2013 Fiscal Year Research-status Report
カドミウムおよびマンガンの標的臓器における金属輸送機構の解析
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24590168
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
藤代 瞳 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (10389182)
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Keywords | カドミウム / マンガン / 金属 / 輸送 / ZIP8 / ZIP14 / 亜鉛輸送体 / 毒性 |
Research Abstract |
今年度はCdの毒性の標的組織である腎臓におけるCd輸送機構と、Mnの毒性の標的組織である神経細胞における2価のMnの輸送について解析を行った。腎臓については、入手したマウス腎臓近位尿細管のS1, S2, S3領域特異的な細胞(S1, S2, S3細胞)が極性細胞であり、カップ培養可能であることを確認した。また、Cd輸送に関与することが報告されているZIP8はS2, S3細胞において多く発現していた。次に、カップ培養系を用いてS1, S2, S3細胞で管腔側からのCdおよびMnの取り込みを調べた結果、S1, S2, S3のすべての細胞で管腔側からのCdの取り込みをMn, Znが阻害し、Mnの取り込みをCd, Znが阻害した。よってS1, S2, S3のどの領域においても、金属イオンの輸送が行われていることが示唆され、S1, S2, S3細胞は近位尿細管の部位特異的な金属輸送機構を検討する上で有用な細胞であることがわかった。 神経細胞におけるMn輸送については、昨年までに神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞で発現が確認できたDMT1, ZIP8, ZIP14の発現抑制を行い、その金属輸送への影響を調べた。DMT1を発現抑制すると、Mn取り込み効率はcontrol siRNA導入細胞に比べて顕著に低下した。一方、ZIP14の発現を抑制すると、MnおよびCd取り込み効率はコントロールの半分以下にまで低下した。この結果より、脳神経系の細胞では、2価Fe輸送体のDMT1のみならず、亜鉛輸送体のZIP14もMn輸送に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 次に、神経細胞におけるMn輸送に対するIL-6の影響を解析した。SH-SY5Y細胞をIL-6に曝露すると、Mn蓄積が約2.5倍に上昇した。また、ZIP14およびZIP8の発現がIL-6によって上昇した。以上の結果より、SH-SY5Y細胞をIL-6に曝露することによって起こるMn蓄積の上昇は、ZIP8およびZIP14の発現上昇によるMn取り込みの上昇が関与する可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年、腎臓については、マウス腎臓近位尿細管のS1, S2, S3領域特異的な細胞(S1, S2, S3細胞)を用いて解析を開始した。S1, S2, S3細胞は極性細胞として機能し、カップ培養系を使用してCdの取り込みが測定可能であることがわかった。今後、この細胞を用いて、腎臓のより詳細な金属輸送機構について解析していく。 神経細胞ではどのようにしてMnが細胞内に取り込まれるのか、DMT1以外の輸送体の検討が行われていなかったため、Mn輸送に関与する亜鉛輸送体のZIP8およびZIP14がSH-SY5Y細胞でMn輸送に関与するかどうか検討した。Mn輸送に関わる3つの輸送体(DMT1, ZIP8, ZIP14)の発現抑制に成功した。その結果、神経細胞において新たにMnの輸送に亜鉛輸送体のZIP14が関与している可能性を見出した。 また、神経細胞におけるMn輸送へのサイトカインの影響についても解析を開始した。SH-SY5Y細胞において、サイトカインのうち今年度はまず、IL-6の影響を調べた結果、IL-6がMnの取り込み輸送体の発現を増加させ、Mn蓄積を上昇させる可能性を明らかにした。この発見により、サイトカインが金属代謝に影響を与えることがわかり、パーキンソン病などの脳変性疾患において脳内での増加が報告されているサイトカインが、Mn代謝に影響を与え、脳疾患の増悪因子となっている可能性があることを見出した。今後、そのメカニズムについて詳細な検討が必要となることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、マウスおよびラットから腎臓近位尿細管の部位特異的な細胞を単離し、不死化して得ようとしたが、尿細管の各部位を特定し単離したがそこから十分な細胞が得られず、不死化するまでに至らなかった。そこで、マウス腎臓近位尿細管のS1, S2, S3領域由来の不死化細胞を入手した。本年度はこれらの細胞が部位特異的な細胞であることを確認し、解析に使用可能な細胞であることを確認し、様々な実験を開始した。 この細胞を今後の研究に活用し、イオン型でのCdの取り込みにどの輸送体が関与するのか、またそれは、尿細管の部位によって異なるのかを解析し明らかにする。また、近位尿細管では、Cdはメタロチオネイン(MT)と結合したCd-MTの型で取り込まれることが知られている。そのためCd-MTの取り込みについても近位尿細管の部位において異なるかどうか明らかにする。現在recombinant MTタンパク質の精製を試みている。腎臓近位尿細管におけるCd輸送については部位別にCdイオンおよびCd-MTの取り込み機構を明らかにし、尿細管におけるCd吸収の全体像を明らかにしたい。 神経細胞におけるMn輸送へのサイトカインの影響については、今年度は取り込み輸送体について解析した。今後は近年Mnの排泄に関与する可能性が報告されている亜鉛輸送体のZnT10、およびSPCA1の発現についてもIL-6の影響をうけるか、またIL-6以外のサイトカインが同様にMnの蓄積を増加させるかどうかを検討していく。 また、脳の金属動態に影響を与える因子として、パーキンソン病に関わる因子であるMPP+やαシヌクレインの影響を解析する予定だったが、今年度は実施できなかったため、来年度に実施する。 細胞系の実験はおおむね順調に推移している。来年度は動物を用いた解析に着手しさらに各金属輸送体の組織特異的発現や役割について解析していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
利息分として発生した。 利息分として発生したものであるため、次年度の物品費として使用する。
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[Journal Article] Quantum dots induce heat shock-related cytotoxicity at intracellular environment.2014
Author(s)
Migita, S., Moquin, A., Fujishiro, H., Himeno, S., Maysinger, D., Winnik, F. M., Taniguchi, A.
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Journal Title
In Vitro Cell Dev Biol Anim.
Volume: 50(4)
Pages: 367-372
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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