2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590240
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
高野 和敬 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (80364769)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 原腸胚 / 初期発生 / 形態形成 / 細胞運動 / カルシウムイオン / カルシウムイオンチャネル / 両生類 / イモリ |
Research Abstract |
原腸陥入を中心とする「原腸胚形成」は多細胞動物の形づくりにおいて極めて重要な現象であるにもかかわらず、現在までそのメカニズムの実質的な解明が進んでいない。この原腸陥入が起きる時期に両生類の胚細胞を単離すると特徴的かつ自律的な細胞運動がみられるが、その制御機構や原腸陥入に果たす役割についてはほとんど解明されていない。本研究課題では、単離胚細胞がみせる振る舞いの解析を通して、原腸胚形成のしくみを明らかにする目的で研究を進めている。本年度に実施した研究において、イモリ原腸胚から単離した胚細胞について細胞内カルシウムイメージングや各種カルシウムチャネル阻害薬の効果を調べた結果、(1)単離外胚葉細胞は細胞内カルシウムイオン濃度の上昇をともなうブレッブを形成し、そのブレッブが細胞周囲を回転する自律的な細胞運動を行うこと、(2)この細胞運動は、ジヒドロピリジン受容体とリアノジン受容体による細胞内部からのカルシウムイオンの放出により制御されていること、(3)単離中胚葉および内胚葉細胞ではカルシウムイオン濃度の上昇をともなう硝子様突起をもつシリンダー状の形態をしており、原形質流動および細胞表面の波打ち運動によって一方向に伸長する自律的な細胞運動を行うこと、(4)この細胞運動には、イノシトール3リン酸受容体とリアノジン受容体による細胞内部からのカルシウムイオンの放出が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、原腸胚細胞の「胚葉特異的な自律的な細胞運動」のメカニズムについて、主として現象面および機能面に着目して解析を行った。当初の研究実施計画に従い、(1)細胞内遊離カルシウムイオンと「胚葉特異的な自律的な細胞運動」との関係、(2)「胚葉特異的な自律的な細胞運動」における細胞内カルシウムイオン調節機構の役割、について次年度以降の研究を推進するうえで有用な基盤となる知見を得ることが出来た。当初の研究実施計画に沿っておおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、前年度の成果をもとに、原腸胚細胞の「胚葉特異的な自律的な細胞運動」のメカニズムについて、主として機能面と構造面に着目して以下の解析を行う。(1)「胚葉特異的な自律的な細胞運動」における細胞内カルシウムイオン調節機構の役割について(前年度からの続き)。前年度の成果をもとに引き続き、各種カルシウムイオンチャネルの調節薬や各種カルシウムイオンチャネルに特異的に結合する蛍光標識化合物を用いて、細胞運動に関与するカルシウムイオンチャネルの種類、局在様式、および、その調節機構の発達について解析を進める。(2)細胞骨格の配置とその役割について。「胚葉特異的な自律的な細胞運動」時における細胞骨格構造について、細胞骨格に特異的に結合する蛍光標識化合物などを用いて明らかにするとともに、細胞骨格重合阻害薬を投与した場合に「細胞運動」がどのような影響を受けるのかについても解析を進める。これら機能面と構造面からの知見を蓄積することで、原腸胚細胞の「胚葉特異的な自律的な細胞運動」のメカニズムの解明に迫る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究成果について、当初の使用計画どおり2013年3月27日~30日に開催された第118回 日本解剖学会総会・全国学術集会において発表を行ったが、学会開催期間が年度末で成果発表経費の支払い手続きが次年度の4月以降となるため、そのための経費が本年度の未使用経費として生じた。この成果発表経費は翌年度すみやかに支払い手続きを行い使用する。また、当初の計画と比較して試薬などの物品を安価に購入できたことで僅かに未使用経費が生じたが、未使用額も僅かであるため、翌年度に試薬類やガラス器具およびプラスチック器具類などの物品購入に充当して効率的かつ効果的な研究遂行のために使用する予定である。このように、本年度未使用の繰越助成金は適切に使用され、翌年度分の助成金の使用計画との解離は生じない。
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Research Products
(2 results)