2012 Fiscal Year Research-status Report
個別化医療のためのフッ化ピリミジン系抗癌剤の定量的治療効果予測システムの構築
Project/Area Number |
24590223
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
伊藤 由佳子 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (30278444)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 個別医療 / 抗がん剤 / 大腸癌 / PK/PD / バイオマーカー / 5-FU |
Research Abstract |
5-FUをkey drugとする癌化学療法の個別化医療を目指し、PK/PD理論に基づく定量的治療効果予測システムの構築を目的として、今年度得られた実績を下記に記す。 1.大腸癌モデルラットにおける5-FUの体内動態について正常ラットに対する体内動態変動とその要因の解明として、ジメチルヒドララジン誘発の大腸癌モデルラットと正常ラットにおける病態時の生化学的検査から、大腸癌ラットにおいて体重減少、好中球/リンパ球比の増加及び大腸異常腺窩が認められた。5-FU静脈内投与時と門脈内投与時のAUCの比較から、大腸癌モデルラットでの肝初回通過回避率が20%低下していたため、肝臓中DPD活性の有意な増加が示唆され、全身クリアランスの増大を認めた。このことから、DPDのバイオマーカーとしての有用性が示唆された。 2.5-FU治療時のバイオマーカーである肝臓中DPD活性としての尿中ウラシル/ジヒドロウラシル比の経時的変動について検討したところ、5-FUの体内動態パラメーターである、AUCおよび全身クリアランスの両パラメーター間において尿中ウラシル/ジヒドロウラシル比との間に正の相関関係を認めた。 3.5-FUのPK/PDモデルにおけるPDの評価として、大腸癌モデルラットにおける治療時の腫瘍径から体積を算出し、経時的変化を追跡したところ、治療の進展に伴い腫瘍径の縮小を認めたことから、PDとしての観測意義を確認した。 4.WinNONLINによるPK/PDモデルの構築には、これまでに得られた、5-FUの血漿中濃度、パラメータ、DPD活性およびPDとしての腫瘍径に関するパラメータをモデルに組み込み、Simeoniらの(Can.Res., 2004, 64, 1094-1101)perturbed growth modelを導入することで、実測値を反映した、腫瘍抑制効果の予測に有用なモデルが確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度については、当初の計画とほぼ同等の進捗を得ている。すなわち、大腸癌モデルラットにおける5-FUの体内動態パラメータとバイオマーカーであるDPD活性との関連性について、DPD活性のサロゲートマーカーとしての尿中ウラシル/ジヒドロウラシル比と5-FUの体内動態パラメータである、AUCおよび全身クリアランスとの間に正の相関関係を確認した。また、PDの指標として、腫瘍径による腫瘍体積を算出し、PK/PDモデルとして、Simeoniらの(Can.Res., 2004, 64, 1094-1101)perturbed growth modelを組み込むことで確立した。バイオマーカーの情報から予測される5-FU血漿中濃度推移は実測値を反映し得ることを確認した。モデルの妥当性についての詳細な検証を目下継続して検証をすすめている。本成果に関しては、日本薬学会133年会、第27回日本薬物動態学会年会、第33回日本臨床薬理学会学術総会にて発表を行った。また論文としては、3報がすでに掲載許可通知を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者が構築したPK/PDモデルの妥当性を幅広く展開させるために、当初の予定通り、5-FU単独だけではなく、配合剤であるS-1使用時における本モデルの妥当性を検証すべく同大腸癌モデルラットを用いて評価をすすめていく。さらに、大腸癌化学療法の代表的レジメンである、シスプラチン、イリノテカンを併用した、FOLFOX、FOLFILI療法についても本モデルの適用意義についての検証を行う。他方、好中球/リンパ球比がバイオマーカーとしての可能性が示唆される結果も得られており、1つのバイオマーカーではなく2種複合したバイオマーカーの情報をPK/PDモデルに組み込むことについても検討していく予定である。最終的には、本研究での基礎実験データから得たPK/PDモデルが、大腸癌化学療法中の患者検体に関しても整合性を立証したうえで、基礎から臨床へのトランスレーショナルによる、フッ化ピリミジン系癌化学療法における個別化医療の実施に貢献できることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、分析機器の修理メンテナンス費として計上していた部分が予定以下の費用であったので、次年度の研究費として使用予定である。今年度は、国際学会(ISSX, トロント, カナダ)での学会発表を予定しており、渡航費に使用したいと考えている。
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