2013 Fiscal Year Research-status Report
ケトン体の化学構造に基づく難治性てんかん制御剤の開発
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24590114
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
井上 剛 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40370134)
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Keywords | 難治性てんかん / ケトン食療法 / 構造活性相関 / グルタミン酸作動性シナプス / 膜電位 / スライスパッチクランプ法 |
Research Abstract |
てんかん患者の約3割は、既存の治療薬が奏功しない「難治性てんかん」であるため、新たなてんかん治療薬が必要とされている。この難治性てんかん患者の一部に、「ケトン食療法」という食事療法が効果的であることが知られているが、ケトン食療法を模倣する抗てんかん薬の報告は無い。ケトン食療法により、体内のエネルギー体はグルコースからケトン体(アセト酢酸・βヒドロキシ酪酸)にスイッチすることが知られている。これらを踏まえ、本研究では以下2項目を行った。 1、平成24年度(1年目)において、ケトン体であるアセト酢酸(βケト酪酸)のカルボニル基をβ位からα位に動かし、ベンゼン環を付加すると、グルタミン酸作動性シナプス伝達が強く抑制されることを報告した。そこで平成25年度(2年目)において、α位の官能基を様々変換させ、グルタミン作動性シナプス伝達の抑制作用を評価した。その結果、α位の官能基の特性(脂溶性、サイズなど)により、シナプス伝達抑制効果が顕著に変化することが明らかとなった。 2、平成24年度において、ケトン食療法時において観察されるエネルギースイッチを引き起こすと、神経細胞の膜電位が制御されること、さらにこれが乳酸脱水素酵素の阻害によっても引き起こされることを報告した。また、乳酸脱水素酵素を阻害すると、ピロカルピン誘導性てんかんも抑えられることを報告した。そこで平成25年度において、難治性てんかんに対する乳酸脱水素酵阻害作用について検討した。その結果、海馬硬化症由来の難治性てんかんモデルマウスに対し、乳酸脱水素酵素を阻害すると、抗てんかん作用を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ケトン食療法に基づいた難治性てんかん制御剤の開発である。平成25年度(2年目)までに、ケトン体であるアセト酢酸の化学構造を出発点とし、グルタミン酸作動性(興奮性)シナプス伝達を制御するアセト酢酸類似化合物の一般的特性を明らかにした。また、難治性てんかんを制御する代謝酵素として、乳酸脱水素酵素も同定した。上記を踏まえ、順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度において、グルタミン酸作動性(興奮性)シナプス伝達を制御するアセト酢酸類似化合物群が明らかとなった。そこで平成26年度において、難治性てんかんモデルマウス(海馬硬化症モデルマウス)に対する作用を検討する。また平成25年度において、乳酸脱水素酵素を阻害すると、海馬硬化症モデルマウスの難治性てんかんが抑えられることが明らかとなった。そこで平成26年度において、乳酸脱水素酵素を阻害し、難治性てんかんを抑える新たな化合物を探索していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ実験計画に沿って遂行したが、僅かな遅延により、約6000円の次年度使用額が生じた。 実験試薬の購入に用いる予定である。
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Research Products
(3 results)