2012 Fiscal Year Research-status Report
神経板培養法を用いた頭部プラコード特異性形成の段階的機序の解明
Project/Area Number |
24590244
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
重谷 安代 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70431773)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経板培養 / 神経堤 / 前プラコード外胚葉 / プラコード / 胚性外胚葉 |
Research Abstract |
本研究は脊椎動物頭部の段階的なプラコード特異性の形成機序の解明を目指すものである。今年度は、神経板培養により形成される上皮細胞の特徴をより詳しく調べるために、幾つかの分子マーカーを用いたRT-PCR実験を行い、また培養液に加えるリコンビナントタンパク質の濃度検証実験を試みた。 神経板の培養液にBMP4とFGF2を加えて形成される上皮細胞に対してRT-PCRを行った。その際、培養液にBMP4のみを加えた細胞群(神経堤細胞)、N2サプリメントのみを加えた細胞群と神経板(共に陰性対象)を比較対象に用いた。その結果、表皮マーカー (GATA2, GATA3, Keratin19) の発現量は、実験上皮細胞群において非常に高く、他の比較対象群に比しても高かった。神経板 (Neurogenin, NCAM, Sox1, Sox3) や神経堤 (AP2, Zic1, Snail1, Snail2, Msx1) マーカーの発現量はどの細胞群においても幾らか見られたが、神経堤マーカーの実験上皮細胞群においてやや強く観察された。そして神経板境界に発現するマーカーDlx5の発現量は、実験上皮細胞群において非常に高く、また他のSix1, Six4, Eya2についてもBMP4のみを加えた細胞群と比較しても十分に高かった。これらは報告済みのqPCRの結果と矛盾せず、実験上皮細胞群が表皮と神経堤の特徴を兼ね備えていることが支持された。 神経板を培養する培養液にBMP4とFGF2の濃度をそれぞれ振って加え(BMP4: 0, 0.2, 2, 5, 10, 20 ng/μl; FGF2: 0, 0.4, 4, 10, 20, 40ng/μl)、培養後に細胞を採集した。分子マーカーにはDlx5, GATA3, K19, Slug, Sox2の他、耳プラコードマーカーのPax2, Sox10を加えてqPCRを行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は神経板培養を用いたタンパク質の濃度検証を行うことが中心的仕事であったが、論文作製のためにRT-PCR実験を加えたことで、細胞のサンプリング総数が増え、そのために濃度検証実験が遅れている。濃度検証実験に必要な細胞のサンプリングは現在上述の6割程度終了している。他の理由には、例年に比べニワトリ受精卵がうまく発生しなかった事実があり、購入数を増やして対応したが、賄いきれなかった。またサンプルの取り直しを行ったものが若干あった。 しかしながら、神経板培養で作製される上皮細胞群について、より詳細なRT-PCRによる解析ができたことは、今後の胚体内実験の解析の手助けになる。
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Strategy for Future Research Activity |
① まず、胚体外におけるタンパク質の濃度検証実験を速やかに終了する。ニワトリ受精卵に関しては、常にフロックチェンジや配送までの温度の問題はつきまとうため、可能な限りのベストコンディションの受精卵を手に入れるためには、他の購入元を試すか、データ作製に一段落ついたら同じキジ目のウズラ受精卵(ニワトリとは別の購入元)を平行利用することも考える。差し当たって、夏の猛暑日を迎える前までには濃度検証用サンプリングを全て終了する。また基本的なことではあるが、サンプリング後にできるだけ速やかにRNA精製を行い小忠実にcDNAに変換して保存することを励行する。 ② 次に、胚体内におけるBMP4およびFGF2等の遺伝子あるいはタンパク質の機能獲得・欠失実験を遂行する際には、実験発生学的手法と分子生物学的手法を用いて速やかに行い、Whole-mount in situ hybridization法にて染色して検証する。機能実験やプローブに用いる遺伝子はほぼ全て揃っており、速やかに実行可能である。コンパクトな実験系になるので、研究室に配属される学部生のための実験に適当かも知れない。 ③ 加えて可能であれば、レンズや鼻とは異なる三叉神経プラコードの形成機序を明らかにするための実験に取り掛かる。鼻/三叉神経共通プラコードが形成されていることを明らかにするために、HH6胚の頭部前半の神経板を切り出してそれにFGF8を作用させながら培養を行う。新たに陰性対象となる前プラコード外胚葉の培養系を立ち上げる。その際に鼻プラコードマーカーFoxG1とDlx3、ならびにレンズプラコードマーカーPax6, L-mal, FoxC1, α-crystallinを必要とするため、プライマープローブを入手し、三叉神経プラコードマーカーPax3, Brn3a等と共にqPCRを実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が11万円程度ある理由は、3月の出張経費が未払いであることによる。 消耗品としてニワトリ受精卵、キット、試薬、オリゴプライマーの購入経費、ほか実験協力者(1名)の人件費、研究成果発表のための出張経費、論文別刷経費を必要とする。
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Research Products
(5 results)