2013 Fiscal Year Research-status Report
TRPM2チャネル欠損マウスにおける固形癌の成長抑制とその機構
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24590124
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
清水 俊一 昭和大学, 薬学部, 准教授 (60196516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 正和 昭和大学, 薬学部, 講師 (30307061)
根来 孝治 昭和大学, 薬学部, 講師 (70218270)
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Keywords | TRPM2 / 悪性腫瘍 / 血管新生 / 腫瘍関連マクロファージ / サイトカイン / ケモカイン / カルシウムイオン / 活性酸素 |
Research Abstract |
Transient receptor potential melastatin 2 (TRPM2)は、酸化ストレス感受性のCa2+透過性非選択的カチオンチャネルである。本研究は悪性腫瘍の成長におけるTRPM2チャネルの関与、さらにその機構を明らかにすることを目的に検討を進めている。 TRPM2 KOマウスと野生型(WT)マウスにマウス肺癌細胞 (LLC細胞)を移植し、腫瘍形成を比較検討したところ、予想に反してTRPM2 KOマウスで腫瘍形成の抑制が認められた。腫瘍の成長には、血管新生や腫瘍に集積する腫瘍関連マクロファージ(TAM)が促進的に関与することが知られている。腫瘍内の血管新生及びTAM数は、いずれもTRPM2 KOマウスで減少していた。また、血管新生促進因子であるvascular endothelial growth factor (VEGF)及びepidermal growth factor (EGF)の腫瘍内含量もTRPM2 KOマウスで減少していた。以上の結果は、TRPM2は腫瘍の成長に促進的にかかわっており、TRPM2を阻害すれば悪性腫瘍の成長を抑制できる可能性を示している。 さらに、TRPM2 KOマウスで腫瘍形成が抑制される機構について検討を進めた。まず、TRPM2発現を調べたところ、LLC細胞では認められず、TAMに発現が認められた。TAMにおけるTRPM2活性について、過酸化水素添加による細胞内Ca2+上昇を指標として測定したところ、TRPM2活性が認められた。そこで、TAMを過酸化水素刺激しサイトカイン分泌を測定したところ、好中球の遊走促進因子であるMIP-2の産生・分泌がWTマウスに比べKOマウス由来のTAMで促進しているという興味深い現象を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、TRPM2が固形癌の成長に促進的に関わっていることを明らかにし、さらにその機構について解析を進めている。平成25年度までの研究で、TRPM2欠損(KO)マウスと野生型(WT)マウスに、腫瘍細胞(LLC細胞)を移植した検討で、TRPM2 KOマウスではWTマウスと比較して腫瘍形成が抑制されることが明らかとなった。そこで、腫瘍の成長に影響を及ぼすことが示されている因子の変動を検討し、TRPM2 KOマウスでは、形成された腫瘍内の新生血管が少なく、また、腫瘍に集積した腫瘍関連マクロファージ数が低下していることを認めた。さらに、腫瘍の血管新生に重要な因子であるvascular endothelial growth factor (VEGF)及びepidermal growth factor (EGF)の含量が、TRPM2 KOマウスでは低いことを見出した。以上のことから、TRPM2 KOマウスで腫瘍形成が抑制されるのは、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の集積や血管新生促進因子の低下による血管新生の低下が関与していると考えられた。しかしながら、ここまでの研究結果では“どの細胞”のTRPM2が“どのような機構”で腫瘍の成長に関わっているかは明らかにできていなかった。そこで、TRPM2発現を調べたところ、LLC細胞では認められず、TAMに発現が認められた。そこで、TAMにおけるTRPM2活性について過酸化水素添加による細胞内Ca2+上昇を指標として測定したところ、TRPM2活性が認められた。さらに、TAMを過酸化水素刺激しサイトカイン分泌を測定したところ、好中球の遊走促進因子であるMIP-2の産生・分泌がWTマウスに比べKOマウス由来のTAMで促進しているという興味深い現象を見出した。今後、マクロファージにおけるTRPM2の役割を解析することにより、TRPM2 KOマウスで腫瘍形成が抑制される機構を明らかにすることができると考えている。現在までの研究の達成度は6割程度と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍関連マクロファージ(TAM)を過酸化水素刺激しサイトカイン分泌を測定したところ、好中球の遊走促進因子であるMIP-2の産生・分泌がWTマウスに比べTRPM2 KOマウス由来のTAMで促進しているという興味深い現象を見出した。この結果は、TRPM2 KOマウス由来のTAMの方がWTマウス由来のTAMよりも腫瘍細胞の攻撃因子を多く産生・分泌する可能性を示すものである。平成26年度は、マクロファージにおけるTRPM2の役割について検討を進めることにより、TRPM2 KOマウスで腫瘍形成が抑制される機構の解明を目指す。 マクロファージには、腫瘍細胞に対して攻撃的作用するM1マクロファージと成長促進的に働くM2マクロファージが存在する。TAMはM2タイプのマクロファージであると考えられている。実験に使用するマクロファージとしては、TAMだけでなく骨髄より単球を分離し、その単球よりM1及びM2マクロファージに分化させ、TAMの機能と比較検討する。平成26年度は、マクロファージより分泌されるサイトカインとしてMIP-2だけでなく、MCP-1、IL-6、IL-10、VEGF、EGF、TGF-βも測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究が、計画より若干遅れたため、マクロファージの実験系で測定を予定していたサイトカインの一部の測定(VEGF, EGF)を行わなかった。このためELISAキット2種類を購入しなかったためである。 平成25年度に予定していて測定しなかったものについては、平成26年度に他のサイトカインと合わせて測定する。このため、平成25年度からの繰越金150,341円は、平成26年度に合わせて使用する。従って、平成26年度は、MIP-2、MCP-1、IL-6、IL-10、VEGF、EGF、TGF-βを測定する予定である。
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