2013 Fiscal Year Research-status Report
侵害刺激受容体TRPA1の感受性個体差に関する分子毒性学的研究
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24590173
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
神野 透人 国立医薬品食品衛生研究所, 生活衛生化学部, 第一室長 (10179096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香川 聡子 国立医薬品食品衛生研究所, 生活衛生化学部, 主任研究官 (40188313)
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Keywords | 生活環境化学物質 / 感受性個体差 / 遺伝的要因 / 侵害刺激受容体 / TRPA1 / 一塩基多型 / ヒト呼吸器 |
Research Abstract |
本研究では,生活環境化学物質が原因あるいは増悪因子と考えられる疾患において重要な役割を果たしている侵害刺激受容体TRP (Transient Receptor Potential) A1 チャネルについて,その感受性の個体差に影響を及ぼす遺伝的な要因並びに環境要因を明らかにするために,既知のNon-synonymous SNPs を導入した異型TRPA1 をHEK293 細胞で強制発現させて機能変化を検討するとともに,TRPA1 を発現するヒト由来細胞株を用いて生活環境化学物質による感受性亢進の有無を明らかにすることを目的とする.初年度において日本人で比較的高いAllele Frequency で検出されるSNPs として,5種類のアミノ酸置換 (R3C,R58T,E179K,K186N及びH1018R)を引き起こすSNPsを選定し,哺乳動物細胞においてそれぞれの異型タンパク質を同等に高発現する細胞株樹立用のプラスミドベクターの構築を完了した。本年度はその構築したベクターを用いて異型TRPA1 安定発現細胞株を樹立し,野生型ならびに5種変異型TRPA1それぞれ4クローン計24クローンについて典型的なTRPA1 アゴニストであるCinnamic aldehyde 及び生活環境化学物質で既に著者らによってTRPA1を活性化することが判明しているフタル酸モノエステル類に対する応答性を細胞内カルシウム濃度の変化を指標として検討し,各SNP の影響を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではTRPA1 の感受性個体差に影響を及ぼす様々な要因を,遺伝的要因と環境要因の両面から検討する.前者のサブテーマでは,本研究の最終年度までに異型TRPA1 をHEK293 由来細胞株で安定的に発現させて,生活環境化学物質をはじめとするリガンドに対する応答性やタンパク質リン酸化による感受性の亢進に及ぼすSNPs の影響を明らかにすることを目標とする.初年度に構築したベクターを用いて異型TRPA1 安定発現細胞株を樹立し,野生型ならびに5種変異型TRPA1それぞれ4クローン計24クローンについて典型的なTRPA1 アゴニストで及び生活環境化学物質に対する応答性を評価して,各SNP の影響を明らかにした.また,ヒト気道及び肺組織について,TRPA1 mRNA発現量の差をReal Time RT-PCR法により定量的に解析し,ヒト気道においてTRPA1はmRNAレベルで100倍以上の個体差が認められることを明らかにした.さらに,TRPA1アゴニストの曝露による野生型及び異型TRPA1タンパク質のリン酸化状態解析手法を確立した.後者のサブテーマでは,環境要因の探索に適したin vitro 系を構築する目的で,ヒトTRPA1 を発現する細胞株を探索し,評価した培養細胞株4種のTRPA1 mRNAレベルは,既に研究代表者らが樹立したヒトTRPA1高発現細胞株に比較して低く,発現の誘導を検討する目的に適していることが示された.本年度においては生活環境化学物質によるTRPA1活性化及びmRNA/タンパク質の誘導を指標とした,TRPA1感受性個体差に影響を及ぼす環境要因探索手法を確立した.以上これまでの研究の進捗状況から,当初の目標を十分達成したと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
TRPA1 の感受性個体差に影響を及ぼす遺伝的要因に関する研究においては,本研究で樹立した異型TRPA1 安定発現細胞株を用いて引き続き生活環境化学物質に対する応答性を検討し,各SNP の影響を明らかにする.応答性は細胞内カルシウム濃度の変化を指標とし,FLIPR Calcium 6 試薬 (Molecular Devices) を用いて測定する.さらに, C 末端V5 エピトープタグ付加体として安定発現細胞株で発現させた野生型TRPA1 を抗V5 エピトープタグ抗体を用いて免疫沈降し,Western ブロッティングによりタンパク質のリン酸化状態を含む分子修飾について解析する.次いで,PKA/PLC Signaling 系活性化剤あるいはTRPA1 アゴニストの曝露による野生型及び異型TRPA1 タンパク質の変化を解析し,SNPs による影響の有無を明らかにする. TRPA1の感受性個体差に影響を及ぼす環境要因に関する研究に関する研究においては, 本研究でTRPA1 mRNAレベルを明らかにしたヒト気道あるいは肺由来培養細胞株BEAS-2B,A549,CCD-19Luを用いて,生活環境化学物質によるTRPA1 活性化並びにTRPA1 mRNA/タンパク質の誘導を検討する.生活環境化学物質による誘導が認められた場合には,TRPA1 遺伝子のプロモーター領域を組み込んだレポータープラスミドを作成し,転写因子並びにその応答配列を探索する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に予定している研究に使用する消耗品の購入費用に充当するため TRPA1 の感受性個体差に影響を及ぼす遺伝的要因に関する研究においては,野生型並びに異型TRPA1イオンチャネルの生活環境化学物質に対する応答性の違いを評価するために,細胞内Ca2+濃度の変化を測定するためのカルシウム蛍光指示薬が必要である.また,TRPA1イオンチャネルのリン酸化状態や限定分解等の分子構造の修飾に関する検討には抗体やバイオイメージング用試薬を要する.TRPA1の感受性個体差に影響を及ぼす環境要因に関する研究に関する研究においては,評価化合物によるTRPA1遺伝子の発現レベルの変動を調べる目的で,real-time RT-PCR用の逆転写酵素,TaqMan プローブ等の試薬が必要である.以上,研究費のほとんどは細胞生物学的試薬等の薬品・消耗品の購入に充当する予定である.
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