2013 Fiscal Year Research-status Report
眼疾患の薬物治療への応用を志向したフラボン類の合成及び構造活性相関研究
Project/Area Number |
24590146
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
忍足 鉄太 帝京大学, 薬学部, 准教授 (00279043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小佐野 博史 帝京大学, 薬学部, 教授 (40246020)
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Keywords | ポリメトキシフラボン / 構造活性相関 / MMP-9 / 白内障 / 糖尿病網膜症 / 血液網膜関門 |
Research Abstract |
白内障や糖尿病網膜症は罹患者の生活の質を著しく低下させるものであり、予防も含めた薬物治療法の確立が強く望まれる疾患である。我々は、ノビレチンをはじめとするポリメトキシフラボン類が、これらの眼疾患の発症に際して主要な役割を果たす酵素であるMMP-9の産生を抑制することを明らかにし、ノビレチン誘導体の合成研究とともにMMP-9の産生抑制活性や水晶体上皮細胞・網膜内皮細胞の増殖抑制活性に着目した構造活性相関研究を行ってきた。 平成25年度は、初年度に引き続きノビレチンのA環7位のメトキシ基が選択的に脱メチル化された代謝物の合成について検討し、途中、収率の改善を図るべき工程はあるものの、一応は合成に成功した。6位や8位のメトキシ基が脱メチル化した類縁体についても選択的な合成法の開発の端緒を得た。その過程で、当研究室で開発したフラボン合成法の問題点も浮き彫りになってきたので、次年度には改善を図りたい。また、これまでのヒト水晶体上皮細胞株ではアッセイできなかった上皮-間葉系移行の過程におけるフラボン類の効果についても、実験材料として鶏胚水晶体から単離した水晶体上皮初代培養細胞を用いて精査すべく準備を進め、予備的な検討が完了した段階である(研究分担者である小佐野教授、研究協力者である宮田講師のグループ)。 また、眼疾患の治療への応用という観点からは患部への薬物の移行性が重要な課題となるが、その際、重要なポイントとなるのは血液網膜関門を通過できるか否かである。従って、化学的な修飾により血液網膜関透過性を向上させることが肝要であり、A環部分のアルコキシ基の炭素鎖を伸長した類縁体の合成についても検討した。これと並行してバイオアッセイの手法についても検討し、ほぼ確立した段階である(上記、小佐野教授・宮田講師による)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ノビレチンの代謝物である7-デメチル体の合成過程で、我々の開発したフラボン合成法のA環構築の鍵工程であるカルボン酸からメチルケトンへの反応の収率が、基質によってかなりばらつくことが明らかとなった。反応条件を改めて精査した結果、若干の改善は見られたものの根本的な解決には繋がらなかった。7-デメチル体は取り敢えずこれまでのルートに従って合成したものの、今回新たに見つかった問題点は今後、各種類縁体を合成するうえでは看過できないものであり、この点を克服し得る新規合成法を開発する必要に迫られている。現在は、合成した7-デメチル体の生理活性を評価するとともに、divergentな合成にも適用可能なポリメトキシフラボンの新規合成法の開発を模索しているが、当初の研究計画に照らして若干の遅れが生じてしまったことは否めない。 他方、新たに後発白内障発症の最終過程に相当する上皮間葉系移行の段階におけるポリメトキシフラボンの役割を調べるため、鶏胚水晶体から単離した水晶体上皮初代培養細胞を用いたアッセイ系を確立するとともに、フラボン類の血液網膜関門透過性を調べるためのモデル系を構築することにより、今後、構造活性相関研究を推進するうえで必要とされるプラットフォームが一応は調った。 以上を勘案すると、現時点では押し並べて当初の計画より若干遅れてはいるものの、最終年度に向けて到達しておくべきラインにはたどり着けたものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25度に新たにボトルネックとなることが判明した工程を回避するとともに、A環、B環のそれぞれの多様性を反映し得るよう、両方の合成等価体から短工程でC環を構築してフラボン誘導体を得る新規合成法を開発する。目下のところ、1)4+2型の環化付加反応を鍵工程とする合成設計、2)ニッケルなどの遷移金属を含むメタラサイクルとアルキンとのカップリング反応を鍵工程とする合成設計、3)1,3-双極子環化付加反応を鍵工程とする合成設計、の3通りのオプションを候補として考えている。 また、6位及び8位のメトキシ基についても脱メチル化された化合物を合成し、炭素数の異なるアルキル鎖を導入して活性を評価する。当面の目標として、構造改変しても活性を失わない位置を特定し、置換基の導入により脂溶性を増大させることにより血液網膜関門透過性の向上を図る。更に、分岐形のリンカーを介してpolivalentなフラボン誘導体を合成し、クラスター効果の影響についても見極めたい。 更に、合成したポリメトキシフラボンが後発白内障や糖尿病網膜症の予防及び治療に寄与する分子機構を解明して行く。具体的には、前者に関しては、1)proMMP-9産生抑制のメカニズムをMAP kinaseに注目して精査するとともに、2)フラボンが上皮間葉系移行に影響し得るか否かについても検証する。後者に関しては、3)ポリメトキシフラボン類が網膜内皮細胞においてもproMMP-9の産生を抑制し得るかを確認するとともに、4)小胞体ストレス誘導性のアポトーシスとの関わりについても検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に引き続き、新規骨格構築法の開発よりも比較的経費のかからない類縁体の合成に基づく構造活性相関研究を優先したため、研究代表者の直接経費に関して繰越金が発生した。 翌年度(最終年度)は、先送りした課題である新規合成法の開発を遂行するとともに、更に広範に類縁体の合成を行い、構造活性相関研究についても継続して行く予定である。なお、今後も、研究代表者の直接経費に関しては、全額を研究用試薬や溶媒、ガラス器具などの消耗品の購入に充当する予定である。また、研究分担者の直接経費に関しては、培養細胞の入手やアッセイに必要な試薬、器具などの消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)