2013 Fiscal Year Research-status Report
Mタンパク糖鎖をターゲットとした多発性骨髄腫のバイオマーカ開発
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24590209
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
飯島 史朗 文京学院大学, 保健医療技術学部, 教授 (30222798)
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Keywords | 多発性骨髄腫 / Mタンパク / 糖鎖 |
Research Abstract |
多発性骨髄腫では、Mタンパクと呼ばれるモノクローナルな免疫グロブリンを産生する。これまでに、MタンパクL鎖には、健常人の免疫グロブリンのL鎖にはみられない糖鎖が結合していることを明らかとした。このため、Mタンパク結合糖鎖に着目し、多発性骨髄腫の合併症の予測を可能とする新たな診断・治療マーカーの開発を目的とし研究を遂行した。 骨髄腫細胞株(KMM1, RPI18226)を用いて、多発性骨髄腫の合併症に関与する生理活性物質を用いて株化細胞を刺激し、MタンパクL鎖糖鎖構造の変化について検討するためその培養条件について検討した。その結果、FBS中の免疫グロブリンL鎖中の糖鎖が、この分析系を妨害することがわかった。このため、培養条件に無血清培地を選択して、細胞表面糖鎖を指標に培養条件の検討を行い、FBSを含む培地と同様に無血清培地でも同様の糖鎖が細胞膜表面に発現する条件を見いだした。本条件を用いて、各細胞株より分泌されるMタンパクL鎖に結合している糖鎖と反応するレクチンは、KMM1細胞で、SSA, ECA, GS-II, BPA, SBA, WGA, UEA1、RPI18226細胞ではSSA, GS-II, ABA, LEA, SBA, MAM, AAL, TL, ConAであることを明らかとした。また、各細胞表面に発現している糖鎖も同様のレクチンと反応した。種々の生理活性物質の刺激による糖鎖変化については現在検討中である。 さらに、本法を臨床応用するため、このMタンパクL鎖結合糖鎖の迅速な分析法としてレクチンと抗L鎖抗体を用いたELISA法を開発した。 以上の結果より、細胞接着に関与する細胞表面糖鎖をMタンパクL鎖糖鎖が反映していることが明らかとなり、MタンパクL鎖糖鎖分析が、新たな多発性骨髄腫のバイオマーカとなる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25-26年度の研究計画は、1) Mタンパクおよび骨髄腫細胞株表面糖鎖と結合するタンパクの探索と同定、2) Mタンパク糖鎖を形成する糖転移酵素の解析による糖鎖生合成メカニズムの解析、3) Mタンパク糖鎖を用いた治療効果判定法の検討、4) Mタンパク糖鎖および骨髄腫細胞株表面糖鎖測定法の開発であり、1)および4)が本年実施予定の項目である。 1) Mタンパクおよび骨髄腫細胞株表面糖鎖と結合するタンパクの探索と同定については、FBS中の免疫グロブリンL鎖に糖鎖が結合していたため、一般的な細胞培養条件での細胞培養が困難であり、新たな培養条件での確立に時間を要した。このため、骨芽細胞や破骨細胞との共培養系での研究が実施できなかった。 4) Mタンパク糖鎖および骨髄腫細胞株表面糖鎖測定法の開発では、約20種類のレクチンを用い研究を進めた。この結果、培養細胞表面の糖鎖をこれらのレクチンを用いて検出する条件の確立およびMタンパクL鎖の糖鎖をELISA法で迅速に検出する方法を確立した。 以上より、項目1)については研究の進展が送れているものの、次年度の実施が可能な条件が整い、また項目4)については、作業が完了していることより、「やや遅れている」の判定とした。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の項目を平成26年度に順次実施する。 ・Mタンパクおよび骨髄腫細胞株表面糖鎖と結合するタンパクの探索と同定-糖鎖結合タンパク質の探索(骨融解病変との関連を中心として):平成24年度に病態との関連を明らかとした糖鎖を蛍光標識し、細胞培養系を用いて破骨細胞、骨芽細胞等の合併症に関わる 細胞と混合して培養し、各種細胞株表面タンパクと糖鎖の反応性を解析する。 ・Mタンパク糖鎖を形成する糖転移酵素の解析による糖鎖生合成メカニズムの解析:病態との関連が認められた糖鎖を生成する骨髄腫細胞株を用いて、ゴルジ体内の糖転移酵素活性をもとに、糖鎖の生合成経路を解析し糖鎖が生成するメカニズムを明らかとする。 ・Mタンパク糖鎖を用いた治療効果判定法の検討-細胞培養系での抗腫瘍薬の効果解析:細胞培養系を用いて、骨髄腫細胞株をレナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン等の治療薬で処理し、分泌されるMタンパク糖鎖構造の変化、合併症に関与する因子、血管新生に関わるサイトカイン等を測定し、治療効果の判定に有用な糖鎖構造変化を明らかとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
骨髄腫細胞株の培養に、一般的に用いられているFBSを使った培地では、FBS中の免疫グロブリン糖鎖が分析を妨げることが判明し、前述の骨髄腫細胞株と、骨病変を形成する骨芽細胞および破骨細胞との共培養系での実験が遅延したため。 昨年度に、培養条件の検討を十分に行えたため、研究チームの人数を拡充し、実験計画の速やかな遂行を目指す。
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