2012 Fiscal Year Research-status Report
新規精神疾患関連分子の生理機能解析および臨床利用の可能性
Project/Area Number |
24590183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
宮本 嘉明 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20449101)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 精神疾患 |
Research Abstract |
近年、覚醒剤精神病モデル動物の脳内において遺伝子発現量が増大する分子としてShatiが見出された。しかしながら、Shatiの生理機能や役割については、ほとんど明らかにされていない。そこで、本研究では、各種Shati遺伝子改変マウスを用いて、その機能的役割を明らかにするとともに、精神疾患の診断や遺伝子治療の可能性を検討する。 本年度は、主に各種遺伝子改変マウスにおける行動薬理学的検討を行った。Shati遺伝子の欠損は、不安様行動の減少や探索行動意欲の増加を誘発した。一方、Shati遺伝子の過剰発現は、社会性行動の減少を誘発した。次に、アデノ随伴ウイルスベクターを用いて、背側線条体、側坐核または海馬に特異的にShatiを発現させたマウスを作製した。背側線条体にShatiを発現させた(dSTR-Shati)マウスではうつ様行動の増加が観察されたが、側坐核にShatiを発現させた(NAc-Shati)マウスでは変化が見られなかった。dSTR-ShatiおよびNAc-Shatiマウスではともに、社会性行動の減少が観察された。また、新規環境下での行動量測定では、dSTR-ShatiおよびNAc-Shatiマウスにおいては顕著な行動量の変化が見られなかったが、海馬にShatiを発現させた(Hip-Shati)マウスにおいては環境への慣れ学習による行動量の低下が観察された。物体認知能力試験では、dSTR-ShatiおよびNAc-Shatiマウスでは変化がみられず、Hip-Shatiマウスでは認知機能の亢進が観察された。さらに、Hip-Shatiマウスでは、連合学習におけるエピソード記憶の書き換えが亢進していた。 以上のことから、Shatiは、各脳部位においてそれぞれ異なる神経システムを機能調節していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、多種多様なShati遺伝子改変マウスを用いて、行動薬理学的検討を行い、Shatiが情動性や記憶学習において重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、dSTR-Shatiマウスにおけるうつ様行動の増加および社会性行動の減少に対して、抗うつ薬による改善効果を検討した結果、フルボキサミンの奏功が示唆された。また、in vivo マイクロダイアリシス法を用いて、dSTR-ShatiおよびNAc-Shatiマウスの神経伝達物質の遊離量を測定した結果、dSTR-Shatiマウスの背側線条体ではドパミン基礎遊離量の増加およびセロトニン基礎遊離量の減少が、NAc-Shatiマウスの側坐核ではドパミン基礎遊離量の減少が、それぞれ示唆された。一方、多電極細胞外電位記録システムを用いたHip-Shatiマウス海馬におけるシナプス伝達効率およびシナプス可塑性の測定では、有意な変化が観察されなかった。 以上のことから、本年度に予定していた実験計画のうち、行動薬理学的検討は順調に遂行された。しかし、各種Shati遺伝子改変マウスにおける行動学的神経機能変化を裏付けるための生化学および電気生理学的検討については、更なる追加実験および実験条件の再検討などが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず、引き続き各種Shati遺伝子改変マウスにおける行動学的神経機能変化を裏付けるために、生化学および電気生理学的検討において更なる追加実験および実験条件の再検討などを行っていく。さらに、各種Shati遺伝子改変マウスにおける脳内物質の含量およびmRNAやタンパク質の発現レベルを、それぞれHPLC法およびリアルタイムRT-PCR法やウエスタン・ブロッティング法などを用いて検討する。これにより、Shatiによる各種神経システムへの機能調節メカニズムを明らかにしていく。また、Shatiは新規に同定された分子であり、どのようなタンパク質と相互作用をしているのかは明らかとなってはいない。そこで、GST融合Shati 発現ベクターを利用したタンパク質免疫沈降法およびMALDI-TOF/MS法もしくはLC-MS/MS法により、Shatiと結合するタンパク質を明らかにするとともに、その相互作用の意義を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] Involvement of Shati on depression-like behavior in the postpartum period in human and mice.2012
Author(s)
Takaoka, K., Uno, K., Inagaki, R., Nagakura, M., Tamaji, A., Ozaki, N., Miyamoto, Y., Nitta, A.
Organizer
The 11th Biennial Meeting of the Asian Pacific Society for Neurochemistry / The 55th Annual Meeting of the Japanese Society for Neurochemistry
Place of Presentation
Kobe, Japan
Year and Date
20120929-20121002
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[Presentation] The differences of the action of shati between the nucleus accumbens and dorsal striatum on the methamphetamine-indeuced addictive behaviors in mice.2012
Author(s)
Sumi, K., Miyamoto, Y., Ishikawa, Y., Iegaki, N., Muramatsu, S., Hibi, Y., Nabeshima, T., Uno, K., Nitta, A.
Organizer
The 11th Biennial Meeting of the Asian Pacific Society for Neurochemistry / The 55th Annual Meeting of the Japanese Society for Neurochemistry
Place of Presentation
Kobe, Japan
Year and Date
20120929-20121002
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[Presentation] Overexpression of shati in the nucleus accumbens affects the abnormal behavior induced by methamphetamine in mice.2012
Author(s)
Nitta, A., Ishikawa, Y., Iegaki, N., Muramatsu, S., Nabeshima, T., Furukawa-Hibi, Y., Uno, K., Miyamoto, Y.
Organizer
The 28th CINP World Congress of Neuropsycchopharmacology
Place of Presentation
Stockholm, Sweden
Year and Date
20120603-20120607
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