2012 Fiscal Year Research-status Report
大気中親電子物質1,4ーナフトキノンに対する細胞の生存シグナル制御機構
Project/Area Number |
24590159
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新開 泰弘 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10454240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 嘉人 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00250100)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 1,4-ナフトキノン / 親電子シグナル / 熱ショックタンパク質 / HSF1 / 細胞応答システム |
Research Abstract |
我々は大気汚染の深刻な地域である南カリフォルニアにて採取した大気中揮発性成分より、1,4-ナフトキノン(1,4-NQ)を同定した。1,4-NQは親電子性を有しており、生体内にてタンパク質の反応性システイン残基と容易に共有結合を形成するが、その細胞内分子標的に関する知見は乏しい。そこで本年度は、1,4-NQを特異的に認識する抗体を作製し、当該物質の細胞内標的タンパク質を検出・同定すること目的とした。1,4-NQ抗原を感作して得られたウサギ抗血清を用いてELISA法にて検討したところ、1,4-NQに対する抗体価の上昇を認めた。そこでウサギ血清中のIgG画分を精製した後、抗1,4-NQ抗体の抗原特異性について検討した。本研究で作製したウサギポリクローナル抗体は、1,2-NQに対する僅かな交差性を有したが、1,4-NQを母骨格とした各種誘導体は全く認識しなかったことから、1,4-NQに特異性の高い抗体であることが示唆された。次に、ヒト扁平上皮A431細胞に1,4-NQを曝露後に、回収したタンパク質を2次元電気泳動で分離し1,4-NQ抗体で1,4-NQの標的タンパク質を検出後、LC-MSにてそのタンパク質を同定した。その結果、合計9つのタンパク質を同定し、中でも3種類が熱ショックタンパク質ファミリー(HSP90, HSC71, HSP70)であることを明らかにした。近年、細胞の親電子シグナル伝達系の1つとしてHSP/ heat shock factor-1(HSF1)系が報告されており、HSP90やHSP70は転写因子HSF1を負に制御していることが知られている。実際、1,4-NQの曝露によりHSF1の核移行が観察されたことから、HSP90/HSF1系が1,4-NQに対する細胞応答システムとして機能していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1,4-NQに対する特異的抗体の作製に成功し、その抗1,4-NQ抗体を用いて細胞内における1,4-NQの標的センサータンパク質を同定することができた。中でも熱ショックタンパク質であるHSP90への親電子修飾が見出され、それに伴い転写因子HSF1の活性化が観察された。以上より、1,4-NQに対する細胞の生存シグナル制御の1つとしてHSP90/HSF1系の関与を明らかにできたことから、本課題の研究の計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は1,4-NQに対するHSP90/HSF1系を介した細胞の生存シグナル制御の分子機構について引き続き解析を進める。また、HSP90/HSF1以外にもKeap1/Nrf2やPTP1B/EGFRといった細胞の生存シグナル制御系が1,4-NQに対して防御的に働いている可能性があることから、これらの関与について検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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