2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590207
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
桝渕 泰宏 千葉科学大学, 薬学部, 教授 (10209455)
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Keywords | 薬剤性肝障害 / 性差 / マウス / 四塩化炭素 / 脂質過酸化 / グルタチオン / フロセミド / インターロイキン-6 |
Research Abstract |
本研究では、薬剤性肝障害感受性因子として性に着目し、現象としての薬剤性肝障害の性差モデルを実験動物で構築するとともに、性ホルモンの作用点を明らかにすることを目的とする。平成25年度はアセトアミノフェン以外の肝障害モデルにおける性差発現のメカニズムを検討した。 雌雄CD-1マウスに四塩化炭素を腹腔内投与した結果、雌に比べて雄マウスで高い血清ALT値を示した。病理組織所見(HE染色)においても、中心静脈周囲の高度な肝細胞壊死は雄マウスにおいてのみ認められ、雄優位な肝障害が示された。四塩化炭素肝障害の重要な発症プロセスである脂質過酸化は、高用量においてのみ雄優位な性差が見られ、低高投与量で障害メカニズムが異なることが示唆された。一方、いずれの投与量においても肝グルタチオン量に対する四塩化炭素の影響は認められなかった。性差が顕著であった低用量の四塩化炭素投与で毒性発現前の四塩化炭素投与後3時間のヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1) とインターロイキン-6 (IL-6) の発現量を調べたところ、HO-1では雄で高くIL-6は雌で高い傾向を示した。HO-1は一般に酸化的ストレスに対して防御的には働くことから、雄マウスにでは肝障害前段階の軽微な変化に反応した増加が見られ、むしろ毒性の結果を示すものと考えらえた。一方、この段階で逆の性差が見られたIL-6は雌マウスにおける肝障害の防御に寄与していると推定された。 ハロタンおよびフロセミドを用いて雌雄マウスにおける肝障害モデルの作製を試みたところ、フロセミドにおいて、四塩化炭素と同様に雄優位な、かつ肝グルタチオン枯渇を伴わない肝障害モデルが得られ、雌マウスにおける防御機構の一般化が可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は研究実施計画として掲げた「四塩化炭素誘発肝障害の性差とIL-6の関与」と「ハロタン誘発肝障害の性差とその要因の解明」のうち、前者の四塩化炭素肝障害モデルにおける検討は計画通りに達成された。後者のハロタン肝障害モデルについては、性差を検出できるほどの顕著な肝障害は観察されず、既報の肝障害モデルの作製条件について再検討が必要と考えられた。そこで新たにフロセミド肝障害モデルを作製した結果、四塩化炭素と類似した雄優位な、グルタチオン非依存的な性差が得られた。以上、四塩化炭素ならびにフロセミド肝障害モデルにより。平成25年度の達成目標であった「薬剤肝障害のグルタチオン非依存的な性差モデル」の構築は達成され、性差発現メカニズムの解明に向けた検討を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度研究実施計画に従い、グルタチオン非依存的に性差発現に寄与するIL-6の上流あるいは下流の因子として、Constitutive androstane receptor (CAR) とその制御蛋白の関与について検討する。また、アセトアミノフェン肝障害におけるグルタチオン依存的性差発現機構についても、すでに明らかにした合成系以外に、消失系因子としてGSH輸送タンパクについて検討していきたい。また、性差発現メカニズムを他の角度から検証し、また、人為的に制御する手段として、エストロゲン様作用を持つことが知られているイソフラボン類を用いて、これまで構築してきたマウス薬剤性肝障害モデルに対する防御効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付申請時に平成24、25、26年度の物品費を2:1:1の比率で配分していたが、研究の進展に従って研究内容が拡張するため、研究費のウエイトをより後半の年度に置くことにした。次年度使用額は主に、平成24年度分の26年度分への移行である。 交付申請書に従った平成26年度研究計画を予定通り実施する。また、最終年度に当たるため、これまでの研究の補足、総括的実験にも研究費は必要となる。物品費は、薬品(薬物、酵素、抗体、PCRプライマー、サイトカイン)、実験動物(マウス)、器具(ガラス器具、ピペット)等の消耗品に使用する。
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