2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590180
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
安原 眞人 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 教授 (00127151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 将司 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (40412829)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ペンタミジン / 血糖値上昇 / シメチジン / 薬物間相互作用 / pharmacokinetics / pharmacodynamics |
Research Abstract |
カリニ肺炎治療等に用いられるペンタミジンによる血糖値異常について、ラットを用いて検討した。無麻酔下でラットにペンタミジン7.5もしくは15mg/kgを20分かけて静脈内投与すると、7.5mg/kgでは血糖値に変化を認めないのに対し、15mg/kgでは投与終了時から30分間血糖値が有意に上昇した。この時、血清中ヒスタミン濃度の上昇は認められず、キノロン系抗菌薬による血糖値上昇とは異なる機構と推察された。 ペンタミジンは腎臓から有機カチオン輸送体を介して排泄されることから、OCTsやMATEsの阻害剤であるシメチジンの併用効果を検討した。ペンタミジン投与開始5分前にシメチジン50mg/kgを静脈内投与すると、ペンタミジン7.5もしくは15mg/kg単独投与に比し有意な血糖値の上昇が認められた。シメチジンの併用により、ペンタミジンのクリアランスは低下し、ペンタミジンの血清中濃度や肝臓中濃度の上昇が観察された。ペンタミジン投与開始30分後の薬物血清中濃度と血糖値増加には有意な相関が認められ、ペンタミジンによる血糖値上昇が薬物濃度に依存し、シメチジンの併用により血糖値上昇が促進されることが明らかとなった。これらの結果は、ペンタミジンの投与に際してシメチジンのように腎排泄を阻害する可能性の薬剤の併用には注意が必要であることを示唆している。 また、ニューキノロン系抗菌薬であるモキシフロキサシンをラットに静脈内投与すると、100mg/kgの投与量で血糖値の上昇を認めるのに対し、インスリン濃度には系統的な変化を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペンタミジンを投与された患者では、高血糖や低血糖の副作用が知られている。本研究では、無麻酔下のラットにペンタミジンを単回静脈内投与することにより血糖値の上昇が起こすモデル系を確立することができた。本モデルにより、ペンタミジンによる血糖値上昇のメカニズムや併用薬の影響を検討することが可能となった。 モキシフロキサシンについてもこれまで検討したニューキノロン系抗菌薬とは異なる特性が窺え、今後の展開が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はすでに、シベンゾリンによる低血糖に関する速度論モデルを発表している。ニューキノロン系抗菌薬とペンタミジンによる高血糖について、薬物濃度と生体の血糖制御系との相互作用を説明できる速度論モデルの構築を目指す。 次年度においては、ヒスタミン分泌を介して高血糖を引き起こすニューキノロン系抗菌薬について、薬物の投与速度と血糖値変化の関係について動物実験により検討する。 ペンタミジンによる血糖値上昇については、シメチジンとの薬物間相互作用を説明できる薬物動態―薬力学(PK/PD)モデルの構築を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ペンタミジン投与による血糖値上昇に関する予備実験において、ヒスタミンやエピネフリン濃度の上昇を認めなかった。従って、本実験の動物数の削減や濃度測定項目の省略が可能となり、本年度研究費の一部を節約できた。本年度の節約額を次年度の消耗品費に加え、ニューキノロン系薬剤の投与速度の影響に関する検討に当てる予定である。
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