2012 Fiscal Year Research-status Report
創薬イノベーションの創出を目指した抗がん剤開発とその作用機序解明
Project/Area Number |
24590140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
鈴木 由美子 上智大学, 理工学部, 准教授 (20295546)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 創薬化学 / 抗がん剤 |
Research Abstract |
≪目的≫スクリーニングによりがん細胞増殖阻害活性を持つことが見出されたキナゾリン誘導体PVHD0121の作用機序を解明し、切実な社会的要請である副作用を克服した新規抗がん剤を開発する。チューブリンとの相互作用を解析するとともに、新たな標的分子検出やその結合部位への競合阻害活性解析ツールとなるにプローブ分子をデザイン・合成する。PVHD0121 を医薬品リード化合物とした構造最適化と、不斉合成法の開発により、高活性化合物の簡便な合成法・入手法を確立する。 1)より高活性な光学異性体の立体構造決定に向けた検討 X線結晶解析にてPVHD0121の(+) 体と (-) 体の不斉炭素の立体配置を決定するため、PVHD誘導体・2-ブロモ-4-(1-ヒドロキシ-1-(4-メトキシフェニル)エチルキナゾリンを合成し、キラルカラムクロマトグラフィーにて各々の鏡像異性体を分離した。合成・分離したPVHD誘導体およびPVHD0121の(+) 体と (-) 体のCDスペクトルではそれぞれ同じ符号を持つ異性体同士で類似のCotton効果が観察できた。すなわち、何れか一つの鏡像異性体の絶対立体配置を決定できれば、CDスペクトルを測定することで他の誘導体の立体配置を推定することが可能となる。 2)合成中間体デザインと構造最適化を目指した誘導体合成 これまでのPVHD0121の構造活性相関研究で、キナゾリン環の4位置換基は1-ヒドロキシ-1-(4-メトキシフェニル)エチル基の場合に最も活性が高いことが判明している。そこで、4位置換基は1-ヒドロキシ-1-(4-メトキシフェニル)エチル基に固定し、キナゾリン骨格の2位に置基が導入された化合物を合成した。2位置換誘導体はカップリング反応に適したクロロ基を持つ共通合成中間体から鈴木-宮浦カップリング反応にて合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は24年度にPVHDをジアステレオマー化し、X線結晶解析により(+)体および(-)体の立体配置を決定する計画であった。しかし、ジアステレオマー化が予想以上に困難であった。そのため、重元素である臭素を分子内に内蔵する誘導体をX線結晶解析に付すこととした。臭素原子を有する化合物の光学分割条件を見出すことはできたが、X線用の単結晶作成には至っていない。 構造活性相関研究のために誘導体合成を行った。2位置換誘導体は2位にクロロ基を持つ共通合成中間体から鈴木-宮浦カップリング反応にて合成できたが、5-8位に置換基を持つ誘導体の合成にまでは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
臭素を分子内に内蔵するPVHD誘導体(光学活性体)のX線結晶解析の結果およびCDスペクトルデータの結果から、より抗がん活性の高い(+)-PVHD0121の立体を決定する。さらに、このエナンチオマーの不斉合成法の開発を検討する。不斉反応による効率的光学活性体の合成が困難な場合には、キラルアミン触媒による不斉反応や酵素を用いる速度論的分割、あるいはキラル分取カラムを用いる分割により、大量に光学的に純粋な化合物が入手できる方法を確立する。 当初はこの年度にビオチン付加プローブの合成とアビジンとの相互作用を利用した標的分子の同定を計画していたが、立体配置の決定と誘導体合成が計画通りに進んでいないため、キナゾリン環の2位および5-8位に置換基を持つ誘導体合成を引き続き進め、その生物活性の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度はやや研究の進行が遅れたため 129,768 円の残金が生じた。本年度の直接経費1,400,000円と合わせ、計1,529,768 円の使用計画は以下の通りである。 【消耗品費】溶媒:抽出・精製用 200,000 円、NMR 用 50,000 円、HPLC用溶媒 100,000 円。試薬:反応用試薬 409,768 円、カラムクロマトグマフィー用担体 170,000 円、TLCプレート 150,000 円。実験器具:ガラス器具 150,000 円、その他器具 120,000 円。 【旅 費】メディシナルケミストリーシンポジウム、日本薬学会第134 年回 他(帯同学生旅費含む) 100,000円。 【そ の 他】学会参加料30,000 円。英文校正料50,000 円。
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