2013 Fiscal Year Research-status Report
ニコチン性アセチルコリン受容体を介する炎症・免疫調節機構の検討
Project/Area Number |
24590120
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
川島 紘一郎 北里大学, 薬学部, 客員教授 (70095008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀口 和秀 福井大学, 医学部, 講師 (20377451)
藤井 健志 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (80255380)
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Keywords | α7ニコチン受容体 / アセチルコリン / SLURP-1 / T細胞 / 樹状細胞 / CD205 / コリン・アセチルトランスフェレース / methyllycaconitine |
Research Abstract |
ニコチン受容体(nAChR)作用物質の代表として,α7 nAChR内因性アロステリック・リガンドSLURP-1の免疫機能調節への関与を検討した.1)免疫組織化学的手法を用いて免疫器官におけるSLURP-1の発現と,2)T細胞機能に及ぼす作用を検討した. 1)ヒト扁桃におけるSLURP-1の発現の検討:主としてリンパ濾胞周辺部と少数のリンパ濾胞内に分布する複雑な形態の細胞がSLURP-1+反応を示した.形態より樹状細胞(DCs)を想定して抗CD205抗体を用いて免疫染色をしたところ,約50%のSLURP-1+細胞がCD205+反応を示した.これらの結果から,SLURP-1のDCsにおける発現を確認した.SLURP-1+DCsはCD4+T細胞の近傍に分布していたことから,SLURP-1は抗原提示反応においてT細胞が分泌したアセチルコリン(ACh)の作用をα7 nAChRにおいて増強する可能性が示唆された. 2)SLURP-1の(1)ヒト白血病細胞株MOLT-3の細胞機能に及ぼす作用の検討:SLURP-1は,MOLT-3の増殖を抑制したが,ACh合成酵素コリン・アセチルトランスフェレースの遺伝子発現を上昇させて細胞内ACh含量と放出量を増大させた.α7 nAChR特異的遮断薬methyllycaconitine(MLA)は,これらのSLURP-1の作用をすべて消失させた.(2)正常ヒト末梢血単核白血球(MNLs)に及ぼす作用:ヒトMNLsにおいても,SLURP-1は増殖を有意に抑制したが,細胞内ACh含量と放出量を有意に増大させた.これらのSLURP-1の作用は,MLAによってすべて消失した.これらの結果は,T細胞の増殖とコリン作動系活性調節におけるnAChRの関与を示すものである. 以上より,nAChRのうち少なくともα7 nAChRの免疫機能調節への関与が明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SLURP-1のヒト扁桃CD205+DCsにおける発現と,CD205+DCsとCD4+T細胞の近傍における分布の発見から,SLURP-1が抗原提示反応の際にCD205+DCsとCD4+T細胞上のα7 nAChRに作用して両者の細胞機能に影響を及ぼす可能性が明らかになった.さらにSLURP-1がT細胞上のα7 nAChRに作用してコリン作動系活性を促進するなどの機能的分化に関与していることも証明できた.これらの知見は,本研究課題の目的とする免疫機能調節におけるnAChRの関与を証明するものである.これらの成果は,論文としてJ Neuroimmunol 267:43-49, 2014に掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
nAChRの免疫機能調節への関与をさらに確認するために,研究手段が確立しているマウスの脾臓から分離したMNLsを用いて,SLURP-1をはじめとする種々のα7 nAChR作用薬やその他のnAChR作用薬のナイーブT細胞からTh1,Th2,およびTh17への分化誘導に及ぼす作用を検討中である.同時に,種々のnAChRの遮断薬を用いて観察結果の確認を行う.これらの検討結果は,nAChRを介する免疫調整薬を開発するための理論的根拠を提供するはずである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた試薬の納入期限が遅れたことによって差額が生じた. 今年度の実験計画の試薬の購入に充当する予定である.
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