2013 Fiscal Year Research-status Report
神経再生治療の実現に向けたコンドロイチン硫酸による神経突起伸長制御機構の解明
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24590132
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
三上 雅久 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (20330425)
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / グリコサミノグリカン / 神経突起伸長 / 糖鎖 / 発現制御 / 受容体 / 細胞内シグナル伝達 / 酵素 |
Research Abstract |
コンドロイチン硫酸(CS)は、中枢神経系の細胞外マトリックスを構成する主要な硫酸化多糖である。CSは、障害を受けた成体脳において軸索再生を阻害する分子として振る舞う一方、神経突起伸長を促進する分子としての一面も併せもつ。このような一見矛盾した働きは、CSの硫酸化構造の違いに起因すると考えられている。最近我々は、“高硫酸化CSを識別するCSレセプター”を世界ではじめて同定し、“CSがリガンドとして特定のレセプターの活性化を導きうる”という新しいコンセプトを打立てた。そこで本研究では、神経再生医療への応用を指向したCSによる神経突起伸長制御機構の解明を目指し、昨年度に引き続き、機能的CSレセプター分子のさらなる探索とそれらにより発動するシグナル伝達経路の同定を試みた。 今回我々は、高硫酸化CSであるCS-DおよびCS-Eによって海馬神経細胞の極性形成が制御可能であること、特にCS-E誘導性の神経突起の伸長がCS-Dによって打ち消されることに着目し、それぞれの高硫酸化CSに対して結合親和性を示し、かつ異なる応答性(神経突起伸長作用)を示すCSレセプター候補分子を探索した。その結果、高硫酸化CSによる神経突起伸長制御には、これまでに我々が同定したCS-E受容体であるcontactin-1(CNTN-1)を含め、少なくとも複数のCS受容体分子が介在する固有の細胞内シグナル経路が関与していることが判明した。したがって、CS受容体分子群とそれらの下流シグナル分子群が神経再生治療戦略の有効な標的分子になる得ることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神経細胞の極性形成過程を実験モデルとすることで、神経系でのCS受容体候補分子を絞り込むことができた。当該分子群のノックダウンや特異的中和抗体などを駆使することにより、CSレセプター分子としての妥当性を検証中である。一方、高硫酸化CSの神経突起伸長制御に関与するシグナル伝達系の同定については、実験条件の最適化にやや時間を要した。現在、SrcキナーゼやPI3Kキナーゼを介するシグナルカスケードを中心に検証を重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにしたCSレセプター分子を介する高硫酸化CSによる神経突起伸長制御機構が、実際の神経回路網形成や再編機構において重要であるかをex vivoおよびin vivoの系で検証する。 特に、in vivoの系では、すでに所属研究室で作製または保有されているCSの硫酸化プロファイルを改変したマウス(C6ST-1トランスジェニックまたは、C6ST-1ノックアウト)や特定の脳領域(大脳皮質、海馬、小脳など)において、CS特異的な硫酸基転移酵素や当該CSレセプター分子の発現を撹乱したマウスを用いて解析する。後者のマウスについては、子宮内エレクトロポレーション法を駆使した領域特異的なshRNA発現プラスミドの導入により作製する。
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