2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590240
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
高野 和敬 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (80364769)
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Keywords | 原腸胚 / 初期発生 / 形態形成 / 細胞運動 / カルシウムイオン / 細胞骨格 / 両生類 / イモリ |
Research Abstract |
原腸陥入を中心とする「原腸胚形成」は多細胞動物の形づくりにおいて極めて重要な現象であるにもかかわらず、現在までそのメカニズムの実質的な解明が進んでいない。本研究課題では、単離胚細胞がみせる振る舞いの解析を通して、原腸胚形成のしくみを明らかにする目的で研究を進めている。これまでに、本研究課題による研究により、原腸陥入が起きる時期に両生類の胚細胞を単離すると、予定外胚葉細胞では自律的なブレッブ形成と、その周回運動がみられ、予定中胚葉および内胚葉細胞の多くは自律的にシリンダー状に細長く伸長すること、および、それらが細胞内部から放出されるカルシウムイオンにより制御されていることを明らかにした。本年度の研究では、自律的な胚細胞運動を制御するカルシウムイオンや細胞骨格の構築について、さらなる解析を進めた。その結果、1, 予定外胚葉細胞では、ブレッブ以外の細胞膜直下に豊富なアクチン線維の存在が認められた。2, 予定中胚葉および内胚葉細胞では、収縮部位の細胞膜直下にアクチン線維が細胞の長軸と直交する向きで細胞を取り囲んでいることが確認された。3, これら単離胚細胞にみられる自律的な細胞運動は、カルシウムポンプ阻害薬およびアクチン重合阻害薬により阻害され、微小管重合阻害薬では阻害されなかった。これらの結果から、自律的な細胞運動は細胞内部から放出されるカルシウムイオンを介したアクトミオシン系の再構築により制御されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度の成果をもとに、原腸胚細胞の「胚葉特異的な自律的な細胞運動」のメカニズムについて、主として機能面と構造面に着目して研究を行った。当初の研究実施計画に従い、1, 細胞内カルシウムイオンと「胚葉特異的な自律的な細胞運動」との関係(前年度からの続き)、2, 「胚葉特異的な自律的な細胞運動」における細胞骨格の配置とその役割、について次年度以降の研究を推進するうえで有用な基盤となる知見を得ることが出来た。当初の研究実施計画に沿っておおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでの成果をもとに、原腸胚細胞の「胚葉特異的な自律的な細胞運動が原腸胚形成に果たす役割」について、その基本メカニズムの解明を目指して研究を行う。具体的には、「細胞内カルシウムイオン動員」と「細胞骨格」および「胚葉特異的な自律的な細胞運動」との因果関係に注目して、細胞内カルシウムイオン動員が細胞骨格の再構築を介してどのように細胞運動を引き起こすのかについて解析を進める。例えば、単離原腸胚細胞および原腸胚全胚に各種カルシウムイオンチャネルの開口阻害薬を投与した場合の「細胞運動」や「原腸陥入」への影響について、細胞内カルシウムイオン動員経路や細胞骨格構造に注目しながら解析を試みる。これらの解析結果と、これまでに得られた研究成果を総合して、胚葉特異的な自律的な細胞運動が原腸胚形成に果たす役割の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究成果について、当初の使用計画どおり2014年3月27日~29日に開催された第119回 日本解剖学会総会・全国学術集会において発表を行ったが、学会開催期間が年度末で成果発表経費の支払い手続きが翌年度の4月以降となるため、そのための経費が本年度の未使用経費として生じたため。また、本年度の旅費の節約努力により、当初の計画に比べて出費を抑えることが出来たため。 未精算の成果発表経費は翌年度に速やかに支払い手続きを行う。また、その経費を差し引いてなお残る未使用額は僅かであり、翌年度に試薬類やガラス器具およびプラスチック器具類などの物品購入に充当して、効率的かつ効果的な研究遂行のために使用する予定である。このように、本年度未使用の繰越助成金は適切に使用され、翌年度分の助成金の使用計画との解離は生じない。
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Research Products
(7 results)