2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590180
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
安原 眞人 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 教授 (00127151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 将司 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (40412829)
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Keywords | モキシフロキサシン / 血糖値上昇 / オランザピン / pharmacokinetics / pharmacodynamics |
Research Abstract |
薬物による血糖値異常のメカニズムを解明し、安全な薬物投与設計法の確立を目指すために、以下の検討を行った。 ニューキノロン系抗菌薬のモキシフロキサシンをラットに単回静脈内投与すると、75mg/kgの投与量では血糖値の変化を認めないが、100mg/kgでは投与後5分から30分で血糖値の有意な上昇が認められ、投与後15分で140mg/dLの最大値を示した。モキシフロキサシン100mg/kgの投与により、血清中のヒスタミン濃度とエピネフリン濃度も上昇し、ヒスタミンは5分、エピネフリンは15分で最大値を示した。一方、モキシフロキサシン75mg/kgの投与では血清ヒスタミン濃度とエピネフリン濃度に有意な変化は認められなかった。これらの結果から、モキシフロキサシンはすでに検討したガチフロキサシンやレボフロキサシンと同様に、静脈内投与後にヒスタミンの遊離を引き起こし、ヒスタミンによるエピネフリン分泌が血糖値上昇の原因と推察された。また、ヒスタミン遊離作用の強さはヒスタミン遊離を引き起こす薬物血中濃度から判断すると、ガチフロキサシン>モキシフロキサシン>レボフロキサシンの順であった。 他の2種のニューキノロン系抗菌薬とは異なり、モキシフロキサシンは今回検討した用量範囲においてインスリン濃度の上昇を示さなかった。 さらに、非定型抗精神病薬のオランザピンをラットに静脈内投与すると、5mg/kgの用量において血糖値の有意な上昇を認めたことから、今後その血糖値上昇のメカニズムについて検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬物による血糖値異常の中でも高血糖について、ニューキノロン系抗菌薬、ペンタミジン、オランザピンの3種の薬剤について検討を進めることができた。ニューキノロン系抗菌薬の中でも、今回検討したモキシフロキサシンはガチフロキサシンやレボフロキサシンとは異なり、インスリン濃度の上昇を引き起こすことなく、ヒスタミン遊離からエピネフリンを介した血糖値上昇を生じており、血糖値の制御モデルを構築する上で有用なデータとなるものと考えられる。 非定型抗精神病薬のオランザピンは、これまでに高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡などの重篤な副作用が知られ、緊急安全性情報が出された薬物である。今回、ニューキノロン系抗菌薬やペンタミジンと同様な実験系において、ラットに高血糖を引き起こすことが認められたことから、今後他剤との比較検討により、高血糖の作用メカニズムやリスクファクターについての解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はすでに、抗不整脈薬シベンゾリンによる低血糖に関する速度論モデルを発表している。ニューキノロン系抗菌薬について、インスリン濃度が変化しないモキシフロキサシンとインスリン濃度の上昇を伴うガチフロキサシン、レボフロキサシンについて、区別して速度論モデルの構築を進める。 臨床的に高血糖が問題となるオランザピンについて、ラットの実験モデルが利用可能となったことから、ニューキノロン系抗菌薬やペンタミジン、シベンゾリンなどの検討結果と比較しつつ、高血糖のメカニズムとリスクファクターの解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
事務手続き上、次年度の使用額になった事が理由として挙げられる。 事務手続き上のことであり、次年度の消耗品費として計上する。
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