2013 Fiscal Year Research-status Report
DDS応用に向けた新規組織指向型水溶性カーボンナノチューブの体内動態と安全性研究
Project/Area Number |
24590220
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
灘井 雅行 名城大学, 薬学部, 教授 (00295544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 美紀 名城大学, 薬学部, 准教授 (70345594)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 体内動態 / ドラッグデリバリー / 水溶化 / 分子サイズ |
Research Abstract |
Drug deliveryの薬物送達担体として、single-walled carbon nanotube(SWCNT)を応用するためには、SWCNT自身の体内動態特性を明らかにすることが必要である。そこで我々は、水溶化分子polyethylene glycol(PEG)、蛍光色素Cy5を結合させた水溶性蛍光SWCNT(Cy5-PEG-CNT)の合成法を確立し、その体内動態を検討してきた。その結果、静脈内投与後、血漿中からの消失が2相性を示すこと、体内で代謝、分解を受けることなく、主に尿中および胆汁中に排泄される可能性が高いという知見を得た。さらに、酸化回数の異なるSWCNTを原料とした場合、血中滞留性、胆汁および尿中への排泄挙動が異なるCy5-PEG-CNTが合成できることを明らかにした。そこで、これらの基礎的知見を基に、今後、水溶性CNTの生体内での安全性および異物処理機構に及ぼす影響の検討、抗体あるいはペプチド付加による組織指向性を有する水溶性CNTの作製を進めることを計画しているが、これらの検討には、均一な物理化学的性質を有した水溶性CNTを、十分量合成する必要がある。しかし、合成したCy5-PEG-CNTは幅広い分子サイズを有し、この分子サイズの差異がSWCNTの体内動態に影響を及ぼす可能性がある。そこで本年度は、分子サイズが均一なCy5-PEG-CNTの合成を目的とし、酸化処理したSWCNT(SWCNT-COOH)を、孔径の異なる3種のメンブランフィルターを用いて、特定の分子サイズに分級することを試みた。しかし、大部分のSWCNT-COOHが孔径10 μmのフィルター上に捕集された。この結果は分散液中ではSWCNT-COOHが会合し、バンドルを形成するため、SWCNT-COOH自身の分子量による分級が不可能であることを示唆するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請課題では、水溶性CNTを合成し、その体内動態特性と生体に対する安全性を把握するとともに、水溶性CNTに抗体やペプチドを付加することにより組織指向性を付与することができるか、また、そのCNTが標的組織において薬物を如何に放出し、放出された薬物がどのような組織内動態を示すのかを明らかにすることで、CNTを利用したDrug deliveryの開発を目指している。これまでの検討で、水溶化分子PEGおよび蛍光色素Cy5を結合させた水溶性蛍光SWCNT(Cy5-PEG-CNT)の合成法を確立し、その静脈内投与後の体内動態特性を明らかにするとともに、酸化回数を変化させたSWCNTを原料としたCy5-PEG-CNTは、血中滞留性、胆汁および尿中への排泄挙動が異なることを明らかにした。これらの基礎的知見を基に、今後、水溶性CNTの生体内での安全性および異物処理機構に及ぼす影響の検討、抗体あるいはペプチド付加による組織指向性を有する水溶性CNTの作製を進める予定である。しかし、これらの検討を進めるにあたっては、均一な物理化学的性質を有した水溶性CNTの合成が不可欠である。本年度は特定の分子サイズを有する水溶性蛍光SWCNTを合成するため、未精製SWCNTに酸化処理を施したSWCNT-COOHを、孔径の異なるメンブランフィルターを用いて、均一な分子サイズの分級できるかについて検討した。しかし、SWCNT-COOHの分散液をろ過したところ、大部分のSWCNT-COOHが孔径10 μmのフィルター上に捕集され、本法による分級が不可能であることが示唆された。また、水溶性CNTの合成方法の効率化についても再検討を行っているが、顕著な効率化につながる明確な知見は得られておらず、原料とするSWCNTの見直しを含めたさらなる検討が必要である。以上の状況により、研究計画の達成が若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究をスムーズに推進するため、均一な物理化学的性質を有した水溶性CNTを効率良く合成できる方法について引き続き検討する。この合成方法の見直しにより十分量の水溶性CNTが合成でき次第、当初の計画である、水溶性CNTの生体内での安全性および異物処理機構に及ぼす影響の検討、抗体あるいはペプチド付加による組織指向性を有する水溶性CNTの作製とその体内動態特性の解明を進める予定である。なお、水溶性CNT合成方法の見直しに当たっては、原料となるSWCNTを、アーク放電法により生成した未精製SWCNT(SWCNT APJ)から、eDIPS法改良直噴熱分解合成法により生成した、より純度が高く、均一な物性を有するSWCNT(MEIJO eDIPS)に変更して検討を行う。 このため、昨年度同様、カーボンナノチューブ、蛍光試薬、ゲル濾過カラム、およびその他実験試薬の購入を中心とした配分を計画している。また、合成方法の見直しにより十分量の水溶性CNTが合成でき次第、水溶性CNTの生体内での安全性および異物処理機構に及ぼす影響の検討へと研究を進めてゆく予定である。そこで、Cy5-PEG-CNTの体内動態を検討するため、実験動物の購入についても計画している。
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Research Products
(2 results)