2012 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経細胞再生システム機能における内在性活性酸素シグナル分子の関与に関する研究
Project/Area Number |
24590130
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
米山 雅紀 摂南大学, 薬学部, 講師 (00411710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉本 展行 摂南大学, 薬学部, 准教授 (60324092)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ニューロン新生 / 活性酸素シグナル / 一酸化窒素 / 海馬歯状回 / ニューロン障害 |
Research Abstract |
成体哺乳動物中枢神経系において、ニューロン障害後にニューロン新生が促進されることは周知の事実である。ニューロン障害に伴い同部位では活性酸素種由来の付加蛋白質の蓄積が認められる。すなわち、そこに存在する神経系幹・前駆細胞に対して活性酸素シグナル入力あるいは付加蛋白質の機能的に関与する可能性が考えられる。本研究ではニューロン変性後のニューロン新生過程での活性酸素種の役割を明らかにするため、海馬歯状回ニューロン障害後のニューロン新生における一酸化窒素(NO)の関与について解析した。 ddY系雄性マウスに海馬歯状回選択的神経毒性を示すトリメチルスズ(TMT)を腹腔内投与し、海馬歯状回について免疫組織化学法およびRT-PCR法により各種タンパク質および遺伝子の発現変動を解析した。また、これら各種因子の発現に対するミノサイクリンの影響について解析した。 TMT処置によりNOS2遺伝子の有意な発現増加が認められた。また、これらの発現増強はミノサイクリン処置により有意に減少した。一方、神経幹細胞のマーカー蛋白質であるnestinに陽性な細胞の発現を免疫組織化学法により解析したところ、歯状回では未処置群に比べTMT処置群で著明なnestin陽性細胞数の増加が認められたが、このnestin陽性細胞数の発現増加はミノサイクリン処置により明らかに減少した。また、ミノサイクリン処置はTMT処置30日後の歯状回において、障害後に出現した神経系幹・前駆細胞由来ニューロン数を有意に減少させた。さらにTMT処置したマウスについて受動型逃避行動試験を行ったところ、ミノサイクリン処置はニューロン新生に伴う記憶障害の改善を抑制した。 以上の結果から、ニューロン障害後のニューロン新生メカニズムの一部に活性酸素種の一つであるNOを介した神経系幹・前駆細胞の制御メカニズムが存在する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機スズ化合物であるトリメチルスズ(TMT)により作成した海馬歯状回障害・再生モデル動物を用いて、海馬歯状回ではニューロン障害後に一酸化窒素合成酵素(NOS)の発現が増強し、ニトロ化蛋白質の発現が増加することが明らかとなった。また、NOSの発現を抑制すると、ニューロン障害後に出現する神経系幹・前駆細胞の増殖が抑制されることが明らかとなった。さらに、ニューロン新生の抑制が記憶障害の改善を抑制することが明らかとなった。よって、当初の目的であるニューロン変性後のニューロン新生過程での活性酸素種の新規生理的役割について、活性酸素種の一つである一酸化窒素(NO)がニューロン障害後のニューロン再生過程に重要なシグナル分子である可能性を見出せた。さらに、NO等の活性酸素種をターゲットとしたニューロン新生促進薬のスクリーニングおよび開発が期待できる可能性も示唆された。また、関連して学術論文4報、学会発表14回(招待講演1回を含む)を報告出来たことは特筆に価する。
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Strategy for Future Research Activity |
神経変性疾患の治療に向けて、ニューロン障害後の活性酸素種による新規生理的役割の観点から、海馬歯状回神経細胞障害・再生モデル動物を用いてニューロンの再生過程においてニューロン障害後に発現増強が見られる一酸化窒素合成酵素(NOS)に着目して、一酸化窒素(NO)の神経系幹・前駆細胞における詳細な細胞内シグナル伝達メカニズムの解析を進める。また、障害後のニューロン再生過程にはNOの関与が有力であることから、関連分子である活性酸素種とそのシグナル伝達に続く機能的タンパク質の酸化修飾との関連性について具体的に解析を進めていく方向で研究推進を図る。並行して、活性酸素種をターゲットとしたニューロン新生シグナル促進薬の探索と本研究が発展する可能性を追求する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究において、初年度の計画予定である海馬歯状回障害・再生モデル動物でのニューロン再生過程における各種蛋白質の発現が効率よく解析でき迅速に目標を達成できたため、次年度への繰越額が発生した。 よって、次年度については計画している研究に加えてインビトロ初代培養実験計画を進めていく予定である。具体的には、正常動物あるいは海馬歯状回障害・再生モデル動物の海馬歯状回から単離培養した神経系幹・前駆細胞に対する活性酸素消去薬と活性酸素誘導薬の影響について解析する。
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Research Products
(18 results)