しており、一方でS1P2受容体はMVB上には局在していなかった。MVBが形質膜と融合することで内部に含まれていた小胞は細胞外に放出されてエクソソームとなる。 今回判明したS1P1受容体およびS1P3受容体の分布から、エクソソーム放出における両受容体の機能について解析したところ、エクソソームに豊富に含まれることが知られているCD63やflotillinなどのタンパク質放出がS1P1受容体、S1P3受容体のノックダウンや遮断薬で抑制されることが見いだされた。 さらなる詳細な検討により、S1P1受容体とS1P3受容体はエクソソームの生成や放出自体に関わっているのではなく、興味深いことにエクソソームへのタンパク質ソーティングに関わっていることが判明した。 ある細胞から放出されたエクソソームは他の細胞に取り込まれて、免疫応答や癌のバイオロジーにおいて重要な機能を果たしていることが近年報告されている。また神経変性疾患を引きおこすαシヌクレインやAβもエクソソームを介して細胞外に放出されることが報告されている。 今後は当初の予定通り、神経細胞でのS1P受容体各サブタイプの機能について、さらに詳細な検討を加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海馬神経細胞においてS1P1受容体およびS1P3受容体は促進的に働いて神経伝達物質放出を引き起こすのに対し、S1P2受容体はそれとは逆に抑制的に働く。この根本原理は各々の受容体に共役している3量体型Gタンパク質の差によるものである可能性が高いが、一方で今回の我々の検討で、細胞内局在自体が異なっていることが見いだされた。そして特にMVBという特異な細胞内小胞にS1P1受容体とS1P3受容体が集積していることが明らかとなった。またS1P受容体のリガンドであるS1Pを産生するスフィンゴシンキナーゼもMVBに集積していることを今回初めて明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
神経変性疾患においてはαシヌクレインやAβといったタンパク質が異常凝集し、神経細胞死を招くことが指摘されている。一方でこれらの凝集タンパク質はエクソソームを介して細胞外に放出されることも最近報告された。エクソソームは細胞間情報伝達担体であるとの最近のコンセンサスを考えると、このエクソソームを介した凝集タンパク質の放出が神経変性疾患の原因となっている可能性が高い。 今後は当初の予定通り、海馬神経細胞におけるS1P受容体各サブタイプの機能分担について解析し、側頭葉てんかんに対する新しい治療戦略を提案できることを目指すと共に、研究の過程で明らかとなったエクソソーム放出におけるS1P受容体各サブタイプの機能についても検討を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進展により、培養細胞にて行う形態学的・生化学的解析を重点的に行うこととしたため、当初今年度に行う予定であった動物実験を来年度に行うこととした。 研究の進展により加わった細胞レベルでの実験と、当初の予定であった動物飼養実験の両者を行う予定としている。
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