2013 Fiscal Year Research-status Report
欧米人を対象に構築された薬物動態・薬効モデルの日本人への適用性評価
Project/Area Number |
24590210
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Research Institution | Yokohama College of Pharmacy |
Principal Investigator |
千葉 康司 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (30458864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松嶋 由紀子 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (10618531)
諏訪 俊男 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (20383664)
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Keywords | モデリング / シミュレーション / 抗菌薬 / 民族差 / 個体間変動 / CYP2C19 / CYP2C9 |
Research Abstract |
本年度は抗菌薬について、欧米人にて構築された母集団薬物動態解析(PPK)モデルの日本人データに対する外的妥当性に関する検討を行った。欧米人モデルにおいて共変量が設定されている場合には、日本人の値を入力した。本邦にて承認された抗菌薬86品目についてPPKモデル情報がある文献を調査した結果、22化合物(48文献)において、欧米人を主な対象として構築したPPKモデルの情報が得られた。これらは、ペニシリン、セフェム、カルバペネム、アミノグリコシド、マクロライド、リンコマイシン、オキサゾリジノン、グリコペプチド及びキノロン系の抗菌薬であった。得られたPPKモデルを再構築し、日本人試験のCmax及びAUCを推定した。 日本人のCmax及びAUCの値が、欧米人モデルからの推定値の95パーセンタイル予測区間内となった化合物の割合は、マクロライド、リンコマイシン、オキサゾリジノン、キノロン系が100%であったが、アミノグリコシド、グリコペプチド系は約40%と低く、抗菌薬の系統間に差が認められた。範囲外となった化合物は8化合物あり、その多くが患者を対象に構築されたモデルであり、モデル構築時の対象の薬物動態特性に差があるものと考えられた。本研究成果は第34回日本臨床薬理学会学術総会にて報告した。 また、承認時の民族差評価について調査する目的で、欧米人との比較データが公表されているブリッジング試験と国際共同治験について、症例数に着目し検討した成果を欧文科学誌に報告した。さらに、アジア人試験を用いた承認申請資料概要についても調査し、アジア人試験の特性について検討した結果を欧文科学誌に報告した。 抗体医薬品は、低分子薬剤と異なる薬物動態を示し、民族差の評価も異なる可能性がある。本年度は、抗体医薬品の第I相試験の情報を収集し、薬物動態の類似性及び安全性についてまとめ、欧文科学誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、平成24・25年度には作業仮説を確認した後調査を開始し、脳循環代謝改善薬、循環器疾患薬、抗菌薬について終了、さらに調査範囲を拡大する予定であった。現在、抗菌薬および脳循環器疾患薬についてはまとめの段階にあるが、循環器疾患薬については、ヘパリン系の抗凝固薬のみの検討に留まっている。現在、新規抗凝固薬が多く市場に投入されていることから、追加検討をする予定である。また、抗菌薬のPDモデルについては、日本人のPD指標と比較検討が可能な欧米人モデルの報告は少なく、また、PDパラメータの変動を考慮すると、日本人データに対する外的妥当性の評価が困難なものと思われる。現在、さらなるデータ収集とシミュレーション等を用いた不足データの補足等について検討中である。 これら追加作業の対策として、研究協力者、また、大学研究生および学生に協力を要請している。 調査範囲の拡大については、鎮静剤について欧米人モデルの日本人データへの外的妥当性の検討を行い、現在、公表の準備段階にある。また、承認審査における民族差評価について、平成25年度までに概ねその背景について調査し、その成果を公表してきたが、本年度はモデルを用いた評価について掘り下げて行く予定である。 以上、若干の予定の変更を総合的に考え、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
抗菌薬についてはPK部分の研究成果を欧文科学誌に投稿する予定である。PD部分については、日本人データのPDデータについて情報量の不足が予想されるが、新規に公表された論文情報等を用い、シミュレーション等により不足部分を補足しながら検討を進める予定である。また、ヘパリン系抗血液凝固薬について検討し日本人PPKモデルについて報告したが、新規に上市された抗血液凝固薬の論文情報を収集し、日本人データへのモデルの外的妥当性について検討を加える予定である。さらに、平成25年度に検討した抗体医薬品については、公表論文に示したように、標的抗原の差が民族差となることが予想される。このような記述的な手法での日本人データへの外挿性についても、本研究の成果の一部としてまとめる予定である。 事前分布の情報、平均値及び分散を用いた評価法についても当初の予定通り、モデルの外的妥当性の検討に平行して進めてきた。各種代謝酵素固有クリアランス(CLint)の個体間変動の研究成果を用い、欧米人にて構築されたモデルと日本人データの乖離が、この固有クリアランスの変動や遺伝子多型による変動により説明可能か検討し、欧米人モデルを日本人データに適用する際の改良法について考察する予定である。現在の代謝酵素固有クリアランスの変動の検討については、既に欧文科学誌に公表したCYP2D6に加え、CYP2C19およびCYP2C9についても研究成果を公表する予定である。
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Research Products
(9 results)