2012 Fiscal Year Research-status Report
DDS応用に向けた新規組織指向型水溶性カーボンナノチューブの体内動態と安全性研究
Project/Area Number |
24590220
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
灘井 雅行 名城大学, 薬学部, 教授 (00295544)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 美紀 名城大学, 薬学部, 准教授 (70345594)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | カーボンナノチューブ / 体内動態 / ドラッグデリバリー / 水溶化 / 安定性 |
Research Abstract |
Drug deliveryの薬物送達担体として、single-walled carbon nanotube(SWCNT)を応用するためには、まずSWCNT自身の体内動態特性を明らかにすることが必要である。我々はこれまでに、水溶化分子としてpolyethylene glycol(PEG)を、また蛍光色素としてCy5を結合させた水溶性蛍光SWCNT(Cy5-PEG-CNT)の合成法を確立し、その体内動態の検討を行っている。しかし、Cy5-PEG-CNTが生体内で代謝や分解を受けた場合、SWCNTの体内動態の評価は不可能である。そこで、8-9週齢のWistar系雄性ラットにCy5-PEG-CNTを静脈内投与し、蛍光強度から体内動態を検討するとともに、分子量の確認を目的としてゲル濾過カラムクロマトグラフィーを行い、その生体内での安定性について検討した。 Cy5-PEG-CNT急速静脈内投与後、血漿中からの消失には二相性が認められた。また、Cy5-PEG-CNTは投与180分後までに尿および胆汁中に、それぞれ投与量の54.2%、31.6%が排泄された。また、全身クリアランス、尿中排泄クリアランスおよび胆汁中排泄クリアランスはそれぞれ0.16 L/hr/kg、0.09 L/hr/kg、0.05 L/hr/kgであった。一方、投与したCy5-PEG-CNT溶液、ラットから採取した尿、胆汁についてゲル濾過カラムクロマトグラフィーを行ったところ、すべてのサンプルでカラムからの蛍光物質の溶出パターンが等しかったことから、Cy5-PEG-CNTは体内で代謝、分解を受けることなく尿中および胆汁中に排泄されることが明らかとなった。 以上の結果、本研究で合成したCy5-PEG-CNTは生体内において安定であり、その血漿中濃度推移はCy5-PEG-CNTとしての体内動態を示すことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請課題では、水溶性CNTを合成し、その体内動態特性と生体内に対する安全性を把握するとともに、水溶性CNTに抗体やペプチドを付加することにより組織指向性を付与することができるか、さらに組織指向型薬物付加水溶性CNTが標的組織において目的とする薬物を如何に放出し、放出された薬物がどのような組織内動態を示すのかを明らかにすることで、CNTを利用した薬物送達手段の開発を目指している。これまでの検討で、水溶化分子PEG、蛍光色素Cy5を結合させた水溶性蛍光SWCNT(Cy5-PEG-CNT)合成法を確立し、その静脈内投与後の体内からの消失が比較的早く、またCy5-PEG-CNTが体内で代謝、分解を受けず、尿中および胆汁中に排泄されることを明らかにした。また、酸化回数を変化させたSWCNTを原料として用いることにより、血中滞留性、胆汁および尿中への排泄挙動が異なるCy5-PEG-CNTが合成できることを明らかにした。これらの基礎的知見を基に、今後、水溶性CNTの生体内での安全性および異物処理機構に及ぼす影響の検討、抗体あるいはペプチド付加による組織指向性を有する水溶性CNTの作製を進める予定である。しかし、これらの検討を進めるにあたっては、実験に十分利用できるだけの量の、均一な物理化学的性質を有した水溶性CNTを合成することが不可欠である。しかし、これまでに行ってきた検討では、一度に合成できる水溶性CNTの量が数mgと少量であり、その合成過程が研究遂行の律速段階となっている。このため、現在、水溶性CNTの合成方法の効率化について再検討を行っており、研究目的の達成が、若干遅れているのが現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究をスムーズに推進するため、実験に十分利用できるだけの量の、均一な物理化学的性質を有した水溶性CNTをできるだけ効率良く合成できる方法について検討する。この合成方法の見直しにより十分量の水溶性CNTが合成でき次第、当初の計画である、水溶性CNTの生体内での安全性および異物処理機構に及ぼす影響の検討、抗体あるいはペプチド付加による組織指向性を有する水溶性CNTの作製とその体内動態特性の解明を進める予定である。なお、水溶性CNT合成方法の見直しに当たっては、原料となるSWCNTについても、より純度が高く、均一な物性を有する物を使用する必要があるが、連携研究者である名城大学理工学部教授 安藤義則博士の協力を得て、準備を進めている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究をスムーズに推進するため、実験に十分利用できるだけの量の、均一な物理化学的性質を有した水溶性CNTをできるだけ効率良く合成できる方法を確立することが不可欠である。このため、研究費としては、昨年度同様、カーボンナノチューブ、蛍光試薬、ゲル濾過カラム、およびその他実験試薬の購入を中心とした配分を計画している。また、合成方法の見直しにより十分量の水溶性CNTが合成でき次第、水溶性CNTの生体内での安全性および異物処理機構に及ぼす影響の検討へと研究を進めてゆく予定である。このため、水溶性CNTの毒性評価に必要な細胞培養用試薬類、細胞培養用FBS、RT-PCR用試薬類ならびに実験動物の購入費についても使用を計画している。
|