2013 Fiscal Year Research-status Report
大気中親電子物質1,4ーナフトキノンに対する細胞の生存シグナル制御機構
Project/Area Number |
24590159
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新開 泰弘 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10454240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 嘉人 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00250100)
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Keywords | 1,4-ナフトキノン / 親電子シグナル / 熱ショックタンパク質 / HSF1 / 細胞応答システム |
Research Abstract |
前年度の研究により、大気中親電子物質1,4-ナフトキノン(1,4-NQ)を認識する抗体を作製し、当該抗体を用いて細胞内センサータンパク質として熱ショックタンパク質ファミリー(HSP90, HSC71, HSP70)を同定した。そこで本年度は、センサータンパク質への共有結合に伴う親電子シグナル伝達経路の活性化について解析した。ヒト扁平上皮A431細胞を1,4-NQに曝露後、HSP90を免疫沈降したところ確かに1,4-NQが結合していた。リコンビナントHSP90を用いて1,4-NQの結合部位をLS-MSにて同定した結果、Cys564またはLys565に結合することを明らかにした。この結合部位はHSP90の2量体化に関わるドメインに位置していることから、1,4-NQはHSP90の2量体化を阻害することによってその機能を低下させる可能性が示唆された。ところで、HSP90は定常時に転写因子heat shock factor-1(HSF1)と結合することによってその機能を負に制御していることが知られている。そこでHSF1の活性化を検討したところ、1,4-NQの曝露によりHSP90とHSF1の相互作用が低下し、HSF1が核に移行することを明らかにした。また、1,4-NQの曝露濃度依存的にHSF1の下流遺伝子群であるHSPA6、HSP40、HSP90およびHSP105の発現が誘導された。更に、HSF1のノックダウンにより1,4-NQによるHSPA6の発現亢進は抑制され、1,4-NQの毒性は有意に増強した。以上の結果より、HSP90/HSF1系が1,4-NQに対して細胞生存に働く防御応答システムの1つとして機能していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1,4-NQに対するセンサータンパク質としてHSP90を同定し、その修飾部位(Cys564またはLys565)を明らかにした。また、1,4-NQの親電子修飾によってHSP90と転写因子HSF1の相互作用が低下し、HSF1が活性化されることを証明した。更に、HSF1が1,4-NQの毒性に対して防御に働くことを明らかにした。以上より、1,4-NQに対する細胞の生存シグナル制御の1つとしてHSP90/HSF1系が重要な役割を果たしていることを明らかにできたことから、本課題の研究の計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はHSP90/HSF1系だけでなく、Keap1/Nrf2やPTP1B/EGFRといった細胞の生存シグナル制御系も1,4-NQに対する防御システムとして機能している可能性があることから、これらの関与について検討を行う予定である。
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