2012 Fiscal Year Research-status Report
TRPM2チャネル欠損マウスにおける固形癌の成長抑制とその機構
Project/Area Number |
24590124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
清水 俊一 昭和大学, 薬学部, 准教授 (60196516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 正和 昭和大学, 薬学部, 講師 (30307061)
根来 孝治 昭和大学, 薬学部, 講師 (70218270)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | TRPM2 / 悪性腫瘍 / 血管新生 / 腫瘍関連マクロファージ |
Research Abstract |
酸化ストレス感受性のCa2+透過性チャネルであるTRPM2活性化は、免疫・炎症性細胞のサイトカン・ケモカインの分泌に関わり、炎症性疾患の増悪に関わっていることが明らかになっている。本研究は、悪性腫瘍の成長におけるTRPM2チャネルの関与、さらにその機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、まずTRPM2欠損(KO)マウスと野生型(WT)マウスに培養したマウス肺癌細胞 (LLC細胞)を移植し、腫瘍体積を測定することにより腫瘍の成長を比較した。その結果、TRPM2 KOマウスではWTマウスと比較して腫瘍形成が抑制されることが明らかとなった。そこで、腫瘍の成長に関わる腫瘍内血管新生と腫瘍関連マクロファージの腫瘍への集積をWTマウスとTRPM2 KOマウスで比較した。その結果、両者ともTRPM2 KOマウスで減少が認められた。また、腫瘍内血管新生を促進するvascular endothelial growth factor (VEGF)及びepidermal growth factor (EGF)の腫瘍内含量もTRPM2 KOマウスで減少していた。以上の結果は、TRPM2は悪性腫瘍の成長に促進的にかかわっており、TRPM2を阻害すれば悪性腫瘍の成長を抑制できる可能性を示している。また、その機構としてTRPM2を介した腫瘍関連マクロファージの腫瘍への集積及び血管新生が関わっている可能性が示唆された。これまでにTRPM2と腫瘍成長の関連に関する報告はなく、本研究の成果はTRPM2の役割に関する新たな発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、TRPM2が固形癌の成長に促進的に関わっていることを示し、さらにその機構を明らかにすることを目的としている。機構については、特にTRPM2の発現が高いと予想されるマクロファージの集積、種類及び機能を中心に解析する。具体的には、①腫瘍の血管新生は、TRPM2欠損マウスで抑制されるのか、②腫瘍に集積するマクロファージの数はTRPM2欠損マウスで変化するのか、③腫瘍に集積するM1マクロファージとM2マクロファージの比率はTRPM2欠損マウスで変化するのか、④腫瘍内で分泌されるサイトカインはTRPM2欠損マウスで変化するのか、⑤腫瘍に集積したマクロファージはどのような刺激により活性化されるのか、以上5点を検討し、それらを総合的に解析し、TRPM2チャネルが固形癌の成長に促進的に関わる機構を説明する。平成24年度の研究では、TRPM2欠損(KO)マウスと野生型(WT)マウスに、腫瘍細胞を移植した検討で、TRPM2 KOマウスではWTマウスと比較して腫瘍形成が抑制されることが明らかとなった。この機構について検討を進めたところ、TRPM2 KOマウスでは、形成された腫瘍内の新生血管が少なく、また、腫瘍に集積した腫瘍関連マクロファージが低下していることを認めた。さらに、腫瘍の血管新生に重要であるvascular endothelial growth factor (VEGF)及びepidermal growth factor (EGF)の含量がTRPM2 KOマウスでは、有意に低いことを見出した。このように、TRPM2 KOマウスでは腫瘍形成が抑制され、その機構には腫瘍関連マクロファージの集積低下や成長因子の低下が関わっていることが認められた。平成24年度は、おおむね計画した通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は、腫瘍細胞としてマウス肺がん細胞であるLLC細胞一種類だけを用いて行ってきた。しかしながら、腫瘍細胞は様々な性質を持つことから、TRPM2 KOマウスで腫瘍の成長が抑制されるという現象が、腫瘍の成長に普遍的な現象であるかどうか知るためには、さらに別の悪性腫瘍細胞で検討する必要がある。そこで、今後は新たにマウス前立腺がん細胞であるCMT-93細胞も加えて検討を進める。 次に、腫瘍に集積するマクロファージの数がTRPM2欠損マウスで減少していたことから、その機構について解析を進める。具体的には、腫瘍に集積したマクロファージにTRPM2発現が認められるか、またそのTRPM2活性化はどのような機能を担っているのか検討を進める。また、腫瘍細胞接種後の血中サイトカイン・ケモカイン量の変動を野生型マウスとTRPM2欠損マウスで比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、新たにマウス前立腺癌細胞であるCMT-93細胞を購入して、培養後実験に用いる。また、LLC細胞及びCMT-93細胞をマウスに接種したのち、血清及び腫瘍内のケモカイン・サイトカインを測定する。これらを測定するためにELISAキットを購入する。また、腫瘍内血管新生を測定するために抗体等が必要となる。また、腫瘍関連マクロファージを分離して、TRPM2活性を測定するため、タンパク質分解酵素やCa2+蛍光指示薬等が必要となる。 上記のように、平成25年度は、細胞、培養器具、ELISAキット及び試薬などを購入する。なお、平成24年度からの繰越金は32,806円であり、これは平成25年度に合わせて使用する。
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