2012 Fiscal Year Research-status Report
治療抵抗性うつ病改善を目標としたGLPー2の薬理学的基盤研究
Project/Area Number |
24590126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
岡 淳一郎 東京理科大学, 薬学部, 教授 (40134613)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | うつ病 / 高血圧 / ストレス / GLP-2 |
Research Abstract |
視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系亢進状態を維持させるためマウスに副腎皮質刺激ホルモン(ACTH: 0.45 mg/kg/day)を14日間投与して作製した治療抵抗性うつ病マウスを用いて、強制水泳試験後に脳切片標本を作製し、神経活動の指標となるc-Fosタンパク質発現を免疫組織化学的手法により検出した。その結果、glucagon-like peptide-2 (GLP-2)投与により視床下部においてHPA系の上位中枢である室傍核(PVN)での発現数減少と、ここを抑制する背内側核(DMH)および海馬歯状回前部(aDG)での発現数増加がみられた。GLP-2は、GLP-2受容体発現部位であるDMHおよびaDG活性化により、ACTH放出ホルモン(CRH)を分泌するPVNの過剰興奮を抑制して抗うつ作用を発現することが考えられる。 つぎに、うつ病時に生じる高血圧症状へのGLP-2の降圧作用機序を解明する目的で、合成副腎皮質ホルモン・デキサメタゾン慢性投与(0.03 mg/kg/day、10日間皮下投与)ラットを用いて、高血圧に対するGLP-2の脳内作用部位を免疫組織化学的に同定した。その結果、GLP-2は脳内血圧調節に関わる孤束核(NTS)でカテコラミン性ニューロンを抑制し、GABA性ニューロンの活動を亢進させることにより、その投射先である青斑(LC)及び吻側延髄腹外側核(RVL)ではカテコラミン性ニューロンを抑制した。これにより、脊髄中間外側核への興奮性入力が減弱して交感神経が抑制され、血圧が降下したと考えられる。 うつと高血圧の発症要因にストレスが大きく関与していることから、GLP-2は脳内でストレス応答と関連した部位に作用することが考えられ、HPA系の調節作用を有するGLP-2は、既存薬とは異なる新たな抗うつ薬・抗高血圧薬の候補となる可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、ストレス脆弱性・HPA系亢進モデル動物を用いて 1)抗うつ様作用と生理活性物質の変動:強制水泳試験を用いた抗うつ様作用を既存抗うつ薬イミプラミンとGLP-2で比較(ストレス予備状態あるいは脆弱状態にある動物にさらにストレスが加わった時に生じる様々な変化について検討);脳内各部位のモノアミン含量をHPLCを用いて測定(代謝回転へのGLP-2投与の影響);血中コルチコステロン含量の変化とGLP-2の影響;海馬、前頭葉、扁桃体でのグルココルチコイド受容体(GR)発現量 2)脳内作用部位の組織化学的同定:ホルマリン灌流固定後、視床下部、扁桃体、分界条床核、海馬、前頭葉、脳幹で神経活動の指標となるcFos発現を検出;興奮性及び抑制性神経の指標、GR等との共染色 3)海馬神経機能への影響:海馬スライス標本でのシナプス伝達基本特性、及びシナプス可塑性(LTP及びLTD)(設備備品費で購入予定の倒立型ルーチン顕微鏡を用いる);海馬における神経可塑性(形態変化、神経新生等)とGLP-2の影響、及び抗うつ薬の作用と関連する Notchシグナル伝達経路;BDNF mRNA量の変化 4)うつ病時に生じる高血圧症状への効果と作用機序:デキサメタゾン慢性投与モデルラットにおける高血圧に対するGLP-2の作用;脳内作用部位の免疫組織化学的同定 を検討することを目的とした。現在まで、1)、2)及び4)に関して、上述のようにほぼ目的を達成し、その1部は学術誌に掲載された (Behavioural Brain Research 243(2013) 153-157)。3)に関しては、現在実験が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の実験を継続するとともに、その成果に基づいて下記のような展開を行う。 1)海馬における神経可塑性(形態変化、神経新生等)とGLP-2の影響、及びBDNF mRNA量の変化を調べる。 2)情動形成に関与する扁桃体のスライス標本を用いて、シナプス伝達基本特性及びシナプス可塑性(LTP)等の電気生理学的検討を行う。 3)トランスレーショナル・リサーチの第1段階として、GLP-2末梢投与による中枢移行を目的とする製剤化と、抗うつ作用発現の検討 4)高血圧症状へのHPA系の関与とGLP-2作用の解明
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費(実験動物、試薬、器具)での使用がほとんどであるが、国内学会参加のための旅費、実験結果の論文原稿のための英文校正費などにも使用する。
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Research Products
(3 results)