2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590236
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
谷口 雅彦 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (70260346)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 軸索ガイダンス / 脳神経系 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
複雑な脳神経系において機能的な神経回路を形成するために、回路形成過程を制御する軸索ガイダンス分子が存在する。軸索ガイダンス分子としては、スリット,エフリン,セマフォリン,ネトリンが報告されている。セマフォリンは現在までに20種類以上報告されている大きなファミリー分子で、主に反発因子として機能する。セマフォリンの新たな機能解析の目的で新規セマフォリンのクローニングを試みた。その結果、2種類のマウスセマフォリンのクローニングに成功した。Sema3GとSema6Dである。Sema3Gは脳では小脳特異的に発現している。レセプターはニューロピリン-2だと考えられ、神経軸索に対する反発活性を持つ。生後、顆粒細胞層などに発現してくるので顆粒細胞の移動に関与していると考えている。Sema6Dは脳に高発現している。脳での発現は胎児から生体に至るまで同程度発現している。Sema3GとSema6Dのノックアウトマウスの作成を進めている。また、最近モデル動物としてゼブラフィッシュにも注目して解析している。このため先ずゼブラフィッシュSema6Dのクローニングを試みた。クローニングに成功したが、この課程において、Sema6EとSema6Fのクローニングにも成功した。Sema6EとSema6Fはゼブラフィッシュ特異的なセマフォリンである。Sema6DとSema6Eは神経系特異的に発現している。Sema6Dは発生中において菱脳やレンズなどで、成体脳においては小脳に発現している。Sema6Eは発生中においては菱脳やレンズなどで、成体脳では縦隆起に発現している。Sema6D、Sema6Eともに神経軸索に対する反発活性が認められた。これらのことより、初期発生中の神経回路形成に関与している可能性がある。Sema6Fは現在解析中である。今後は生体内での機能解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経回路形成過程におけるセマフォリンの機能解析の研究を行っている。マウスにおいて新規セマフォリンであるSema3GとSema6Dの同定に最近成功した。これらのセマフォリンの詳細な発現解析をin situ hybridization法で行った。また、これらの抗体も作成してタンパク質レベルの発現解析も行った。さらに、神経軸索に対する反発活性の検討も培養系を用いた解析方法で行った。これらのことより、新規セマフォリンの発現解析、培養系を用いた機能解析について進展が見られた。また、重要であると考えているこれらのノックアウトマウスの作成であるが、ほぼ計画通りに進んでいる。現在は、キメラマウスを作成しているところである。 ゼブラフィッシュの新規セマフォリンに関しても発現解析と培養系を用いた機能解析が進んでいる。生体内での機能解析を進めているところである。このようにほぼ計画通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も今までと同様にセマフォリンの機能解析を進めていくが、今後は生体内でのセマフォリンの機能解析を中心に進めていく計画である。興味のある遺伝子の機能解析で重要であるのは生体内での機能解析だと考えている。このためにはノックアウトマウスの作成は必須であり、現在作成を進めている。今後はノックアウトマスを作成して、神経回路形成過程におけるセマフォリンの機能解析を進めていく。これらの解析により神経回路形成の分子機構の一端が解明されると考えられる。さらに、高次脳機能や神経疾患治療にも有益な研究に発展させていく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費があり、当該研究費が生じた理由は、苦労すると考えていた研究計画の1つが予想以上に苦労せずに上手く進んだからである。具体的には新規セマフォリンの抗体の作成である。セマフォリンの抗体は作成しにくいと言われている。翌年度以降の研究費と合わせた研究費で、セマフォリンの生体内での機能解析を主に進める計画である。翌年度以降の研究費が増えたために、さらに詳細な研究が可能なると思われる。具体的には、マウスにおいてはノックアウトマウスを作成して、形態学的、電気生理学的、行動学的解析を行う計画である。初めは、初期発生中の神経回路形成の形態学的解析を行い、その後成体の中枢神経系の形態学的解析を行う。形態学的な変異が明らかになれば、電気生理学的解析と高次脳機能解析(行動学的解析)を行う。ゼブラフィッシュにおいてもセマフォリン分子をモルフォリノオリゴを使用して生体内でノックアウトして、形態学的解析を行う計画である。また、レセプターの解析も行う。これらの解析により、神経回路形成におけるセマフォリンの機能の一端が解明されると思われる。
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[Journal Article] Development of the dorsal ramus of the spinal nerve in the chick embryo: A close relationship between development and expression of guidance cues.2012
Author(s)
Tomoyuki Masuda, Chie Sakuma, Masahiko Taniguchi, Ayae Kanemoto, Madoka Yoshizawa, Kaishi Satomi, Hideaki Tanaka, Kosei Takeuchi, Shuichi Ueda, Hiroyuki Yaginuma, Takashi Shiga
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Journal Title
Brain Research
Volume: 1480
Pages: 30-40
DOI
Peer Reviewed
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