2012 Fiscal Year Research-status Report
精子幹細胞の異種間移植法とin vitro培養による精子形成への分化誘導法の確立
Project/Area Number |
24590243
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
曲 寧 東京医科大学, 医学部, 講師 (70527952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 正裕 東京医科大学, 医学部, 教授 (00232471)
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マウス / 精巣 / 移植 / 抗がん剤 / 免疫抑制 |
Research Abstract |
申請者らは、抗癌剤ブスルファン投与後60日目の免疫正常マウスに、ラット異種間精原細胞を移植することに成功している。本研究の目的は、免疫正常マウスにラット精原細胞を移植し、生殖細胞の生着(寛容)および拒絶(排除)のメカニズムを解明することである。本年度は、ブスルファンの免疫抑制への影響を考察するため、ブスルファン処置したマウスの免疫機能と精子形成について解析した。まず、ブスルファンを投与したマウスの精巣内における生殖細胞の増殖(PCNA)細胞およびアポトーシス(Tunnel)細胞の増減を検討した。また、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を用いてブスルファンを投与したマウスの脾臓T・Bリンパ球を計測した。結果として、精巣重量と精子数はブスルファン投与後2日目では、コントロールに比較して有意な差を認めなかったが、ブスルファン投与後60日目ではブスルファン投与群において精巣重量、精子数ともに有意に減少した。精巣内のTunnel陽性細胞数は正常の精巣と同程度であったが、PCNA陽性細胞数はブスルファン投与後60日目ではブスルファン投与群において有意に減少した。一方、脾臓重量はブスルファン投与後2日目ではブスルファン投与群で有意に減少していたが、ブスルファン投与後60日目では有意な差は認めなかった。更に、ブスルファン投与後2日目のブスルファン投与群では、コントロールと比べTリンパ球のマーカーであるCD3陽性細胞数とBリンパ球のマーカーであるB220陽性細胞数がともに有意に減少するのに対し、ブスルファン投与後60日目では、有意な差は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はラット生殖細胞を抗癌剤ブスルファン処理したC57BL/6jマウスに移植して、移植3ヶ月後にレシピエントマウスの精細管中にラットの生殖細胞が生着し、分化することを観察している。また、レシピエントマウスの精巣上体から精子を抽出してsmear sectionを作成し、成熟したラットのspermatozoaを確認している。免疫不全マウス(nudeおよびscid mouse)へのラット生殖細胞移植による異種生殖細胞移植の研究が世界的に盛んに行われているが、免疫正常マウスにおける異種生殖細胞の免疫学的拒絶(排除)を詳細に調べた研究はない。本年度の研究結果からブスルファン投与後2日目では宿主の免疫機能は低下するが、ブスルファン投与後60日目までには回復することが明らかとなった。一方で、ブスルファン投与後2日目には精巣組織学的な変化を認めなかったが、ブスルファン投与後60日目では顕著な精子形成障害が認められた。本年度の研究結果は、異種間精原細胞移植における精巣内微小環境の免疫寛容と精子形成の機構解明に繋がる有用なデータである。
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Strategy for Future Research Activity |
精巣内の免疫寛容の状態を腎臓などの通常の臓器と比較するため、ラット精原細胞を、免疫正常マウスおよび免疫不全マウスの精巣の精細管内と腎臓皮膜下に移植を行い、経時的に精巣と腎臓を取り出し組織学的解析を行いその生着率を比較する。同時に血清を採取し、ラット精原細胞の組織切片をそれぞれの血清で染めて、移植したラット組織に対する抗体価を比較し、免疫寛容の程度を調べる。精原細胞移植による精巣内と通常の臓器での免疫寛容の解析により、生殖組織とそれ以外の大半の組織での免疫寛容の程度の違いを再認識させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は総額1000千円の研究経費を計上した。その積算根拠として、実験動物のためのマウス代(食餌含)300千円を計上した。さらに、消耗品としてプラスチック・ガラス器具100千円、培養関連試薬200千円、分子生物・生化学関連試薬および免疫・組織学関連試薬および培養関連試薬500千円を計上した。
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