2012 Fiscal Year Research-status Report
悪性黒色腫における生理活性脂質の抗がん剤耐性調節機序の解明
Project/Area Number |
24590185
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
清島 眞理子 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00171314)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加納 宏行 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40566494)
坂野 喜子 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (50116852)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 悪性黒色腫 / 抗がん剤耐性 / 生理活性脂質 |
Research Abstract |
本研究は悪性黒色腫における抗がん剤耐性とスフィンゴ脂質代謝との関連性に焦点を当て、がん幹細胞の増殖・分化のスフィンゴ脂質代謝による制御機構を明らかにし、新規治療薬の分子標的の基盤となる知見を得ることを目的としている。そこで、まず悪性黒色腫臨床分離培養細胞(7種)および悪性黒色腫細胞培養株(5種)を培養し、培養液にシスプラチン(CDDP)あるいはダカルバジン(DTIC)を添加し、MTT測定法で細胞生存率、すなわち各々のIC50を測定した。その結果から、これらの抗がん剤に対する耐性株Mel28と感受性株A375を以下の実験に用いることとした。 抗がん剤耐性については他のがん細胞において細胞内スフィンゴシンキナーゼ(sphingosine kinase , SPHK)の高発現が注目されている。そこで悪性黒色腫の各細胞株におけるSPHKの発現を検討したところ、抗がん剤抵抗性株のMel28ではSPHKが高発現していることが明らかになった。 SPHKはスフィンゴ脂質代謝において、細胞増殖や生存作用のあるS1P(sphingosine 1-phosphate)の発現レベルを調節する際に重要な役割を担う。SPHKの高発現により、S1Pは受容体を介して生存シグナルを促進し、抗がん剤耐性を生じるメカニズムが考えられている。そこで、S1P受容体のアンタゴニストであるFTY720に着目し、抗がん剤と併用することにより、抗がん剤耐性に対する効果を検討した。その結果、感受性株のA375ではシスプラチンとFTY720の併用により、細胞死を促進させることが明らかになった。耐性株については現在検討中である。FTY720は抗がん剤耐性にとって有用な薬剤である可能性が考えられ、現在そのメカニズムについて検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では1)抗がん剤によるがん細胞死制御におけるスフィンゴ脂質代謝およびがん幹細胞マーカータンパク質CD133/CD44/nestin発現の検討、2)抗がん剤感受性株および耐性株におけるセラミド(CER)の代謝経路の検討、3)抗がん剤によるスフィンゴ脂質代謝酵素活性調節機構および他の生存シグナル系との関連を計画した。 その中で、抗がん剤感受性細胞株および耐性細胞株でのCERの代謝経路の検討のためにまず抗がん剤感受性を悪性黒色腫の各細胞株で検討し、今後の実験において主に用いる細胞株を決定した。現在はそれらを用いてCERの代謝経路および抗がん剤によるスフィンゴ脂質代謝酵素活性調節機構を検討中である。研究は全体としておおむね順調に計画通り進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
悪性黒色腫の抗がん剤感受性株および耐性株におけるセラミド(CER)の代謝経路の検討、抗がん剤によるスフィンゴ脂質代謝酵素活性調節機構および他の生存シグナル系との関連を現在実験中であり、継続したい。さらに当初の計画で25年度以降の研究計画と考えていた、臨床分離がん組織におけるスフィンゴ脂質代謝酵素とがん幹細胞マーカ-発現の免疫染色および免疫ブロットを用いた検討にも着手したいと考えている。すなわち、臨床検体として得られた悪性黒色腫組織におけるSPHKとCD133/CD44/nestinの発現を各々の特異的抗体を用いて組織染色を行い、正常組織と比較検討する計画である。さらに悪性黒色腫組織の薄切切片を作成し、スフィンゴ脂質代謝酵素SPHK1およびSPHK2抗体で免疫染色する予定である。上記組織のホモジネイトを作成し、生存/増殖シグナル系(PI3K、Akt、PLD、ERK、Ras、COX、c-Myc、MMP2/9など)の各抗体を用いた免疫ブロットを行い、これらの発現を正常組織と比較検討する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(19 results)