2013 Fiscal Year Research-status Report
個別化医療のためのフッ化ピリミジン系抗癌剤の定量的治療効果予測システムの構築
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24590223
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
伊藤 由佳子 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (30278444)
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Keywords | 個別化医療 / バイオマーカー / 大腸がん / 5-FU / 抗癌剤 / PK/PD |
Research Abstract |
5-FUをkey drugとした癌化学療法での個別化医療を目指し、PK/PD理論に基づく定量的治療効果予測システムの構築を目的とした本研究において、前年度までに、5-FUの代謝に関与する肝臓中DPD活性に着眼し、間接的なDPD活性測定としての血漿中ジヒドロウラシル/ウラシル比の時間的変化が血漿中5-FU濃度の推移と相関することを明らかとした。一方、生体内DPD活性には日内変動(サーカディアンリズム)が存在することが知られており(Jiang H., et.al. Br.J. Pharmacol., 141, 616-623, 2004)、非活動時においてDPD活性が低下する傾向があるというJiangらの報告があるが、我々のラットでの5-FU投与実験においても、投与時刻を変化させたところ血漿中5-FU濃度は非活動時に上昇する傾向を認めた。(Kobuchi et al., Biol. Pharm. Bull., 34, 365-376, 2013)すなわち、DPD活性は5-FUの消失を左右する指標として、または薬物動態学的バイオマーカーとしての有用性を見いだした。しかしながら、大腸がん化学療法を施行時には、薬効について予測またはモニターするためのバイオマーカーが個別化医療において用量設定のための重要因子となる。そこで、大腸がんの予後予測因子としての好中球/リンパ球比に替わる指標として、各種血球レベルの変化から骨髄抑制予測に有効となるバイオマーカーを探索するべく、5-FU投与後の白血球、好中球、リンパ球、赤血球の血球動態の経時的変化について検討した。その結果、各種血球レベルは、5-FUの用量に応じて異なる推移を示し、特に好中球において顕著であったことから、骨髄抑制の予測の可能性を示唆する結果を得た。本結果から、投与後の採血から5-FU濃度と各種血球数データをえることで、用量変更時の有用な基礎的情報となりえることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの達成度については、当初の計画に対してやや進展が遅れている部分があるが、これは癌化学療法での個別化医療を目指したPK/PD理論に基づく定量的治療効果予測を確立するうえで、研究遂行に伴って検討すべき項目、すなわち、当初のバイオマーカーとして想定していたDPD活性について日内変動を考慮し、予後予測のための指標としての各種血球レベル、白血球、好中球、リンパ球、赤血球の検討といった項目を随時追加したためである。なぜなら、DPD活性の代替マーカーとしての血漿中ジヒドロウラシル/ウラシル比がバイオマーカーとして重要因子であることは確認したが、もともと生体内DPD活性にはサーカディアンリズムが存在することが明らかとされていることから、投与時刻の影響についても検討すべき項目として追加した。このDPD活性は5-FUの消失に大きく関与するファクターであるが、効果予測または予後予測については別のマーカーが必要と考えられた。そこで、重篤な副作用として骨髄抑制の予測に有用となり得るか否かについて各種血球レベルの推移について、5-FU投与後の経時的変化とともに血球ごとのデータを得た。本成果は、日本薬学会、ISSX、日本薬物動態学会、日本臨床薬理学会にて発表を行い、論文として、4報すでに掲載許可通知を得ている。 当初の予定では、基本となる5-FUのPK/PDモデルが構築され、大腸がん化学療法の代表的レジメンに対応したPK/PDモデルの構築を予定していたが、現状では基本となるPK/PDモデルの構築に時間を有している状況である。やや遅れているというよりも、別の角度からのアプローチを追加して最終目標としての、大腸がん化学療法におけるPK/PDモデルに基づく定量的治療予測システムの構築へと進めている状況である。予測の精度を高めるために追加すべき因子を導入し、定量的治療予測システムの構築を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果から、5-FUの大腸がん化学療法におけるPK/PDモデルに基づく定量的治療予測システムの構築のためには、5-FUの濃度に関与するバイオマーカーとしてDPD活性、薬効薬理学的バイオマーカーとしての各種血球数の両者を同時に導入することがより精度の高いPK/PDモデルの構築につながる、という方向性を見い出した。従って、最終的なモデルを確立するためには、各種血球数に関するパラメータの導入の検討をおこない、赤血球、白血球、好中球、リンパ球のいずれのファクターが5-FU濃度と治療効果の予測に関与しているのかを確定し、最終的なPK/PDモデルとして確立させる。さらに臨床での汎用性を付帯させるために、大腸がん化学療法における代表的レジメンにも対応し得るよう、薬物動態学的モデル部分に修正を加える必要性が考えられる。当面の計画としては、シスプラチン、ロイコボリンを用いて、5-FU濃度の推移がモデルによる予測値が実測値を良好に一致するかについて検討する。最終段階として、提携医療機関における患者データから、血球数についてのデータを提供依頼し、PK/PDモデルにあてはめ、レトロスペクティブに解析することで、基礎から臨床を予測するトランスレーショナルリサーチとしての貢献を目標とする。 また、成果報告の機会として、本年度は日本臨床薬理学会、国際薬物動態学会(10月、サンフランシスコ、アメリカ)、日本薬学会での発表を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
5-FUのモデル構築に関する実験の遂行にあたって、問題なく遂行することができ、必要物品、必要経費は使用できたが、1000円未満の次年度使用額が発生した。試薬、などの物品費が予定よりも必要ではなかったためであった。しかし、研究遂行についてほぼ完了できた結果、生じた。 次年度の助成金として、物品費として、試薬、動物、分析用消耗品、もしくはLC/MS/MS分析装置のメンテナンスに必要となるのでこれに充てる。
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