2013 Fiscal Year Research-status Report
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24590164
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
打矢 恵一 名城大学, 薬学部, 准教授 (70168714)
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Keywords | MAC症 / M. avium / 新規プラスミド |
Research Abstract |
わが国を含め、世界的に増加傾向にあるMycobacterium avium complex (MAC) 症の感染様式は、経気道感染と経腸感染の大きく2つに分けられる。またMAC症の起因菌の一つであるM. avium は、ヒトに加えてブタに感染する。このようなMAC症の増加の要因、感染様式の違い、さらに宿主の特異性は何に起因しているか不明である。 平成24年度に、国内で分離された肺MAC症患者由来のM. avium TH135株(経気道感染由来)のゲノム解析を行い、全塩基配列の決定を行った。その際、ゲノムDNAとは独立して存在する環状プラスミドの存在が明らかとなった。今回、平成25年度の研究実施計画に基づいて、このプラスミド(pMAH135)の全塩基配列の決定およびその特徴を調べた。pMAH135のサイズは194,711 bpであり、coding sequencesは164、tRNA遺伝子は1、Insertion sequenceは6存在していた。GC% は66.5%であり、ゲノムDNAのGC%(69.3%)に比べて低く、これはpMAH135が進化の過程で外部から取り込まれたことを意味している。さらに、pMAH135はこれまで報告されたM. avium由来のプラスミドとは、その相同性において全く異なる新規のプラスミドであった。pMAH135にコードされている遺伝子の特徴を調べた結果、鉄の取り込みを行うmycobactinの合成に関わる因子、病原因子の分泌に関わるType VII分泌装置、さらに薬剤の排出ポンプをコードしている遺伝子の存在が明らかとなった。前者2つはMAC菌の病原性に関与、そして後者は抗菌薬を含む薬剤の耐性に関与することから、pMAH135の重要性が示唆され、今後、pMAH135の存在意義を調べる予定である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究目的は、M. aviumの経気道感染と経腸感染の違いに起因する候補遺伝子の検索および同定を行うことであった。平成24年度および25年度の研究実施計画に基づいて行った研究の進捗状況から、下記の理由により、当該年度における達成度については概ね達成できたと考える。 1.本年度に行った新規プラスミドの遺伝学的な解析は、平成24年度の研究目的であった。しかし下記に述べるように、本来平成25年度に行う予定であった感染様式の違いに起因する候補遺伝子の検索を平成24年度に行ったため、当初行う予定であった新規プラスミドの遺伝学的な解析は本年度に行うことになった。 2.平成24年度に行った肺MAC症患者由来のM. avium TH135株(経気道感染由来)の全ゲノム配列を決定した後、すでに報告されているHIV陽性患者由来のM. avium 104株(経腸感染由来)のゲノムと比較を行った。その結果、両ゲノムには特異的な領域が多く存在し、それらの領域には病原性に関与している多くの遺伝子の存在が見られた。そして、M. avium TH135株のゲノムに特異的な遺伝子の保有状況を臨床分離株を用いて調べた結果、HIV陽性患者由来株に比べて、肺MAC症患者由来株に多く存在していた。一方、M. avium 104株特異的領域に存在している遺伝子の保有状況を調べた結果、HIV陽性患者由来株に多く存在していた。以上の結果から、経気道感染と経腸感染を引き起こす要因となる遺伝子の検索を行うことができた。しかし、このような感染様式に影響を与えている遺伝子の同定については、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策について、M. avium TH135株(経気道感染由来)には染色体遺伝子とは別に環状プラスミドが存在し、これまでに報告がない新規プラスミド(pMAH135)であった。pMAH135は、病原性や薬剤耐性に関与している遺伝子をコードしていることから、臨床分離株を用いてpMAH135上の病原遺伝子などの保有状況を調べ、感染様式や病態の違いとの関連性について調べる。 平成25年度において、肺MAC症患者由来のM. avium TH135株由来のpMAH135の全塩基配列の決定を行い、それにコードされている遺伝子の同定を行ったが、平成26年度ではpMAH135とM. aviumの感染様式や病態との関連性について調べる。感染様式との関連性については、肺MAC症患者由来株とHIV陽性患者由来株、病態との関連性については、肺MAC症の増悪した患者および感染が確認されたにも関わらず治療を開始するまでに至らなかった患者から得られた臨床分離株をそれぞれ用いて、pMAH135の保有状況を調べることにより、感染様式や病態との関連性について検討を行う。また、M. aviumはヒトだけではなくブタにも感染する。そこで、ブタ由来の分離株を用いて、pMAH135の保有状況を調べることにより、宿主との関連性について検討を行う。以上の研究に加えて、ヒトおよびブタに感染するM. aviumの特徴を調べるために、ブタ由来のM. aviumのゲノム解析、さらに肺MAC症の増悪因子を同定するために、肺MAC症の増悪した患者および感染が確認されたにも関わらず治療を開始するまでに至らなかった患者から得られた臨床分離株のゲノム解析を行い、比較・検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究実施計画においては、M. avium のゲノム解析は、肺MAC症患者由来のM. avium TH135株だけであった。しかし、研究を遂行する上でM. avium の病原性に関わる遺伝子の同定の重要性を認識したため、平成25年度から下記の菌株のゲノム解析を行うことにした。しかし、解析は途中であるため平成26年度においても引き続き行う予定で、今年度に繰り越した研究費を使用する予定である。 ゲノム解析を行っている菌株は、肺MAC症の増悪した患者、さらに感染が確認されたにも関わらず治療を開始するまでに至らなかった患者から得られた臨床分離株のゲノム解析を行い、両ゲノムを比較することにより、感染の成立に関わる病原遺伝子の同定を行う予定である。さらに、M. aviumはヒトだけではなく、ブタにも感染する。これまでブタ由来のM. aviumのゲノム解析は行われておらず、ヒトおよびブタに感染するM. aviumの特徴を調べるために、ブタ由来のM. aviumのゲノム解析も行う予定である。しかし、当大学にはゲノム解析に必要な機器であるGenome Analyzer(GA)II(イルミナ社)やGenome sequencer FLX system(ロシュ社)を有していないため、北海道システム・サイエンス社に外注を予定している。
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[Journal Article] X-ray structure snalysis and characterization of AFUEI, an elastase inhibitor from Aspergillus fumigatus2013
Author(s)
Mayuko Sakuma, Katsumi Imada, Yoshiyuki Okumura, Kei-ichi Uchiya, Nobuo Yamashita, Kenji Ogawa, Atsushi Hijikata, Tsuyoshi Shirai, Michio Honma, Toshiaki Nikai
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 288
Pages: 17451-17459
DOI
Peer Reviewed
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