2012 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の発症機序におけるプロスタグランジンE2の関与
Project/Area Number |
24590219
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
野田 幸裕 名城大学, 薬学部, 教授 (90397464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
毛利 彰宏 名城大学, 薬学部, 助教 (20597851)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 統合失調症 / モデル動物 / プロスタグランジンE2 / 認知機能 / 神経発達異常 |
Research Abstract |
統合失調症の発症機序の解明およびそれに基づいた予防・治療法の開発を目的とした本研究では、免疫・ストレス等によって増加し、神経機能に影響を与えるプロスタグランジンE2(PGE2)に着目して以下について検討した。 ①統合失調症の発症原因を模した動物モデルにおけるPGE2の変化:疫学調査で報告されている発症原因である周産/新生児期ウイルス感染[生後2日齢の新生児期にウイルス感染様の免疫異常を惹起させるPolyI:C(10 mg/kg)を投与したマウス]、周産/新生児期低酸素(生後2日齢の新生児期に20分間、100%CO2を暴露したマウス)、あるいは周産/新生児期母子隔離(生後2日齢の新生児期に6時間、母子隔離したマウス)を負荷すると、脳内PGE2量はいずれのモデルにおいても有意に増加していた。周産/新生児期ウイルス感染モデルにおいては、脳内PGE2合成酵素類(COX-1と2、mPGES-1)のmRNA発現量もPGE2量と同様に増加していた。 ②周産/新生児期におけるPGE2暴露による精神・神経機能への影響:周産/新生児期ウイルス感染モデルにおいて、精神機能の発達過程におけるPGE2の影響について検討するため、生後2日齢の新生児期から5日間、PolyI:CあるいはPGE2(10 mg/kg)を投与し、成体期における高次機能を行動学的に調べた。その結果、いずれの投与マウスの成体期において、社会性行動試験における社会性行動の低下、新奇物体認知試験における認知機能の障害やプレパルスインヒビション試験における情報処理能力の低下が認められた。 以上の知見から、PGE2は、統合失調症の発症に重要な共通因子の一つとなる可能性が示され、神経発達期(周産/新生児期など)におけるPGE2の暴露は、成体期において精神行動障害を惹起させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統合失調症の発症機序には、周産/新生児期における神経細胞や神経回路網の発達障害が関与するという神経発達障害仮説があり、この仮説に基づいて、統合失調症の発症機序の解明および予防・治療法の開発を目指している。 平成24年度は、①統合失調症の発症原因を模した動物モデルにおけるプロスタグランジンE2(PGE2)の変化、②周産/新生児期におけるPGE2暴露による精神・神経機能への影響について検討した。①に関しては、種々の統合失調症の発症原因を負荷したモデルマウスにおいて、共通してPGE2量が増加すること、②に関しては、周産/新生児期のウイルス感染やPGE2投与により成体期において精神行動障害(社会性行動の低下、認知機能の障害や情報処理能力の低下)が認められることを見出し、統合失調症の発症原因を負荷したモデルマウスにおける精神行動障害の発現には、PGE2が関与していることを明らかにした。 以上のように、①に関しては計画していた実験は概ね終了しており、②のPGE2の精神・神経発達への影響に関しては現在一部検討中(PGE2の神経伝達物質におよぼす影響やマウス胎児海馬の初代神経細胞における神経突起の伸長におよぼす影響)である。したがって、研究計画の達成度は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度において得られた結果を基に、以下の研究を行う。 ①周産/新生児期におけるプロスタグランジンE2(PGE2)暴露による神経機能と神経発達への影響:新生児期にPGE2を暴露したマウスについてin vivoマイクロダイアリシス法や免疫染色法、リアルタイムRT-PCR法、ウエスタンブロッティング法などを用いて神経化学的解析を行う。PGE2の合成酵素阻害薬あるいはその受容体拮抗薬による精神行動障害が緩解したマウスについても同様に解析する。また、精神機能の発達には軸索の伸長による神経投射が深く関与しているので、神経の軸索伸長に対するPGE2暴露の影響について培養神経を用いて詳細に検討する。 ②周産/新生児期におけるプロスタグランジンE2(PGE2)暴露によるストレス・乱用薬物に対する脆弱化:新生児期にPGE2を暴露したマウスにおいて、社会性敗北ストレスを負荷したり、乱用薬物(フェンシクリジン:PCP)を連続投与した場合、精神行動障害が顕在化あるいは重篤化するかどうか検討する。 以上、得られた結果は順次取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費(1,493,251円)は、試薬(酵素・抗体関連:800,000円)、実験動物(400,000円)、その他消耗品(チップ・サンプルチューブ等:293,251円)などに使用する予定である。
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Research Products
(15 results)