2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590207
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
桝渕 泰宏 千葉科学大学, 薬学部, 教授 (10209455)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 薬剤性肝障害 / 性差 / アセトアミノフェン / 四塩化炭素 / グルタチオン / CYP2E1 |
Research Abstract |
本研究では、薬剤性肝障害感受性因子として性に着目し、現象としての薬剤性肝障害の性差モデルを実験動物で構築するとともに、性ホルモンの作用点を明らかにすることを目的とし、平成24年度は以下の検討を行った。 1.薬剤性肝障害の性差発現の基礎要因としての肝薬物代謝酵素の性差:代謝的活性化による反応性代謝物の生成は、多くの原因薬剤における肝障害発症過程の初発段階であり、生体側からみた場合、重要な肝障害感受性因子である。マウスは一般には薬物代謝型のCYPには顕著な性差はないとされているが、多数の系統にまたがる網羅的な検討例は見あたらない。本研究では、肝障害研究に汎用される代表的な近交系のC57BL6およびBALB/cマウスならびに非近交系CD-1マウスの雌雄を用いて、肝CYP1A2、CYP2E1、CYP3A11のmRNAおよびタンパク発現量を測定した。その結果、いずれも雌に比べて雄でやや大きい傾向を示したが、以下に示す顕著な薬剤性肝障害の性差の主要因にはならないと考えられた。 2.アセトアミノフェンならびに四塩化炭素によるマウス肝障害の性差:両薬物によるマウス肝障害モデルは汎用されているが、これまで肝障害感受性の性差に関して、一貫した結論は得られていなかった。本研究では、上述の各系統のマウスにおいてアセトアミノフェンならびに四塩化炭素肝障害が、雌に比べて雄で顕著に出現する性差を見出した。また、アセトアミノフェン投与後に枯渇する肝グルタチオンが、雄に比べて雌で早く回復することと、これに関連してグルタチオン合成の律速酵素であるグルタミン酸システインリガーゼが、アセトアミノフェン投与により雌で高発現を示すことを明らかにした。一方、グルタチオン枯渇を伴わない四塩化炭素でもアセトアミノフェンに類似した性差がみられることから、グルタチオン合成以外の雌における抵抗性因子の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は研究実施計画として掲げた「薬剤性肝障害の性差発現の基礎要因としての肝薬物代謝酵素の発現と活性の性差」、「アセトアミノフェンによるマウス肝障害の性差とその要因の解明」に関しておおかた達成できたと考える。ただし、平成24年度に得られた肝薬物代謝酵素は薬剤性肝障害の性差の主要因にはならないとの結論は、あくまで常在型としての存在量に基づくものであり、肝障害惹起薬物投与以降あるいは、肝障害発症過程での酵素発現変動の推移をフォローする必要があると考えられる。また、平成25年度以降に得られるデータ次第では、改めて他の薬物代謝酵素やトランスポーター、他のマウス系統における薬剤性肝障害感受性を検討する必要が生じる可能性もあると思われる。なお、アセトアミノフェン肝障害との対比の意味で、一部平成25年度予定していた四塩化炭素肝障害モデルについても平成24年度に検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に一部実施した四塩化炭素誘発肝障害の性差に関して引き続き検討し、肝薬物代謝酵素ならびにグルタチオン合成酵素の以外の性差要因として、炎症性および抗炎症性サイトカインの役割を中心に肝障害発症過程の後期における様々な障害増幅ならびに抑制因子について検討していきたい。また、平成25年度交付申請書に記載の通り、ハロタン誘発肝障害モデルを作製する。ハロタン誘発肝障害では、すでにマウスにおいて雌優位な肝障害が認められ、ヒトにおいて女性における罹患率が高いことと対応が得られているが、マウスの系統差が性差に優先する因子となっており再検証の必要があると考えられる。さらに、ハロタン誘発肝障害モデルにより、アセトアミノフェンや四塩化炭素とは異なる性差発現要因を検出できるものと期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述の通り、平成24年度に得られた肝薬物代謝酵素は薬剤性肝障害の性差の主要因にはならないとの結論は、あくまで常在型としての存在量に基づくものであり、肝障害惹起薬物投与以降あるいは、肝障害発症過程での酵素発現変動が肝障害感受性に寄与する可能性が考えられる。事実、グルタチオン合成においては、その律速酵素であるグルタミン酸システインリガーゼが、アセトアミノフェン投与により雌で高発現を示し、肝障害抵抗性因子として働いていると推定される。平成25年度においては、アセトアミノフェンならびに四塩化炭素投与から肝障害発現に至る過程での肝薬物代謝酵素、主にCYP1A2、CYP2E1、CYP3A11の発現変動の性差を検討し、肝障害重症度の性差との対応を検討する。次年度に使用する予定の研究費は、これらの平成24年度の補足的検討のための研究費に加えて、四塩化炭素やハロタン肝障害モデルにおいて新たに得られるデータにより、改めて他の薬物代謝酵素やトランスポーター、他のマウス系統における薬剤性肝障害感受性を検討するための研究費に充当する。
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Research Products
(1 results)